#11 赤ノ寮
昼のホームルームが終わると同時に、生徒たちはぞろぞろと昇降口へ向かい、寮入居のための集合地点へ向かった。
1年男子が入るのは 赤ノ寮。
火を象徴する“情熱”ってやつらしいが……俺に情熱を求められても困る。
ホームルームで配られた魔法の羊皮紙には、部屋番号と相方の名前がずらりと並んでいた。
「えっと……俺は、150番の……」
紙を指でなぞりながら探していると、横から控えめな声がした。
「天竜 玲磁くん、だよね?」
「ん?」
振り向くと、灰色の髪に茶色の瞳――霞 瑞翔が立っていた。
控えめで、目立たない。
「えっと……同じクラスの、霞 瑞翔。ほら、席も近かったし」
「ああ、瑞翔。どうした? 帰る方向でも聞きたいとか?」
「いや……その……俺たち、相部屋みたい」
「……マジで?」
もう一度紙を見る。
《150:天竜玲磁/124:霞瑞翔》
本当に書いてある。
「へぇ、よろしくな。俺のとこに来るなんて運がいいぞ」
「その自信はどこから……?」
「学年最下位?」
「それ関係ないよね?」
淡々とツッコまれて、ちょっと笑ってしまった。
変な尖り方もなく、かといってめちゃくちゃ弱そうでもない――“本当に普通”って感じのやつ。
こういうタイプ、逆に珍しい。
「まあ、いいや。荷物運ぶか」
「うん。一緒に行こ」
並んで赤ノ寮へ向かうその歩幅は自然に揃っていた。
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扉を開けると、二段ベッドと机が二つずつ並ぶ、素朴な部屋があった。
「お、おぉ……意外と普通」
「だよね。もっと魔法で部屋が回転するとか、そんなのかと思ってたけど」
「それはさすがに嫌だろ」
瑞翔は肩をすくめて小さく笑った。
その笑い方が妙に馴染みやすい。
「ベッドどっちがいい?」
「玲磁くん、上のほうが似合う気がする」
「なんでだよ」
「……落ちそうだから?」
「おい、それ俺が鈍くさそうって意味か?」
「ち、違っ……いや、そう……かな?」
ちょっと照れたように言う。
この“遠慮しつつもちゃんと本音を言ってくる”感じ、嫌いじゃない。
「まあ、俺は上でいいや。落ちた時は魔法で証拠隠滅」
「絶対やめてね?」
「冗談だよ」
本気で慌てる瑞翔、面白い。
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「おっ、もう入ってたか」
ドアがノックされ、学年2位の男、篝火 昴がひょいと入ってくる。
相変わらず気安い笑顔で、さりげなく気遣いが滲むタイプ。
「昴は誰と相部屋なんだ?」
「俺?えーっと、63位でCクラスの切追 朝。いつも女子に囲まれてる光適性の人気者。
……あいつ、喋ると意外といいやつだったぞ」
「へぇ、光の美男子と火の2位か。見栄えいいコンビだな」
「やめてくれよ……そんな大したもんじゃないって」
頬をかく昴は照れたように笑ったあと、瑞翔に視線を向けて言った。
「玲磁の相方、霞くんだっけ? うまくやれそうじゃん」
「え、あ、はい……がんばります」
「そんな気張る必要ねぇよ。玲磁は……まあ、こんなんだけど悪いやつじゃない」
「昴、お前さりげなく刺すなよ」
「事実だろ?」
そんな他愛ない会話がぽんぽん続く。
――いいテンポだ。
昴が帰りかけて、ふいに振り返る。
「そうだ、玲磁。明日の授業終わりにちょっと時間作れるか?」
「おう、わかった」
手をひらひらさせて昴は去っていった。
①登場人物紹介
●切追 朝
【性別】男
【適性】光
【総合順位】63位/150人
【学科】64位/150人
【実技】62位/150人
学年一の人気者で、女子人気ナンバーワン。
本心を言える相手が欲しいと思っている。
②学生寮について
■ 概要
アルテリア魔法学校の寮は、全6棟。
男女別・学年別で構成され、適性属性とは一切関係しない。
寮は単なる居住施設ではなく、生徒の心身の成長、共同生活による人格形成を目的として設計されている。
各寮には創設時から続く「色」と「理念(モチーフ属性)」が存在するが、
あくまで象徴としてのもので、割り当てに影響はない。
寮は2人で相部屋。
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〔男子寮〕
● 赤ノ寮(1年男子)— 火の象徴「情熱」
新しく学園へ踏み入れる若者たちよ。火のように燃える情熱を忘れるな。
1年生の男子が最初に入る寮。
生活に慣れ、自分の意志を固めていくための基盤となる。
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● 緑ノ寮(2年男子)— 風の象徴「前進」
風のように、迷うことなく前へ進め。停滞は学園に不要である。
学業も生活も本格化する学年。
自分の方向性を定める時期として「前へ進む」象徴が割り当てられている。
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● 黒ノ寮(3年男子)— 闇の象徴「冷静」
悩む時こそ冷静であれ。闇の先にこそ光明がある。
進路選択のプレッシャーが強い学年。
闇は恐怖でなく「深く考え静かに磨く」象徴。
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〔女子寮〕
● 青ノ寮(1年女子)— 水の象徴「清廉」
新入生の女子諸君。清廉さを胸に、学び舎へ立ち向かえ。
共同生活の基礎と心の安定をここで育む。
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● 黄ノ寮(2年女子)— 土の象徴「着実」
華やかさに溺れるな。地に足をつけよ。
実技・座学ともに力が求められる中堅学年。
着実さを重んじる理念。
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● 白ノ寮(3年女子)— 光の象徴「希望」
大人になるということは希望に満ちている。心を輝かせ続けよ。
感性と未来への意志を重視する最上級学年。
卒業前の心の成長を象徴。




