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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第一章 入学編

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21/201

#20 佐々峰家の過去

授業終了の鐘が鳴り、学生たちがざわつきながら席を立つ。

悪ガキトリオは同時に伸びをし、ひかるは「眠かったー」と騒ぎ、

陶之介すえのすけは「お前はいつもだろ」とぼそり。

弥来みらいは友達を見つけ、ひらひらと手を振って去っていった。


さて、俺も行くか。立ち上がり、机を整えて廊下に出ようとしたその時。


天竜てんりゅうくん」


振り返った先。

人の流れの一歩外。

気配をほとんど消していたはずの少女が、まっすぐ立っていた。


佐々さざみね紫亜しあ。紫色の長い髪が揺れている。


「ちょっと話せる?」


声音は静かで柔らかい。けれど、拒否された経験がないような確信めいた響きもある。


俺は短く息をついて、皓と陶之介へ顎で合図した。


「悪い。ひかる、スエ、先行ってて」


皓は「お、女か?」とニヤつき、陶之介は「……へぇ」と意味深な目を向け、

二人は人混みへ消えていった。


紫亜に向き直る。


「えーっと、確か君は」


「佐々峰 紫亜だよ。莉亜りあ姉さんの妹。

 ……Eクラスの君には、魅亜みあの姉って言った方が分かりやすい?」


言いながら、瞳だけがすっと細くなる。

俺を“測る”ような視線だった。


「まぁ、その方がピンとくるわ。妹が世話になってる」


軽く言うと、紫亜はわずかに唇の端を上げた。


「魅亜のこと、気にかけてくれてるんだね。ありがとう」


ふわりとした声だ。


しかし、実のところそんなに言うほど気にかけてはなかったな。まだ学校始まったばかりだし、会話したのも数える程しか記憶にない。


紫亜の声色が変わる。


「……でも、魅亜が実力を出せていない理由、知ってる?」


俺は小さく首を振る。そういえば沙羅さら先生も言ってた。実技を恐れてる…だっけ?


紫亜は廊下の柱に指先を触れ、そこを見るともなく語り始めた。


「昔、家で事故があったの。

 いつかは起きてた…きっと避けられなかった事故。 子供の頃は魔法の制御が難しいって言うでしょ?

 魅亜の魔力、小さい頃から姉妹の誰よりも高かったから…

 それで家が、火事になって…。

 でも、魅亜はあの日を境に“火”が怖くなった」


俺は怪訝そうな目を向ける。


紫亜は続ける。


「ウチの母は、火属性そのものを嫌悪するようになって……

 魅亜は才能があるのに、“火を使うこと”を褒められたことすら、ほとんどない」


眉がわずかに動く。


「……それであの魔力値か。660だろ?すげぇじゃん」


紫亜は微かに笑った。

闇属性らしい、影のある笑みだった。


「そう。だから言ったでしょ。

 魅亜は――私たち姉妹に負けないくらいの力を持ってる」


俺は腕を組む。


「あいつ、明るいけど……ずっと遠慮してる感じはしたな」


「うん。でも、それはゆっくりでいい。

 彼女は“自分を取り戻すきっかけ”を探してるだけだから」


一瞬だけ、紫亜の瞳が俺の目を捉える。


そこには、興味、計算、そして何か別の色が混じっていた。


「じゃあ、次の授業あるから。またね」


「ああ」


紫亜はくるりと踵を返す。

その歩き方は静かで、けれど存在が薄れるわけではない。


廊下の少し先で、莉亜が立っていた。

紫亜は迷わずその隣に並ぶ。


二人は短く言葉を交わして歩き去る。

そして一度だけ――

莉亜が玲磁のほうを振り返った。

ほんの一秒。

それから、すぐ前を向いて姿勢を正す。


俺は軽く息を吐いた。


「さて、俺もそろそろ戻るか」


人気の薄くなった廊下を歩きながら、銀色の瞳を細めた。

六大魔法名家紹介


佐々さざみね

【担当】研究・教育

魔法名家の中では最も歴史の古い家系。祖先は初めて属性という概念を提唱したとされ、現代の魔法体系の根幹を作った。血縁からはあらゆる属性に適性を持った者が生まれ、幅広い才能を持った魔法使いを輩出している。


父 佐々さざみね 源流げんりゅう

適性 土

佐々峰家の当主。属性魔法の研究や教育カリキュラムの改良など、日々忙しい。


母 佐々さざみね 鎭羽しずは

適性 風

過去の火災事故のせいで、母は火属性を嫌悪するようになり、魅亜に対しても「別の属性」を使うよう強く言っている。


長女 佐々さざみね 莉亜りあ

適性 水

次女 佐々さざみね 紫亜しあ

適性 闇

三女 佐々さざみね 魅亜みあ

適性 火

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