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第6話 出発

「そもそも政務とか多すぎるのよ! 全部ファリスに押し付けて! ちょっとは自分でやれっての!」



 ルドとスティラが拾い上げた資料に目を通しながらクレアが叫んだ。ああああっ! と叫びながら髪をかきむしっている所は王妃としては国民にさらしてはいけない姿だとルドは思う。



「他の国には国王という存在がありませんからね。仕方がないのでしょう」



 相変わらず冷めた様子でルドが言うとクレアは腕の中に頭を埋めた。


 政務は全て国王に任されているものだ。

 当然のように王がいないほかの国では政務はできないため、必然的に唯一の国王、そしてベンゾラの国王であるファリスに全ての政務が任されるのだった。

 他の国でも王まではいかないが、国をまとめるものは存在する。しかし彼らだけで何かを決めるということはできないため、そういう政務も全てファリスに任される。それがクレアは気に食わないのだった。



「でもさー。仲が悪いのはロースディバとウルッシアだけでしょ? ウルッシアなんて比較的大人しい国だし、ロースディバはちょっと攻撃的だから仕方ないかもしれないけどさ、ハシェンドとオルートには王がいてもいいんじゃないの?」

「それも一度検討されたことがあるんですが、やはり王の座を巡った争いは避けられないことだとファリス陛下が仰っていました」



 ジェシカの言葉にクレアは顔をしかめた。



「あいつの言う事なんてどうでもいいのよ。王が二人に増えれば政務は確実に減らせるし、ファリスだってもっとベンゾラ全体を見渡す余裕ができるじゃない」

「しかし王が二人いるとどうしても争いが絶えません。争いが起こるくらいなら全ての政務を背負ったほうがよいとファリス陛下が....」

「ああもう! ああいえばこういう! なんで直接言われてるわけじゃないのにこんなにムカつくのかしら!」

「クレア様落ち着いて」



 スティラが苦笑を浮かべながらクレアをなだめる。彼女はなんだかんだ言いながら、結局はファリスに全て任すことで、彼が壊れてしまうのではないかと心配して、政務を減らそうと考えているのだった。ファリスは傍から見てもクレアには本気で惚れているが、クレアのほうの想いは恐らく無自覚といって良いだろう。

 なんとも歯がゆい関係だとスティラは思う。



「とにかくクレア様、もうすぐ夕飯の時間でございます。急がないとファリス様が連行しに来ますよ?」

「わかってるわよ」



 不貞腐れたように言って、クレアは立ち上がると部屋から出て行った。








「遅い」

「開口一番それかよ」



 どーもどーも遅れてすみませんね。そもそも夕飯の時間までまだ五分もあるんだけど。食事だって出てないじゃん。几帳面というか完璧主義者なのよね、ファリスって。



「食事だって出てないじゃない」

「これから出かける」

「は?」



 ファリスの口から唐突に出た言葉に私は間の抜けた声を出した。私がポケッとした顔でファリスを見てると、彼は真剣の表情のまま再び口を開いた。



「戦争が勃発した」



 その言葉に絶句した。



「はっ!? どこで!? 聞いてないし!」

「言っていないからな」

「言えよ!!」

「面倒くさかった」



 戦争が起こったのに報告するのが面倒くさいだぁああ!? そんなんですむ問題でもないでしょーが!



「ともかくどこで!?」

「ウルッシアとロースディバの間の土地を巡ってな。実は先月から小さな争いが起こっていたんだが、大軍が動き出したとの報告を受けた」

「もっと早く言ってよもう! じゃあこれから行くのね?」

「ああ。早く準備しろ」



 準備してなくてごめんなさいね! なんつってもここに入るまでロースディバとウルッシアの間に土地があったことすら知らなかったよわたしゃ!

 私はテーブルから立ち上がると、すぐに部屋に飛び込む。既に私の服が詰まっている鞄を片手にルドが部屋にいた。あれ。さっき食事についてきてなかったっけ。しかもなんかスティラまで準備万端だし。



「もしかして。二人とも知ってたの?」

「ええ。事前に陛下から報告は受けておりました」

「.....そうだよね。そういうことをする奴だよね」

「はい」



 これから先は何かないかどうかはルドとスティラに聞こう。ファリスに聞いたらたとえあったとしても絶対に言ってくれなさそうだし。



「因みにどこに向かうの?」

「ロースディバやウルッシアに直接向かうのは危険ですので、一度ハシェンドにいって状況を把握してから動くそうです」

「....それはファリスが動くの?それともラキオス軍が動くの?」

「....そこまでは知りませんね」

「因みに私がいく意味は?」

「ファリス陛下が連れて行きたいと言ってましたので」

「そんな理由で私はついて行くのね」

「はい」



 まあそんなことだろうとは思ったけどさ。まあいいけどさ。

 はぁ、と軽く溜息をついてから荷物を持って部屋を出て行く。ドアの外にジェシカが立っているのを見て、彼女はついていかないのだと判断した。確かにただの教育係だから、政治関係にはついていかないんだろうなと思う。

 隣にいるスティラをチラリと見上げると、少し切なそうな顔はしているけどジェシカに言葉をかけることはない。

 ....話したら寂しくなっちゃうからかな。



「クレア様」



 二人を交互に見ている私の耳元でルドが囁くので我に返る。三人で大広間に向かうと、ファリスと彼の第一騎士のディナル、第二騎士のロードの三人は既に準備万端で待っている。

 ファリスは私を見つけると『遅い』というアイコンタクトを送って来たけどスルーした。



「クレア。少なくとも一ヶ月は戻らない。準備はいいな」

「平気よ」

「分かった。それじゃあ行く。サマヘルカ、俺が留守な間は城を頼んだぞ」



 はっ、と短くサマヘルカが言うと、私達は城の外に出た。既に馬車が待っている所を見ると、結構前から行くことは分かっていたんだろうな。

 私達は馬車に乗り込むと、ハシェンドへと向かい始めた。







えーとですね。

どうしても更新が不定期になってしまうのは、私が寮生学校に通っていてインターネットが繋がらないので、たまにしか更新できないからです。

すごく遅れてしまったりとか、すぐにとかとても不定期になってしまいますが、見捨てずに読み続けてくれれば嬉しいですorz


ここまで読んでくれてありがとうございます。

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