プレゼント(ファンタジー)
その少女は生まれてこの方十年、クリスマスにプレゼントを貰ったことがなかった。
横では、白い頭巾を被り、黒いコートを着て、細長い髭を生やした男が立っていた。コートというよりも着物の方がいいのかもしれない。
疲れたような顔をしたその男の横では、ロバが不機嫌そうに鼻を鳴らしていた。
「……早くプレゼントを言ってくれないかな?」
「知らない人になぜ言わなくちゃいけないの?」
すると、男は顔を勢いよく上げた。
「私がサンタだからだ!」
少女はサンタを見る。
本で見たサンタは、真っ赤でいかにも優しそうなお爺さんだった。少なくとも、こんな疲れたような顔をした真っ黒着物ではない。
「本で見たサンタじゃない……」
「それはアメリカのサンタだ。私は日本のサンタだ」
国によって違うのかよ、と少女は思う。
「とにかく早くプレゼントを言ってくれ。残業時間が伸びて帰れない」
知るか、と少女は思った。
「……分かったわ。……家族が欲しい」
サンタは少女を見ると、ロバを見た。
数年後、黒い着物を着た少女はプレゼントを空にばら撒いていた。
まさか――あのサンタが家族になるとは予想外だった。
「今の暮らしは楽しいし。このままサンタ続けよーっと」
少女はイルミネーションが光る町を見下ろした。




