#22 勧誘
三人で属性談義に花を咲かせていた、その時だった。
トレーを片手にした影が、迷いなくまっすぐこちらへ向かってくる。
「――やっぱりここにいたか、玲磁」
篝火 昴だった。
落ち着いた雰囲気だが、火属性特有の“芯の強さ”が滲む。
女子の視線もちらちら飛んでくるが、本人はまったく気にしていない。
俺は軽く片手を上げ、手招きする。
「よ。座れよ、空いてるぞ」
「ああ、お言葉に甘える」
昴は自然に席へ腰を下ろし、
その瞬間、朝と目が合う。
二人ともすぐに気づいた。
「あ、寮の同室の……!」
「おう、切追。初日ぶりだな」
二人は軽く笑い合う。
朝が説明するように話す。
「さっきも言ってたけど、俺と昴、寮で同室になったんだよ。
この人、めちゃくちゃ片付け早いし、生活リズムも整ってるし……なにより火属性なのに“落ち着き”の塊なんだよ」
昴は苦笑する。
「火は暴れる属性と思われがちだが、制御してこそなんだ。
切追、お前はすぐ寝るから静かで助かってるよ」
「うっ……それ褒められてんのかな俺?」
遥花がくすっと笑い、空気は柔らかく和む。
⸻
昴は俺の方へ身体を向けて、本題を口にした。
「そうだ玲磁。ちょうどいいから伝えておく。
合体魔法研究部、正式に申請を通した。
仮承認も出たし、あとは部員集めだな」
朝が目を丸くする。
「え、もう通ったの?早すぎない?」
昴は肩をすくめた。
「玲磁の思いつきは、思いつきで終わらせたくなくてな。
俺も興味があったし、どうせなら一緒にやりたいと思った」
俺は照れ隠しのように視線をそらす。
「いやあ、副部長が優秀すぎると助かるわ」
「なら部長も働け」
「はいはい」
朝が笑い、遥花も思わず口元を押さえた。
⸻
昴は二人を見渡し、
あくまで紳士的に、押しつけにならない口調で言う。
「二人とも、もし興味があれば――だが。
合研部、来てみないか?
属性の組み合わせを研究するから、どの属性でも歓迎だ」
朝が指を組んで考え込む。
「うーん……正直、興味はめっちゃある。
光と時の組み合わせとか普通に見てみたいし。
だけど、俺……もう決めたんだ」
俺たちが待つように視線を向けると、
朝はふわっと柔らかく笑った。
「魔法芸術部に入る。
あっちの世界で、もっと光の“表現”をやりたい。
美術も音楽も魔法も混ざってるし、俺にはあそこがしっくりくるんだ」
昴は納得したように頷く。
「切追には似合ってるな」
「うん。なんか分かる気がします……」
遥花も嬉しそうに言う。
朝は照れたように頬をかく。
「こういう感じで“自分の本音を言える場所”ってさ、意外とないからね。
だから芸術部、たぶん向いてるんだ。
でも――合研の発表とかあったら絶対見に行くよ」
玲磁が笑った。
「おう。観客として来いよ」
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昴は次に、遥花を見た。
「桜さんはどうだ? 興味がなければ無理にとは言わない」
遥花は少し迷ったが、
胸の前でそっと手を握りしめ、言う。
「……やってみたい、って気持ちはあります。
誰かの役に立てればいいなって、ずっと思ってたから。
でも……ちゃんと考えてから返事したいです」
昴は優しく頷く。
「それでいい。急かすつもりはないからな。
気が向いたら、いつでも来てくれ」
俺も続けて言う。
「遥花が来たら、部の雰囲気も明るくなるだろうな」
「そ、そんなこと……!」
遥花はまた耳まで真っ赤になった。
朝が茶化すようにひそひそ声で言う。
「玲磁、言い方ストレートすぎ。そりゃ照れるって」
「そうか?」
「そうだよ」
⸻
四人は、昼休みの終了ギリギリまで、
属性の話や部活の話で盛り上がり続けた。
光、火、土、時――
相性も違い、出自も違って、価値観も違う。
だが、不思議なほど自然に混ざり合っていた。
登場人物の多い小説を書いていて、気をつけなきゃならないのが一人一人の性格です。
違和感のあるようなことを言わせたり、やらせたりしてはいけない。
このあたりは、過去のやり取りを読み返したり、データベースと照合したりとそこそこ気を使います。
キャラ崩壊、ハタから見たらめっちゃ萎えますからね…




