二人の科学者
とある国、とある軍事研究所に二人の若き科学者がいた。
「なあ、俺すごい兵器を思いついちゃったよ」
「へえ、どんなものだい?」
「ものすごい爆弾なんだ。それは数十万、数百万度の炎が立ち昇り、その爆風はで街ひとつを吹き飛ばせる威力を持つ。衝撃で落下地点には巨大なクレータが現れるんだ!」
「すごい威力だな。でもそれだけじゃあ、ただの高い威力の爆弾だぞ」
「ふっふっふ。もちろん、それだけじゃあ終わらないさ。その熱波は周囲を焼き尽くし木造の建物なんか燃やし尽くすんだよ。人間が受けると服の柄が皮膚に焼きついちゃうんだ!」
「なんと恐ろしい! こりゃあ誰も逃げられないな」
「さらに有害な物質が発生して、それを受けた人間は高確率で重い病気にかかって、ほとんどの人が死んでしまう。その物質は爆発の勢いで空にあがって雲から降り注ぐんだ!」
「そんなものを受けたら、国がひとつ消えちまうな」
「だろう? これがあれば、どこの国と戦争しても負けないぜ!」
「よくもまあ、そんな恐ろしいものを思いつけるよ。感心するね」
「科学者に必要なのは先進的で非人道的な発想だよ。お前ももっと人間の心を捨てたらどうだ」
「はは、善処してみるよ。キミが言うその兵器、僕が名前をつけてあげよう。現実に存在しない、存在してはならない兵器ってことで、『架空兵器』というのはどうだろう」
「架空の兵器か。これは手厳しい。ところで、後輩からお菓子を貰ったんだ。一緒に食べないか? なんでも、世にも珍しい黄色いケーキだそうで――」
(了)