#15 魔法のような泥
リュウ校長が去ると、グラウンドに再び風が巡り、沙羅先生が息をつく。
「……では、気を取り直して続きを行います。
二四万 虹矢」
「お、おう! まかせな!」
虹矢が前へ出る。
魔力値は10。だが目つきだけは妙に気合がこもっていた。
「えーっと……とりあえず火の初級魔法を撃つぜ!」
虹矢は両手を前に突き出し、詠唱なのか奇声なのか分からない叫び声を唱えた…。
「<ウおおおォリャーーーーッッ>!」
ぐにょり。
小さく湿った音とともに、手のひらからモクモクと煙が立ち込め、泥のような物体がベチャベチャと垂れている。
「おお!出たァァァ!!けどなんだこれ気持ちわりぃ、俺は火を出したつもりなのに!」
虹矢本人が一番驚いている。周りのみんなは
「うわっ、何これ」
「土属性…にしてはドロドロすぎる。」
「遥花ちゃんの土魔法とは正反対ね」
酷い言われようだ。しかし、
「うん。よく頑張った。虹矢くん」
沙羅先生は本当に褒めている声だった。
それからも遥花が土魔法を出し、魅亜が緊張しながら小さな火花を散らし、理紅虎がフェンリルを呼び出し――
クラス全体が少しずつ緩んでくる。
沙羅先生が全員を見渡す。
「――よし。
初日はこれで十分。無理に大きな魔法を出す必要はない。
魔法は“制御”だから、大きければいいわけじゃない」
瑞翔が小声で「俺のは小さすぎたけどね……」と漏らしたので「俺は大きさ以前の問題だけどな」と言い、二人で苦笑する。
「今日の授業はここまで。気を抜かずに寮へ戻りなさい」
沙羅先生が去り、解散となった。
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