ドッグショー(動物、ほのぼの)
私は一頭のゴールデンレトリーバーを飼っている。彼女の名はメイ。お転婆な性格で、よく悪戯をしたりする。
そんなメイがドッグショーに出る日が来るなんて、思いもしなかった。
元は母親が勝手にテレビ番組に応募したのが原因である。まさか受かるとは思わなかった、と母親は後に語った。
そういうわけで、私はメイと共にドッグショーに出ることになった。
家の庭などでひたすら練習すること三ヶ月。ついに本番が来てしまったのである。
「次は佐々木徹と佐々木メイのコンビです」
司会者の声が響く。カメラが一斉にこちらを向いた。私は深呼吸をし、メイを見る。
メイは勢いよく顔を上げると、指示とは見当違いな場所へ向かって走り出した。
「メイ! 違う、右!」
指示を聞いているのかいないのか、メイは近くに置かれていたハードルを蹴飛ばし、自由気ままに走っている。
前の子たちのを見なかったのかよ……!
唖然とする私を前に、メイは勝手にシーソーに登って得意げな表情をしたり、トンネルを潜ったりしている。
周りから笑い声が聞こえ、メイは自慢げに私の元へと駆け寄って来た。その顔はどこか嬉しそうだ。
まぁ怪我をしなければ何でもいいか。
仕方ないだろう? あんなに嬉しそうな顔をされたら、全部どうでも良くなるのだから。