私は、そんなにいけない事をしましたか?
残酷な描写(自傷行為)があります。
決して、リスカを推進している訳ではありませんので。
携帯小説なんかによくある設定で腐女子や腐男子の兄やら姉やらは、主人公が腐れオタクでも生温かく溺愛してたりする。
そんな家族がいたらいいと心底思うのは、うちの兄姉がオタクやら腐れ女を心良く思わないから。
兄妹ですら拒否る程、両親ならなおのこと駄目だ。
テレビで秋葉原が映れば、お前もこういうのが好きなんだろと馬鹿にされる。
そんな事ないと反論出来ないままに、俯いた事が何度あった事か。
テレビに映し出される誇張されたようなアニメや漫画、ゲーム等を好きな人間達を面白可笑しく紹介される度に、お前もそうなんだろと蔑まれる。
それに乗るように、妹が犯罪者なんて嫌よと、姉が言う。
そればかりでなく、アンタが変な格好でもしたら家追い出してやるからとまで言われる始末。
私に何かのコスプレする趣味はないし、身体に自信がある訳でもない。
そんな区切り等、解る筈もなく嘲笑される。
コツコツと貯めたお金で買った同人誌が、母親に見付かりビリビリに破かれて捨てられた時が一番堪えた。
言葉の暴力、否定、それらを上回る実力行使。
普通の家庭、普通の娘を望まれ、それから外れた私は要らないのか。
「漫画、アニメ、ゲームは馬鹿な人間を作るのよ。下らない物に没頭する暇があるなら、勉強しなさい」
私の趣味はそんなにいけない事だったのか?
どうして勝手に私の物を捨てたのかと聞いた私に対しての母の回答に、涙すら出ない。
ごめんなさいと、部屋に戻るしかなかった。
誰に迷惑をかけたのだろう。そっと自身の部屋の中で、趣味の漫画をほんの少し読んではいけないのか。
私は腐女子だという自覚があって、それは世間様に顔向け出来ない趣味ならばこそ、隠れて楽しむものだと理解していた。
公言すらしていないそれに、だけど周りはそれを許してはくれないのだ。
一つ一つ、積み重なっていく鬱積。
何度も踏みにじられて、ぼろぼろになっていく心。
幾度、悔しいと悲しいと泣いた事か。
そうして、我慢する事を当たり前だと思うようになって、自分の手を傷付けると胸がスーっとするようになったのは、一体何時だったのだろう。
手首に傷を付けるような真似は、敢えてしなかった。
最初は、指。
ぷつりと、指先に赤い粒が出るような程度の傷。
時に手の甲へ、三本の線を入れて猫に引っ掛かれたと言い訳する。
家族の誰かに詰られる度に、それを抑えるように傷を付けた。
痛い筈のそれは、どうしてだか私には心地良く、自分の手に傷を付ける毎に、胸に巣食っていた蟠りがほどけた気がした。
私はきっと可笑しいんだ。
肉親は、私が可笑しい事を知っているから糾弾する。
普通であるなら、自分の身体に傷を付けて安心したりはしない。
解っていても止められなかった。
止めようとした事もあったけど、無理だった。
「お前が運動神経が鈍いのは、漫画ばかり読んでるからだ」
ある日、そう兄に笑いながらそう言われて、慌てて部屋に戻った。私は兄の前だというのに腕を切りたくて堪らなくなったからだ。
部屋に戻った私は、それでも駄目だ駄目だと、その衝動を無理矢理抑え込もうとしたのだが、反動なのか身体が勝手に震えてしまった。
怖い、怖い、怖い。
何が、怖いのか解らないけど、兎に角怖くて堪らなかった。
震える身体、叫び出してしまいそうな自分の口を押さえて宥めようとした。
変に叫び出せば、私はますますこの家に居辛くなる。
結局、私はまた手を切った。
だって、そうしなければ私が私じゃなくなる、私の抑え込もうとしている何かが溢れてしまうではないか。
ああ、またやってしまった。
今日は、勢いのあまりに深く傷を付けてしまったらしい。
馴染みになった消毒液の匂いに、心が落ち着く。
私の心落ち着く時間に、傷を付ける時と、それを消毒液で治す時が加わった。
BL本を読むのは、男女の、自分の恋愛にあまり興味がないからなのかも知れない。
単純に、女性の願望で耽美な世界だからのめり込み事が出来たんだと思う。
現実なんて、汚なくて嫌な事ばかりだから。
そうやって、現実逃避のように漫画や小説を読み、見付かると破り捨てられる。
汚らわしいと罵られ、腕を切って、治して、また本の世界へ逃げて、エンドレス。
悪循環の中で、積み重なっていく鬱積は傷口を深く多くしていった。
そうして、とうとうそれが表に出ざるを得なくさせる事態が起きる。
たまたま、自室でまた腕を切ってしまった後、傷口に消毒液を振り掛けている所に、母が来てしまった。
「アナタ、何してるのっ!?」
見られた、知られた事への罪悪感。
それに反する、期待。
もうこれで、こんな事をしなくてもすむと思った。
理由を聞いてくれると思ってた。
お母さんは顔色を変えて私に近付くと、私の左手の袖を捲り上げた。
露になる、幾つもの傷後。
謝ろうとした私の言葉を遮って、お母さんは私の頬を叩いた。
「私がっ……私が、障害もなく綺麗な身体で産んであげたっていうのに、アンタは何の不満があってこんな真似したの!」
じわり、涙が出た。
ごめんなさいと、小声になったが言ったけど、お母さんには聞こえなかったらしい。
「二度と、こんな馬鹿な真似をするんじゃないわよ、いいわね! 上のお兄ちゃんもお姉ちゃんも、いい子だったのにアナタはそうやって何時も何時も家族の恥じになるような事ばっかりやって! どうしてそうなのよ! 少しはマトモになろうとは思わないの?!」
足を踏み鳴らし、怒るお母さん。
馬鹿な真似?
馬鹿な真似をしただけにしか、お母さんの目には映らないの?
もう駄目だと、思った。
何かが、ぷつりとキレた。
「あぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっ………!!」
ガチャン、ガン、バン……と、其処らにある物を床に投げ付けて、絶叫した。
「いやぁぁぁーーー………もうやだもうやだもうやだもうやだ死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたいっ!」
身体打ち付けて、暴れて叫んで死にたいと連呼した。
出来の悪い壊れた玩具みたいだ。
驚いたお母さんの顔も何もかも、どうでもいい。
死にたかった、死にたかった、いっそ殺して欲しかった。
暴れて暴れて暴れた私の身体を、誰かが抑えようとした。
振り払って、暴れて、殺してと叫んで、叫んで、叫んだのに、誰かが、言うのは「ご近所に聞こえる」とか「みっともないから止めなさい」とかだけ。
自分自身でも止められなくなってた私を、兄が思い切り頭を打ち付けるように突き飛ばして、大人しくさせた。
一気に、私の目の前は暗くなった。
眼を覚ました私。
部屋の中は酷い有り様で、自分のやった事を再確認させられた。
ぼんやりベットの上で天井を眺めていた私に、誰かが近付いて来た。
「起きたの……」
お母さんが、疲れた顔してベットの端に座る。
私の手を握りしめてくれた。
「ごめんね……」
ぽろりと、お母さんが涙を溢しながら謝った。
それに、焦って起き上がり私も母にごめんなさいと謝ろうとした。
「私が、アナタをマトモに産んであげてれば……」
私は、マトモではないらしい。
私は、産んだ事を後悔されるような存在らしい。
私は、やはり生きていてはいけないみたいです。
私は、私は、そんなにいけない事をしましたか?
私という彼女の結末的なモノは、ファンタジー的な話しにするなら、ゲームの世界に入ったり、異世界トリップして美青年に溺愛されてしまえばいいと思います。
しかし、現実的に考えると暗い未来しかないかなと思えてならないんですわ。
結局、お母さんすらも彼女を見捨てちゃってる訳ですし、元々家に居場所がないのが、暴れたせいで更に居場所がなくなりましたからね。
・父方か母方の田舎のお婆ちゃん家に引き取られる。
・児童相談所に預けられる。そして、児童相談所に来ていた子と友達になる。(ぶっちゃけグレそうですが)
二つ未来を考えて、田舎でのんびり出来たら幸せになれるかなぁとか、思ったり。
最初から最後まで暗くてごめんなさい。
この物語の彼女は、ただ心配して欲しかった、自分の話しを聞いて欲しかったという気持ちを上手く出せなかった不器用な優しい子にしたかったんです。
優しいから周りに当たる事も出来ず、全て自分に溜め込む〜みたいな?
最後まで読んで頂きありがとうございました。