#30 特異な個性
壇上に上がった俺と、皓・陶之介・夢威。
その後ろには1学年全員分の視線が集まる。
百合乃先生は、魔力観測装置――
“マナフロー・リフレクター” の水晶板を四枚並べた。
「はい、順番に手をかざしてね。
これは“魔力の流れ方”を見るだけだから、誰でもできます!」
皓が一歩前へ出て、水晶へ手をかざす。
水晶の内部で、稲妻のような光が走った。
直線的で、鋭く、高速。
まるで迷いのない矢。
講堂が少しざわつく。
「うんうん、さすが雷属性ね。
“一直線で突き進むタイプ”。
爆発的だけど、扱いは難しいのよ〜」
皓はニヤッと笑う。
「やっぱ俺、こういうとこ目立つよな」
次。
陶之介が手を置くと、水晶板の内部がすっと暗くなった。
ただの黒ではない。
ゆっくりと回転し、深く沈み、
別の層が奥にあるような――そんな複雑な影。
百合乃は目を輝かせた。
「闇属性は珍しいからね〜!
これは“多層的・階層的・深層循環型”。
感情が乱れると渦が暴走するタイプだから要注意ね!」
陶之介は肩をすくめる。
「俺はそこまで感情的じゃねぇよ」
次は、夢威が手をかざす。
水晶の内部がふわっと揺れた。
風が吹いたように、曲線が気まぐれに舞い、
くるくると自由に回っては消え、また現れる。
「……あらら? これ、かなり“自由気まま”ね。
しかも、“魔力の方向”が一定じゃない。
直感で魔法を使う子に多い流れなんだけど……君、相当感覚派?」
夢威はコクっと頷く。
「……考えると眠くなるから……直感でやってる」
皓が吹き出した。
「お前、授業で先生の頭抱えさせるタイプだろ」
講堂が少し静まる。最後は俺か…。
ま、何も気負うことはない。俺は適当に手をかざした。
次の瞬間――
水晶の内部が、止まった。
光も、流れも、層の動きさえも。
まるで装置ごと時間が固まったように。
ざわ……り、と講堂が揺れる。
「あれっ……? ちょ、ちょっと待ってね……壊れた? え?」
俺は手を離す。
すると、
水晶は“急激に追いつくように”光の線を高速で刻み、
円軌道、直線、渦、層……
すべての属性の流れに近い軌跡が次々に現れた。
皓が目を丸くする。
「……おい、今“雷”みたいなのも混じってなかったか?」
陶之介は眉をひそめる。
「闇の層構造も見えた気がしたが……気のせいか?」
夢威だけはぽつりと言った。
「……時計みたいな動き、してた」
俺は気遣うように百合乃を見る。
「先生、俺のせいでぶっ壊したなら弁償するけど?」
百合乃はぶんぶん手を振る。
「こ、壊れてはないの! ただその……
今の、解析できない、というか……
わ、わたしの勉強不足かもしれないけど……
“あんな流れ”見たことない……!」
講堂が騒然となる。理紅虎と瑞翔は顔を見合わせる。
「え、時属性ってああいう感じなの?」
「世界初の属性のことなんて、俺が分かるわけないよ…」
虹矢は訳が分からず叫んでる。
「動きが全部止まったぞ!?どうなってんだ」
昴は何かが閃いたように言う。
「今の、合体魔法の動きにも似ているかもしれない……」
莉亜と紫亜も何やら話している。
「やっぱり天竜 玲磁の魔法は枠外ね。」
「うん。私、興味湧いてきたかも…」
「紫亜、あんたもしかして」
「大丈夫。ちょっと考えてることがあるだけだから」
そしてもう1人、鮮やかな緑色の髪を伸ばした中性的な少年がひとりでぼそっと呟く。
「あの人、面白いなぁ」
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ここで、悪ガキトリオの空気が変わる。
皓がぽつり。
「……玲磁、お前……
昨日の噂、マジだったのか?」
陶之介は腕を組む。
「なんかすげぇのは分かったが……
よく考えたら、こいつが規格外でも別に驚く話じゃねぇか」
いや、実際問題、かなり困るんだが。
「俺としては、沙羅先生に“基本魔法以外禁止”って言われてんだよ。
目立つと怒られるの俺なんだけど」
夢威は相変わらずのんびり。
「……玲磁くんだけ、動きが“逆回転”だったね。
きれいだった」
「逆回転って何だよ…」
百合乃がまとめに入る。
「四人ともありがとう!
すっごく良い見本だったわ〜!
特に玲磁くん……あれは、ええと……
“今後の研究課題”として私のメモに書いておきます!」
「先生それ……俺もう授業中ほぼ観察されるやつじゃん」
陶之介が「ざまぁみろ」、皓は「ウケる」、夢威まで「……観察、楽しそう」と言いたい放題。
こうして、翌日の午前授業――
悪ガキトリオ+夢威は、1年生全員の前で“個性を晒す”ことになった。
一応言っておきますが、基本的には魔法が使える少年少女達の学生生活が楽しく、淡々と、日常のように続いていきます。
悪党が襲ってきたり、変な陰謀に巻き込まれたりとかは今後もほとんどないと思います。




