表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/28

第9話 捜索

まだ8話目なのに読者様がたくさんいてすっっごく嬉しいですっ><


お気に入りに登録してくださっている方もたくさんいらっしゃって、ポイントも既に80点です><

もうこの上なく嬉しいです!><


図々しいですが感想・評価よろしくお願いいたしますorz

 目が覚めた時に目の前にクレアがいないのに気づき、俺はものすごい勢いで起き上がった。あり得ない。もしもクレア、いや、彼女だけじゃなく、誰かが動いたのなら絶対に気づくはずだ。

 なぜ、この俺が気づかなかった。


 周りを見回すと、全員がまだ寝ている。しかしクレア以外の誰かがいないことに気づいた。

 …ロード…

 俺の第二騎士のロードがいなくなっている。水汲みからはとっくに戻って来たはずだ。それにロードが動いたのならディナルが起きないわけがない。

 …何がどうなってる?



「ルド。ルド、起きろ」



 立ち上がって、クレアの第一騎士のルドの側まで寄って彼を揺する。しばらく揺すっていると彼の瞼がゆっくりと開いた。空を見る限りではまだ早朝のため、無理矢理起こすのも少し気が引けたが、この際は緊急だから仕方がない。

 俺の姿を見てルドはすぐに起き上がった。



「陛下。どうかしましたか」



 どこか無感情な彼の声は、自分の声に似ている気がする。



「ルド、クレアが見当たらない。ロードも見当たらない。どこにいるかは分かるか」



 俺の言葉にルドはすぐさま立ち上がった。ロードがいないのを見て、滅多にポーカーフェイスを崩さない彼は、大きく目を見開いた。

 すぐさまクレアが寝ていた所に視線を移し、彼女の姿がないのを見て更に目が大きく見開く。



「…なぜ…」

「クレアがどこにいるかは分からないか」

「…申し訳ありません…ロードが水汲みに行ったのは覚えているのですが、それ以降の記憶は全く…」

「俺もそうだ」



 チッと舌打ちをすると、ファリスはイライラして、近くにあった枝を踏みつけた。信じられない。この自分が誰かの起きる音に起きなかったなんて。

 普段の自分だったらあり得ない。



「ルド、悪いが全員を起こしてくれ。近くを捜索してくる」

「陛下! 一人で行かせることはできません。せめてディナルさんを連れて行ってください」

「起きていないだろう」


「陛下に似てずいぶんと神経質になりましたからおかげさまでこの通りバッチリ起きてますよ」



 聞き慣れた憎たらしい声にファリスは振り向いた。準備万端で自分の第一騎士は立っていた。

 はぁ、と思わず口から溜息が溢れる。



「分かった。ディナル、ついてこい」

「元からそのつもりです」



 二人はルドを置いて森の中へと進んで行く。

 ルドは少し不安そうな面持で二人を見つめていたが、やがて周りの者を起こし始めた。










「ねぇ、ロード」

「なんでしょう」



 ルドルフ達が出て行った後、しばらく沈黙に包まれてから、私は口を開いた。



「自分でいうのなんだけどさ、ファリスの私に対しての溺愛っぷりって有名だった?」

「相当」



 即答されて、やっぱりそうだったんだ、と呟いてがっくりと手を地面につく。元々座ってるから手をついても対して姿勢は変わらないんだけど。

 っていうか、私って王妃という立場でいながらも公衆の面前に出ることってあんまりないから、私とファリスの関係.....っていうのも変だけど、その、なんていうの? 夫婦仲。それそれ。

 とにかく、私とファリスの夫婦仲ってあんまり知られてないと思ってた。意外と知れ渡ってるものなんだね。



「どころでロード」

「なんでしょう」



 さっきと同じ応えを返して来たロードを一瞥して続ける。



「これからどうする?」

「そうですね。どうやら彼らは俺の能力も警戒していたようで、この牢獄からではあのドアの奥以外は何も見えません」

「透視能力を止める能力でも使ったのかな」

「そうでしょうね。一部分だけ俺の能力が使えるということは、なんらかの結界だとは思うんですが...」



 ロードって、剣術とか運動神経だけじゃなくて能力情報にも詳しいんだね。ディナルもルドもスティラもそう。なんで三人とも騎士なのに王妃の私よりも知ってることが多いんだろう。

 もしかして王妃がいない間のファリスの手伝いをするために叩き込まれたとか?

 ......うわー。超あり得る。



「クレア様、お疲れの所申し訳ないんですが、あそこのドアの部分だけに集中して炎を出す事はできませんか?」

「え?」



 どうしてドアだけなの? と聞くと、ロードは一瞬黙り込んだけど再び話しだした。



「俺の透視能力が効くのがあのドアの周辺とその奥だけだとすると、あそこには、ここの周りの壁にある妨害能力は張っていないはずです。クレア様の炎がこの牢獄の中で出せず、俺の透視能力も牢獄の中では出せない。ですが俺の透視はあのドアの周辺では効く。ということは恐らくクレア様の能力も効くはずです」

「.....ロード。あんた、騎士よりも教育係の方が合ってるよ...」



 別にずばぬけて頭が良くないと思いつかない案ってわけじゃないけど、こうもスラスラと講義のように言葉が出て来る所を見ると、 ロードは剣を使うよりも、机に向かっている生徒に教え込むというイメージが湧いてしまう。

 私の言葉にロードは苦笑を零すと、とにかく試してみてくださいとドアに方に視線をやる。

 .....まあ、試すに越したことはないかな...。


 正直、私は遠距離で能力を使うことに特に秀でているわけじゃない。ただでさえ能力を使う機会は少ないし、いざ使う時も近い位置でしか能力を使わないから、本当に遠距離は苦手。

 だけど出来ないわけではないから、全ての集中力をそのドア一点だけに注ぎ込む。



 ボッ



 という音とともに鮮やかな炎がドアの前で上がった。

 あまりにも驚いてすぐに炎を引っ込めてしまったが、あれは確かにドアの周りで上がった炎だ。先程牢獄の中で試した炎よりは手応えは確実にあった。



「ロード! ロードできたよ!」



 嬉しそうに横を向くとロードも微笑んで来た。



「さすがでございます。クレア様ならきっと出来ると思いましたよ」

「えへへ。じゃあ、これを使って、どうする?」

「...とにかく、次にルドルフが入ってくるのを待つしかないですね」



 その言葉を聞いて思わず自分の中の興奮が少し冷めてしまった。









「陛下! 陛下、もう無理です! この周辺にはきっともういません!」

「......」



 ディナルの呼びかけを無視して、ファリスはひたすら森の中を進んで行く。戻れる様に目印はつけてきたものの、ファリスの無茶苦茶な行動に目印がついていても帰り道はわけがわからなくなってきた。

 ...本当にこの人は、王妃のことになると目の前しか見えなくなる。




「陛下」



 溜息とともにファリスを呼ぶと、彼が振り向いた隙に彼の目の前に大きな土の山を作る。道を塞ぐ様に不自然に盛り上がったその山を見て、ファリスは舌打ちをする。

 その土の山をつくった張本人は、ファリスの舌打ちを聞いても動揺しなかった。

 ディナルは地を司る能力を持っている。四大エレメントの一つということもあり、非常に能力技術が必要な能力だ。ディナルは能力調整に関してはプロであるため、地をなんの苦もなく自由自在に操ることができる。



「ディナル。なぜ邪魔をする」

「邪魔などしておりません。止めているだけです。これ以上進めば俺達も迷子になります。そもそも、王妃はもうこの周辺にはいないことでしょう。リスクを背負って彼女をここに置いておけば、いつ見つかるかは分かりません。恐らく既に違う場所へ彼女を移したのだと思います」

「........」



 ディナルの言葉にファリスは黙り込んだ。

 確かに彼の言う通りなのだ。しかし、探さざるを得なかった。クレアがいなくなったのだ。大人しく、冷静にそんなことを考えられるわけがなかった。

 ファリスの溜息を聞いて、ディナルは彼が納得したのを悟った。彼が戻ってくるのを見て満足そうに微笑むと、二人は帰り道を歩いて行く。



「では陛下、これからどうしますか?」

「....とにかくハシェンドに向かおう。ルノアードが待っているから、彼の元に行って事情を説明してから再びクレアを探す」

「....陛下」



 少し低い声で聞いて来るディナルを見た。



「...クレア様がいないからって、取り乱したりしないでくださいよ」

「...........しない」

「その沈黙はなんですか」

「心配はいらない」



 そう言い捨てるとファリスはとっとと進んで行く。

 はぁ、と溜息をついてからディナルもついて行った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ