#18 いたずら好き
次の日の朝。学校にも慣れてきたし、そろそろやってみるか。
校内案内板の矢印だけが、ほんの数秒遅れて動く“妙な時差”を生じさせ、俺は満足げに腕を組む。
やりすぎず、でも気味悪い……これくらいが丁度いいんだよ。
矢印を眺めていると、横からニヤけた声が飛んできた。
「これやったのお前だろ」
振り向けば、黄色い髪の少年が腕を組んで立っていた。
目がキラッキラしている。
「……なんの話だよ」
「このズレ方、天才の犯行。俺こういうの大好きなんだわ」
うわ、面倒な奴来たな…と、
そう思ったが、相手は勢いよく手を差し出してきた。
「幸崎 皓、Cクラス、適性は雷。……お前、面白いな? 俺と仲良くしようぜ」
「ま、別にいいけど」
皓は最初から俺を同類として扱っているらしい。
そんな空気の中、背後から低い声が落ちてきた。
「幸崎…お前また騒いでるのか」
歩く音は静かで、存在感だけが圧を放っていた。
黒髪に金メッシュの長髪、金色の瞳。見ただけで分かる“危険物”。
「やってねえよ! 今回は、こいつが――」
鋭い目が俺に向けられる。
「いや、まだ俺がやったなんて一言も言ってないが…?」
値踏みをするような目。横から皓が言う。
「あ、こいつは京極 陶之介! Dクラスなんだが、見た目どおりヤバ――」
「幸崎…余計なこと言うな」
黒髪の少年は一度だけ小さく息を吐き、玲磁に向き直った。
「……天竜 玲磁、だな。学年最下位。魔力値は謎のマイナス値」
「よく分かったな」
「皓が笑ってる時点で“普通じゃない”のは明白だ」
「どういう意味だよそれ!」
「そのまんまの意味だ。時魔法の噂はDクラスにも広がってる……天竜、お前、こういう遊び、嫌いか?」
「好きだけど」
「なら、混ぜろ。幸崎だけだと方向性が片寄る」
(いや、初対面で何言ってんだコイツ)
しかし、悪い気分ではなかった。
そこへ――気配ゼロの風。
「あなたたち。休み時間に何をしているのか、聞いてもいいかしら?」
三人とも条件反射のように固まった。
(終わった)
「……別に、変なことは」
「“別に”の範囲を教えて。玲磁くん」
「…………すみません」
「幸崎くんも京極くんも。あなたたちは玲磁くんに巻き込まれたのね?」
「ま、まぁ……そんな感じで……?」
「否定はしない」
あの沙羅先生が、怒鳴らずにじわじわ来るのがいちばん怖い。
静かに注意したあと、風のように肩をすり抜けるように歩き去った。
「――玲磁くん、あなたの時魔法、暴走させないこと。次は止められないかもしれないわよ?」
(……全部バレてるし!)
「この矢印、戻しておきなさい」
先生が去ると、皓がニヤッと笑った。
「なあ、玲磁。今のやり取りで確信した」
「なんだよ」
「俺ら三人、絶対《同じ穴のムジナ》だって」
「勝手に決めんな」
「でもまあ、悪くはねえだろ?」
「……確かに」
陶之介は少しだけ肩をすくめた。
「群れる趣味はないが……お前らなら、退屈はしなさそうだ」
「やっぱそうだよな! よし――決まり」
皓が指で三角形を作るように二人を指差す。
「――今日から俺ら、“悪ガキトリオ”だ」
「呼び名は好きにしろ。……乗る」
「うん、悪くないな」
こうして――
アルテリア魔法学校に三つの異常値がひとつになった。
“悪ガキトリオ”誕生。
登場人物紹介
●幸崎 皓
【性別】男
【適性】雷
【総合順位】61位
【学科】144位
【実技】5位
【髪】黄色
【瞳】黄色
実技で非凡な成績を残したが、学科が壊滅的に苦手であったためCクラスになった。
幸崎家特有の、珍しい雷属性の使い手。好戦的で決闘好き。
玲磁・陶之介と共に悪ガキトリオと呼ばれるようになる。
また、弥来という双子の妹がいる。
●京極 陶之介
【性別】男
【適性】闇
【総合順位】92位
【学科】147位
【実技】44位
【髪】黒の長髪に金メッシュ
【瞳】金色
アウトローな性格で、皓とは中学時代からの友人。
破壊衝動を秘めているが、理性的。
見た目からして典型的な不良なため、男女問わず怖がられがち。
玲磁・皓と共に悪ガキトリオと呼ばれるようになる。




