迷子(ほのぼの)
弱ったな、と聡太はいまさらのように思った。目の前に一人の男の子が立っている。
その子供は母親を呼んで泣いていた。
ようやく男の子が落ち着いて、こちらを見るようになった頃、聡太は男の子の肩を優しく叩いた。
「お母さん来るまで、俺と遊ぼ」
男の子は顔を上げ、聡太を見た。
時折絵を描いて見せたり、しりとりをしたりして時間を潰した。時折男の子の特徴を叫ぶのも忘れない。
「バタフライマン(アニメキャラ)が書かれたTシャツを着た男の子がお母さん探してます! 名前は透君です!」
しばらく歩き、声も枯れ始めた頃に、聡太は誰かに肩を叩かれた。
振り返ると、そこには髪を振り乱して肩で息をする女が立っていた。
「お母さん!」
男の子は嬉しそうに叫ぶと、女に抱きついた。女は男の子を優しく抱きしめると、聡太を見た。
「ありがとうございます……! 本当に、ありがとうございます!」
「いえいえ。当然のことをしただけです」
聡太は男の子に手を振る。すると、男の子がポケットから何かを出した。
「これね、僕の好きなバタフライマンのシール。あげるね」
男の子の好意を断れず、聡太はシールを貰った。
それから数年経ったが、そのシールを見ると、聡太は今でもにやけずにはいられないのである。




