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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第一章 入学編

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#24 時属性以外の魔法

練習場の空気は、さっきとは違う緊張感に満ちていた。


沙羅さら先生は風を従えるように立ち、腕を組んで生徒たちを見渡す。


「ここは1-Eだけの演習。

 容赦はしない。自分の属性を“正確に、丁寧に”扱いなさい」


その一言で、瑞翔みずと理紅虎りくとも背筋が伸びる。


俺は……なんとなくぼんやり立っていた。正直、午後二発目の授業は眠い。


沙羅が先に目をつけたのは魅亜みあだ。


「魅亜さん。火球、最小でいい。前へ」


魅亜は深呼吸し、渾身の小さな炎を手のひらに灯して放つ。

その火はふるえていたが、着実に的へ向かい――当たった。


沙羅は微笑む。


「よく頑張った。今日はそれでいい」


魅亜の頬がほのかに赤くなる。

遥花が嬉しそうに拍手した。


次は瑞翔みずと理紅虎りくと遥花はるかと続き、それぞれの“今持てる最善”をきっちり評価していく。


虹矢こうやは……相変わらず奇声を発していたが、なぜかシャボン玉のような小さい泡が、ふよふよと明後日の方向へと消えていった。


いったい何属性なんだよ…水か風か分からんが、それじゃ使い物にならないだろ。


そして最後。


沙羅の視線が、ずっと避けていた人物に止まった。


「……玲磁くん。前へ」


玲磁は目をこすりながら出ていく。


「んあ、俺か…大丈夫、まだ寝てないです」


「寝てないのは知らない。

 あなたの“実力値”を測らせなさい。――全属性の中から一つ、使って」


俺は首をかしげる。


「時じゃなくて?」


「時は禁止。暴走したら止められる保証はない」


しょうがねぇな…俺は肩を回す。


「じゃあ……まずは土で」


地面に手を触れた瞬間、空気が震えた。


土が盛り上がり、純度の高い銀だけが“選択的に”抽出される。

まるで高度精錬の魔法工房。


玲磁は銀を半球状にまとめ、浮かせながら指先で形を変える。


みるみるうちに――

直径30cmの巨大な銀時計 が空中に完成した。


瑞翔が息を呑む。


「……え? 理紅虎、これ……普通に“上位の錬金術師”の仕事では?」


理紅虎は硬直したまま、口を半開きにしている。


沙羅は無言だった。

というより、ため息を飲み込んでいた。


「次、風もやらせて」


なんか楽しくなってきた。俺は指を鳴らす。


空気が瞬時に密度を変え、

50メートル以上の鎖状の“風のチェーン” が天へ向かって伸び上がった。


鎖は実体化したかのように重厚で、

振ると大気が唸りをあげる。


理紅虎のフェンリルがビクッとして後ずさる。


瑞翔は震え声で言った。


「え、ちょ、待って。風って……こんな……長物、普通、作れないよね?」


理紅虎は青ざめている。


「玲磁……これ、演習のレベルじゃない……」


よし、上手く制御できてるな。


「じゃ、最後に水」


手を天に向けた。


空気中の水分が渦を巻き、

玲磁の手の動きに合わせて形を取り始める。


一瞬で巨大な水の龍――いや、翼を持つワイバーンへ。


水の翼竜は玲磁の頭上を旋回し、

陽光を受けて青白く輝いた。


意志のない、翼竜の形をしたただの水の塊だが…生徒たちの視線が釘付けになる。


俺は満足げに手を下ろす。


「まぁ、こんな感じ? まだ適当にやっただけだけど」


その瞬間。


「――玲磁!!」


ずっと目を丸くして見ていただけの沙羅の怒号が響いた。


風がビリッと震え、

水の翼竜はその場で霧散した。


沙羅は額に手を当てて、深く深くため息をつく。


「…やりすぎよ。

 こんなもの、1-Eの演習内容じゃない」


「いや、加減したんだけど……?というか俺の魔法って、実戦だと役に立たないんだよなぁ」


「その“手加減”の概念をいったん校長に点検してもらいなさい」


瑞翔がぽつり。


「玲磁……もしこれを“実技試験で”やってたら……」


理紅虎が続ける。


「……普通に、学年一位だったんじゃ……?」


俺は肩をすくめる。


「学科試験は寝坊して受けられなかったし、適性外の魔法で試験受けても、あんまりじゃね?」


魅亜が半泣きで叫ぶ。


「ずるいよ玲磁ぃ! 何者なの!?」


遥花はぽーっと玲磁を見つめていた。


「……すご……」


沙羅が手を叩く。


「全員、今日の演習は終了!

 玲磁は放課後、職員室に来なさい! 校長も呼ぶ!」


玲磁が心底イヤそうに言う。


「校長も!?」


瑞翔が呟く。


「……合研部、化け物しかいない気がしてきた」


理紅虎がこっそり頷く。


「瑞翔……俺らは普通の生活がしたい。合研部に入るのだけはやめておこう……」


「ああ……」

基本、ほとんどの魔法使いは適性外の属性魔法も訓練で使えるようになります。


例えば、魅亜みあは幼少期の事故がきっかけで火を怖がるような性格になった上、母親からも火属性以外を強く勧められるようになったので、水や風もある程度使いこなせます。


玲磁れいじに関しては、大体の魔法はイメージを具現化できるようですが、実戦・攻撃魔法を好まない性格です。

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