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”棄”乍

     (一)

 あれから二年の月日が経つ。興信所を使って由比を探すも見つからず。鑑定の結果、私と美緒には血のつながりが全くないことが証明された。由比の置手紙には「御免なさい」と一言丈が描かれていた。復、その後例の緑の紙を提出したので彼女とはすでに離婚扱いに成っていた。慰謝料等もとろうと思えばとれたのだがそんな気にすらならなかった。

「ねぇ、ぱぱ、ぱぱ」

美緒がどたどたと走ってくる。耳障りだ。

「うるせぇ、何度も言ってるだろ。俺はお前の親父じゃねえんだよ。ちぃと黙らんかい。」

そう怒鳴りつけると美緒はあの女に良く似たその顔を歪め、わんわんと泣き始める。どうしようもなく(うるさ)いので蹴りつける。

「なんで口で言って分からないんだ。黙れって言ってるだろう。」

そう怒鳴りもう一度蹴りつける。此処までやると流石に布団等に顔を埋め煩い鳴き声はしなくなる、が布団に鼻水や涙が染み込むのでこうなったら口をガムテープで縛り納戸に転がしておくのが一番良い。

「あの売女め。うるせえしくせえしとんだ置き土産だ。

いらいらするパチンコで一発当てに行くか。」

この苛苛感を紛らわすためには遊びに行くしかなかった。

「チィ」と舌打ちをすると胸ポケットからマイルドセブンを取り出し先端に火をつける。煙草を吸うと楽になれるがどうも喉に痰が絡むの煩わしさから苛立ちは収まらない。私は痰を地面に吐き出すとその上に煙草を放り投げ踏み潰し消火する。

「さてと、今日はなにか新台はあったっけかな。」

私はそんなことを考えながらパチンコ屋へと行った。苦痛から、残酷な現実より逃れたいと思いながら。

       (二)

二時間ほど球打ちを為、家に帰ると何やらうちの前に人だかりができており騒々しかった。

後で聞いた話によると誰かが子供の激しい泣き声がするからと児童相談所に通報を入れたようだ。

「オラオラどいたどいた俺んちはみせもんじゃねえぞ。」

人込みを乱暴にかき分け自宅へと入ってゆく。部屋に入ると確かに泣き声が煩い。いつの間にかガムテープなどが外れたのだろうか。

私は泣き叫ぶ美緒を見つけると再び口をガムテープで縛る。

「くそったれ、俺が何をしたってんだ。」

私は溜息交じりの悪態をつくと一発美緒を蹴飛ばし次球打ちに行くときは車に詰めていくことを決意する。近頃多い事件の様に其れで美緒が死んだ所で如何とも思わない。寧ろ処分できるので一石二鳥である。

「吁、あの顔を思い浮かべるだけでも腹が立ってくる。」

美緒の顔は何度見てもあの女にそっくりなのでむしゃくしゃ為る。苛立ちを収めようと更にもう一本吹かす。

「餓鬼の相手は疲れるぜ。」

本当に子供の泣き声にはうんざりとしていた。併し今はすでに静かなので睡眠をとるとしよう。

     (三)

「嗚呼、糞。あと少しなのに。」

パチンコを撃ちながら悪態をつく。昨日の失態もあるので彼奴は車の後部座席に乗せておいた。

「糞、後もう百球だ」

そこで既に手持ちが尽きている事に気付く。

「チィ、もう帰るか。」

財布を衣嚢にしまい立ち上がる。その時、自分の車の窓硝子が割れ、人だかりが出来ている。あの餓鬼め復やらかしやがったと車へとかけて行く。

「あ、此方の車はお客様の物でございますか。」

警備員がこちらに近づいてくる。そしてその腕にはぐったりと為た美緒が抱かれていた。

「糞、美緒てめえなんて事しやがるんだ。」

警備員の腕から美緒を奪い取り地面に転がす。

「自力で立てやだらしない。」

美緒の肩を掴んで無理やり立たせる。その顔はやはりあの女を幼くしたような顔だった。

「糞。」

ついむしゃくしゃして蹴り飛ばす。其処で警備員やら警察やらが私を羽交い絞めに為。

「何しやがるんだ。畜生共め。」

其の腕を振り払おうとする。こうすれば公務執行妨害で即御縄に成る事は知っていたが何より頭に血が上っていて歯止めがきかなかった。かくして私は塀の中へと収められる事に成ったのだった。


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