だけ食べたい!(コメディ)
琢磨は一つの店の前で立ち止まった。視界の先には、「だけ屋」と書かれた看板が置かれている。
「……だけ屋?」
何かの外国語をひらがなにしたのか、と思いながら琢磨は店の中に入る。
そこはケーキ屋のようだが、ショーケースには名も知らぬ謎の料理しか置かれていない。客は琢磨以外にはいなかった。
「君はここの利用初めてだな? 私は店長のミツル」
声をかけられ、顔を上げるとそこには少女が立っていた。
「ここはな、ここだけ食べたい、を実現する店だ」
ミツルの説明に琢磨は首を傾げる。
「君もあるだろ! ケンターキーの衣だけとか、ピザ耳だけを食べたいと思うこと! それが実現できるのだよ、この店は!」
ミツルは興奮しながらショーケースを触り、中にあったフライドチキンの衣を示した。
「これはケンターキーの衣だ。剥がしたてだぞ。その横はタルトの生地、ケーキのスポンジ、ピザ耳に、スイカバーの緑のとこだろ、あと」
「待て待て! たい焼きの餡子無しとか、肉まんの餡無しとか、タルト生地とか、もはや違う料理だろ!」
琢磨の言葉にミツルは唇を尖らせた。
「つーか、こんな手抜き料理で客来んのかよ……」
「来るぞ。だけ食べたいは人類の永遠の夢だからな」
意味が分からねえ、と琢磨が言いかけたその時、大きなカメラを持った男たちと一人の若い女が入ってきた。女はマイクを持っている。
「今日は今話題の『だけ屋』を取材したいと思います!」
ミツルは自慢げに琢磨を見た。




