#17 1-C 風鈴 夢威
昴と握手を交わした直後。
「――ん?」
気配を感じて振り返る。
そこに、ひょこっと顔を出していた少女がいた。
深緑ショート。
猫耳みたいにふわっと跳ねた髪。
眠そうな半目。
1-Cの制服。俺は思わず聞く。
「……え? 誰?」
少女はぼんやり二人を見た後、ぽつりと呟いた。
「……いい匂い……したから、来た」
「匂い?」
昴が眉を上げる。
少女は胸に手を当てて、くんくんと小さく鼻を鳴らす。
「んー……新しい風の匂い。混ざり合う感じ。
……なんか、面白そうだった」
昴と顔を見合わせた。
「面白そうってなんだ…?」
「ていうか、どうやって気づいたんだ?」
少女は気にせず、近くの段差にちょこんと腰かける。
「ふあ……眠い……。
ねぇ、何してたの、二人とも」
これには俺が答える。
「えーっと……部活作ろうとしててさ。
“合体魔法研究部”って名前で」
少女の目が一瞬だけぱちんと開く。
眠気の裏に、ほんの刹那だけ鋭さが光った。
「……合体魔法……?」
昴が軽く説明する。
「属性を合わせて、新しい魔法を作る研究部」
少女は足をぶらぶらさせながら聞いていたが――
ぽそっと呟いた。
「……ふーん……いいかも」
「え?」
「風ってさ、ひとりで吹くより……
何かと混ざった時の方が、強かったり……柔らかったり……楽しかったりするんだよ」
その言い回しは、
ただの直感なのか、それとも才能なのか。
俺は自然と問いかけていた。
「……君、1-C?」
「うん。風鈴 夢威っていうの。
むい、でいいよ」
にこっと笑う。
どこかふわっとしているが、芯がないわけじゃない。
昴が腕を組む。
「夢威って……今、部活探してるのか?」
「探してないよ。眠いし」
「そ、そうか……」
「でも……ここ、なんか落ち着く。
風が集まってきてるみたいで。
……合体魔法、見てみたい……かも」
俺と昴の間に、妙な沈黙が落ちた。
なんだこの子……
勧誘してないのに興味示されたぞ……
夢威は立ち上がり、ぽんぽんと制服の埃を払う。
「じゃ、また来るね。
風が呼んだら」
そう言って本当に“風みたいに”去っていった。
残されたのは、昴と俺の二人だけ。
「……なぁ昴。
今の子、なんだったんだ?」
「わかんねぇけど……
……なんか、すげぇの来そうじゃない?」
「……確かに」
二人は小さく笑った。
合体魔法研究部は、この日ほんの少しだけ“広がった”。
まだ正式加入じゃない。
まだ誰も、彼女の才覚を知らない。
でも確実に――
風鈴夢威という“風”は、
この部に吹き込まれ始めていた。
登場人物紹介
●風鈴 夢威
【性別】女
【適性】風
【総合順位】64位/150人
【学科】100位/150人
【実技】31位/150人
【髪】深緑色ショート
【瞳】深緑色
直感で魔法を使う天才肌。
猫耳のようなくせ毛が特徴で、のんびりした性格。
普段は眠そうだったり、お腹がすいていたりすることが多い。
物静かだが妙に人気。気になったことには何でも首を突っ込みたがる。




