#16 放課後
「瑞翔、悪い。ちょっと用事思い出した。先に寮戻ってていいぞ」
「おっけー。あまり遅くならないでよ、先生に怒られる」
瑞翔がフェンリルと談笑している理紅虎に合流していく。
俺は昨日のやり取りを思い出す。
『そうだ、玲磁。明日の授業終わりにちょっと時間作れるか?』
「……そういや言われてたっけ。行くか」
校舎裏の階段下。
人通りが少なく、風だけが抜ける静かな場所。
そこに昴が立っていた。夕焼けの背景も相まって、随分と様になっている。
「よ、玲磁。お疲れ。噂に聞いたぞ。授業中、とんでもないことをしたってな」
「まじかよ、もうAクラスまで知れ渡ってるのか…」
アルテリア魔法学校も意外と狭いのかも分からんな。
「詳しくは分からないが、お前、なんだっけ。時属性だって?クラス中ずっとその話題で持ち切りだったよ。なんせ適性が時の奴なんて、歴史上一人もいないからな…」
俺は、授業であったことを適当にかいつまんで昴に伝えた。
「なるほど校長まで見に来てたのか。だとすると、お前をこの学校に入れるって決めたのは校長の判断かもしれない。あの人、未知の魔法とか大好きだから」
「あー、なんか分かる気がするわ。けど最終的には沙羅先生に怒られてた」
「ははは、完全に立場逆転してるじゃんか」
まあそれは置いといて。
「ところで、なんか話あるって?」
昴は腕を組んで、空を一度見た後――
「玲磁、部活決めた?」
「いや、まだ全然」
「だよなぁ……俺もだ。
どれも興味あるけど、どうもしっくりこなくてさ」
俺は、少し迷いながら言う。
「実は俺…合体魔法、ってのに興味があるんだよな。
属性×属性で、新しい魔法作れないかなって」
昴が一拍置いて、ニッと笑う。
「そういや合体魔法って、まだまだ未開拓が多い分野だよな…。いいじゃん、それ。
――じゃあ、俺たちで作ってみるか? 部活」
「……あ、マジで?」
「マジで。
やるなら本気のやつ。研究して、試して、失敗して、成功して。
どうせやるなら――“新しい魔法”作るくらいでないとな」
俺は自然と笑っていた。
「いいね。絶対面白い」
昴がすかさず言う。
「よし決まり。じゃあ部長よろしく」
「ちょっと待て。なんで俺が部長だよ」
面倒なのは困るんだが。
「お前の案だろ? 俺は副部長な。サポートは任せろ」
その当然のような言い方に、玲磁は肩をすくめる。
「……まぁ、いいけどさ」
むしろ俺の思いつきに昴が協力してくれてるようなもんだしな。
昴が手を差し出す。
「――合体魔法研究部、創立だ」
俺はその手を握り返す。
「作ろうぜ。誰も見たことない魔法」
夕風が二人の間を抜け、草の匂いを運んでいった。
こうして――
アルテリア史上でも異例の、
“革新の巣”となる部が静かに産声を上げた。
合体魔法研究部。
その中心にいるのは、
時を揺らす少年と、火を操る天才。
まだ誰も、この先の騒動を知らない。
昴くんは、とにかく付き合いがいいです。




