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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第一章 入学編

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#28 屋上

決闘を終えた二人は、汗を軽く拭いながら屋上への階段を上がった。

俺もついていく。


夜の風が吹き抜け、校舎の灯りが下に点々と揺れている。


ひかるがフェンスにもたれかかりながら言う。


「……やっぱ夜のほうが落ち着くわ。誰もいねぇし」


陶之介すえのすけは壁に背中を預け、腕を組んだまま。


「騒ぎてぇ時に騒げる場所があるのは悪くねぇ。

 負けようが勝とうが、どうでもいいしな。

 勝負なんて、当たるか外すかだけだ」


それは悔しさゼロの、淡々とした本音だった。


皓はそれを聞いて吹き出した。


「お前、本当そういうとこ変わんねーよな。

 俺が勝っても一ミリも鼻にかけさせねぇ」


「鼻にかけられても困る」


「うるせ」


俺は二人のやりとりを黙って聞いていた。


……なんか、いいよな。こういう関係


皓がこちらを向く。


「なあ玲磁れいじ、お前さ……あの噂、本当なのか?」


「噂?」


「今日、お前が何かすげぇのをやったらしいって。

 銀だの、なんだの、でけぇ水の化け物だの……

 聞いたけどよ。見てねぇから分からん」


陶之介も視線だけ寄越す。


「風で鎖作ったとかも聞いたな。

 嘘みたいな話だ」


声に興味はあるが、信用はしていない――そんな淡々さだ。


俺は苦笑して返す。


「あー……まあ、色々あった。でも今は使えねぇよ」


皓は肩を竦めた。


「お前がそんな万能な魔法使えるなら、

 俺らの順位とっくにひっくり返ってんだろ」


まあ実際使えるんだけど、言わねぇ。


三人の間に、夜風だけが流れた。


そんな静かな夜だったのに――

突風がひとつ、屋上をひっくり返すように吹いた。


三人は一斉に顔を上げる。


そこに立っていた。


――如月きさらぎ 沙羅さら先生。


いつの間にか、すぐ近くまで来ていた。


髪もスカートも風に揺れていない。

ただ「そこにいるだけ」で、場の空気が一変する。


「……あなたたち。

 随分と楽しいことをしてくれるじゃない」


皓の肩が見事に跳ねる。


陶之介は微動だにしないが、若干目が泳いでいる。


俺はというと――覚悟を決めるしかなかった。


「先生、俺……今回はマジで何もしてないんだって。

 本当だぞ」


沙羅は細い目をさらに細める。


「ええ。知ってるわ。

 あなたが関わるときだけ風の流れが変わるの。

 だから来ただけ」


なんでそんなもん分かるんだ……?


皓が震えた声で言う。


「……せ、先生、今回は俺らだけで……!」


「あら、分かってるわよ。

 でも悪ガキトリオのうち二人が暴れていたら、

 残り一人も十中八九そこにいるもの」


俺は頭を抱えた。


「俺のせいじゃねぇのに貰い事故すぎる……」


沙羅はきっぱりと言い放つ。


「雷と闇のぶつけ合いは危険。

 校則で夜の決闘は禁止。

 減点三名分、後日出しておくわね」


「三名分!?」


「玲磁くんは巻き添えよ。

 あなた達は“仲間”なんだから」


「これから誰が何をしても連帯責任かよ…」と陶之助が呟く。


沙羅はくるりと背を向ける。


「反省することね、三人とも。

 次やったら本気で怒るわよ」


そう言い残して、風もないのに

ふっと姿が遠ざかるように去っていった。



皓がその背中を見送りながら、ぽつりと。


「……あの人、なんで俺らの位置分かんだ……?」


陶之介が淡々と言う。


「“嵐の問題児”の二つ名は伊達じゃねぇってことだ。

 教師でもあり、怪物でもある」


「嵐の問題児…?なんか、物騒な呼ばれ方だな」


俺は、天を仰いだ。


「……俺、今後が怖ぇ」


そう言って、3人は同時に笑う。


屋上には、

悪ガキトリオの笑い声だけが響いた。

●悪ガキトリオ

幸崎 皓:好戦的。特攻隊長。

京極 陶之介:不良。破壊的。

天竜 玲磁:いたずら好き。頭脳派。

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