表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

天国へ行く・前

自分は幽霊ってモノを信じていない人間ですが、可愛い天使はぜひ存在して欲しいと願っている、残念で痛い人間です。

唐突な話をする。


今日、まさに今、俺は死んだ。


……理由?


……いや、その……まぁ、自宅の階段の二段目から落ちて、頭打って……うん。


まぁとにかく、俺は死んだんだ。










【天使参上】


「ふん、貴様が階段の二段目から落ちて、後頭部を一段目の角にぶつけ、脳内出血により死んだと言う哀れなバカか」


ふと。


ふと、目前からそんな声がした。


ちょっとハスキーな女の子の声。


「本当に哀れ……ってかバカだよな。階段の二段目って……餅喉に詰まらせて死ぬよりも哀れな死に方だな」


……何だろう?

めちゃくちゃに腹立つな。


何だろう?

他人事とは思えない、謎の怒り。


俺は閉じていた重い瞼を開け、そっと前を見た。


「……よぉバカ。永久の眠りへようこそ」


……そこには。


白いワンピースを着た、金髪の女の子がいた。


金髪の短髪同様のゴールドの瞳は攻撃的なつり目。


白いワンピースから覗く細い手足は、美しい曲線を描いた色白の肌。


そして、背中からは白い翼、頭には金色のわっか……ん?


「……あれ?」


翼?

わっか?


ってか、それ以前に


「キミ……だれ?」


「天使」


「えっ……はい?」


即答だった。








【天使のお仕事】


「お前は死んだんだよ、そこの階段の二段目から落ちて。二段目からな、二段目だぞ、二段目からだぞ?」


「…………」


「んで、私は天使。死んだお前の魂を天国へ運ぶために派遣された天使だ」


「…………」


「全く……私も5年天使やってるけど、階段の二段目から落ちて死んだってヤツは初めてだ。二段目ってお前、床から30センチも無いし……二段目から……落ちて……プッ」


「…………」


「だって二段目だぜ? 何で二段目からで死ねるの? 意味わかんねぇよ。むしろどうやったら二段目からで死ねるんだよ? 本当に可笑しな話だよな!」


「……今俺、めっちゃ死にたい」










【現実を受け入れる】


「つまりは、本当に俺死んだのか……」


「その通り。お前の頭には今わっかがあるハズだ」


俺はそっと頭に手を当ててみた。


……そこには本当に、わっかがあった。


「お前は今、階段から落ちて死んだんだ。そのわっかと、階段にある血痕とお前の死体がその証拠」


天使の指差す先、そこには白目をむいた俺の身体があった。


後頭部からはもの凄い量の出血。


「……マジか」


めちゃくちゃ理解し難いな……現実。


「マジよ、あんたは死んだの。死者の魂は死んだ瞬間から49日以内に天国へ行かないと地縛霊になるから、早めに天国へ行きましょう」


そう言って俺の腕を掴む天使。


「……俺、本当に死んだのか」


信じられない。


「本当よ」



天使は俺の言葉をさらっと流す。


「……やっぱり信じられない」


「本当よ、あんたは死んだの。今はもう誰にも視認されない魂の存在になってるんだから」


「もう俺、魂になってるのか……」


「そうよ。何なら全裸になって街中でも走ってみなさい。誰も気付かないから」


「……マジか」


「マジよ」


「…………」


「…………」


「……よし、脱ぐか」


「……真に受けるな、この二段目バカ!」












【れっつヘヴン】


「すげぇ、今俺空飛んでるっ!?」


俺は今、天使と共に空を飛んでいた。


天国への入り口、ヘヴンゲートは某国の某都の某区の某馬喰町駅の中にあるらしく、今そこへ向かっているのだ。


……ってか、


「何で馬喰町駅なん?」


俺の呟きに、天使はダルそうに答えた。


「ヘヴンゲートは神様が何百年も昔、何か知らんが適当に場所選んで、そこに設置したらしい」


「適当に……って……」


「ちなみに日本には4つのゲートがあってな、場所は馬喰町、北赤羽、八丁堀、練馬高野台……」


「全部場所が某都だし、そもそも某都の中でもマイナー過ぎる場所ばっかりだ!!」


神様適当過ぎるッ!










【馬喰町駅の……】


「馬喰町駅の改札機、右から2番目の改札機の切符投入口がヘヴンゲートに繋がってるんだ」


「切符投入口ッ!?」


「さあ入れ」


「入るかッ!!」











【その他の方法】


「駅の切符投入口以外からの天国への行き方は……成仏とか?」


「最初からそれでいいだろッ!」












【で、いざ成仏】


「よし、成仏するならまず未練を持つな? 未練持つとなかなか成仏出来ないぞ?」


「わ、分かった」


馬喰町駅の1番線ホーム。


そこで誰にも見られる事のない、魂の成仏が始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ