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第24話 いつもの幸せ

23話の続きは書いておきましたので、読んでいらっしゃらない方はそちらからどうぞ^^



「レズリー様はその後しばらくベンゾラ大陸にいたらしいんですが、ラキオスに戻ってくることは二度とありませんでした」



 神妙な顔で話し終わったルドをただただ見つめる。



「....そう、なの...」

 


 なんというか、ものすごい話を聞いてしまったような気がして、怒るべきなのか、驚くべきなのかよく分からなくなっていた。ファリスに女がいたということはすごく悔しい。自分の中にこんな気持ちがあったのかと驚くほどに悔しい。

 .....だからといって、誰かを責められるような状況でもなかった。



「...で? ファリスが私にレズリーさんの説明をさせたのは、同じ過ちを繰り返したくないからなのね?」

「...恐らくそうかと」



 .....あんなにも周りの人に完璧だと拝まれている人物なのに、恋愛に対して意外と不器用だったとは。



「....私、話してくる」

「はっ、えっ? ちょ、クレア様? いいんですか? 怒らないんですか?」



 怒る?


 ........。



「怒ってるに決まってるだろーがー!!」

「え、えぇえ!?」

「何なのよみんなして! そんな大事なことを私から隠してさ! 別にレズリーさんの時ほどに酷い隠し事じゃないとしてもさ! んもー! ファリスだっていつまでうじうじしてんのよみっともない!」

「く、クレア様っ」

「だから話して来る!」

「クレアさ—」



 バタンッ、と扉を閉めてズンズンと執務室へ近づいて行く。

 ああ、もう、腹が立つ! なんか、こう、レズリーさんへの嫉妬も混ざってるような気がするし、そうじゃない気もするし、みんなから隠し事をされていたこともなんだか嫌だったし、というか何よりもファリスがこんなことで暗くなってることに腹が立つ!

 いつでも自信満々で上から目線のエロ大王はどこにいったのよ!


 執務室の方に近づいて来ると、部屋の前にディナルとロードがいた。....サマヘルカから資料を貰った時はいなかった気がするんだけど。



「二人とも、いつからそこにいたの?」

「! あ、クレア様っ」

「俺達は資料を大臣達に渡しに行っておりました。クレア様こそ、執務室にどのような御用で」



 あ、そっか。二人は私がレズリーさんの資料を貰ったことを知らないのか。でも、ルドもスティラもジェシカもレズリーさんのこと知ってるんだから、ファリスの騎士達であるディナルとロードが知らないわけがないよね。一応話しておこうかな。

 ......ん? 待てよ。 

 ジェシカって、どうしてレズリーさんのことを知ってるんだろう....。お母さんと一緒に、ティマ大陸に帰ってたんじゃなかったっけ? ってかジェシカがティマ大陸出身だったなんて知らなかったよ。



「あのさ。二人はレズリーさんのこと知ってるわよね?」

「!!」

「!?」



 な、なんかすごく驚かれた。まさか私の口から出るとは思ってなかったのね。

 もっとも話題にしにくい、話題、だしね。それもそうかな...



「く、クレア様。どなたから、それを」

「え、どなたって、そのファリスがレズリーさんから手紙を受け取って、レズリーって誰? って聞いたらサマヘルカが資料くれて、ルドが説明してくれたのよ」

「.....そうですか」

「ええ。で、今ちょっとキレてるからファリスと話をしてきてもいい?」

「え、あ、えっ? だ、大丈夫だと思いますが」

「分かった。じゃあちょっとごめんね」



 二人を端に寄せて遠慮なくバンッと執務室の扉を開いた。部屋の左側にある机にファリスが向かっており、扉が開いたにも関わらず振り返らなかったということは私だとは思っていないんだろう。

 多分、レズリーさんと同じ様な反応をしてると思ってるんだろうなぁ。




 .....ムカつく。



「...ファリス」



 カタンッ、と立ち上がって驚いてファリスが振り向いた。私は一回彼を睨みつけてから執務室の扉を閉めると、近くにあった椅子に腰を降ろした。

 ....我ながらなんて偉そうなんだろう。



「.........」

「.........」

「......怒ってるか?」

「...まあね」



 私が答えると、それはそうだ、とファリスが自嘲気味に笑いを零す。



「言っておくけど、ファリスが思ってる様な理由じゃないからね」

「.......は?」


 

 ファリスって、変な所で自分を責めるよね。普段なら明らかに自分が悪い場面でも知ったこっちゃねーよ、みたいな顔をしてるのに。



「レズリーさんの存在を秘密にしてたことに対して怒ってるわけじゃないわ」

「それ意外で怒る理由があるのか?」

「...あ、の、ねぇ...! 私はあんたに怒ってんの!!」



 ビシッ、と指を突きつけると、ファリスは酷く無防備な顔をしてから少し頭が来た様に私を見る。



「なんで俺に怒るんだ」

「ウジウジウジウジウジウジ....っ、お前は女かっての!!」

「何を—」

「レズリーさんの存在を教えてくれなかったのは悔しいし! 私よりも前に王妃候補がいたっていうのも寂しいし、悔しいし! でも、レズリーさんに大事に隠し事をしてフラれて、私にも隠し事を早く明かさないとフラれるかもしれないとかって考えてたんでしょどうせ!」

「フラれるとはどういうことだ!」

「そういうことじゃないの!? あんたは女をなんだと思ってるわけ!? 確かに大事な隠し事をされて、それが思いがけない形で明かされたとなると怒るけど! 私から言わせてもらうとレズリーさんは根性なしね! 許嫁がいるのに、ファリスがその許嫁と結婚してなければ彼女と許嫁、どちらが大事なのかくらい分かるでしょーが!」

「.........」

「私はレズリーさんとは違うわ! 隠されていたことの重要さが違うとしても、たとえファリスが前に結婚をしようと決めていた女の人がいたとしても、私は隠されていたことでファリスを責めたりしないわ! 女全員が全員隠し事くらいで男を捨てるような生き物だって思わないでよね!」

「....クレア—」

「私に嫌われるかもしれないとか、また同じことを繰り返したかもしれないとか、後ろ向きな考えは捨てなさいよ。女々しくこんな所に閉じこもってんじゃないわよ。分かった?」

「.........」



 黙り込んだファリスに、ああ、いいこと言った、と思った。



 レズリーさん以外としっかり恋愛がしたことがないファリスに取って、二人の破局の元となってしまった原因はきっとトラウマなのだろう。もしもまた本気で好きな人が出来てしまったら、同じ様な理由でまた置いて行かれるかもしれないと思ったんだろう。

 だから今の今までレズリーさんのことを教えてくれなかったんだろうけども。

 隠し通して、傷つけないようにすることが逆にレズリーさんを傷つけることになってしまったのは、....まあ、トラウマになるような気持ちも分かるけど。



 私が話し終わっても何一つ言わないファリスに私は眉を寄せた。どうせならいつものように罵倒すればいいのに。

 ....まあ、そんな気分じゃないだろうけど。



「ちょっと、ファリス? あんた、今私が言ったこと聞いて—っ」



 俯いている彼に近寄ると、グイッと腕を引っ張られてすっぽりと彼の腕の中に収まってしまった。その安心感に思わず身を預けそうになったけど、そうじゃなくて!



「ちょ、ちょっと、ファリス! き、聞いて—」

「ちゃんと聞いていた」



 上から振って来るファリス特有の低い甘い声に鳥肌が立った。

 聞いてたのならいいんだけど。



「....なんか、私も何言ってたのかよく分かんないんだけど....とにかく女をなめんなってことよ。分かってる?」

「分かっている」

「....そう...。で、あの、どうして私は抱き締められてるの、かしら?」

「.........知らなかったのだ」

「...は? え、何を?」

「人を愛する時に、傷つけなければいい、と。そういうわけではないとは、知らなかったのだ。相手を傷つけずに、優しさを注ぎ込めばそれが愛だと思っていたんだ。だからレズリーには優しくした。いつでも苦労や不満があれば取り除いて上げていた。それが、正しいと思い込んでいたのだ。たとえ彼女に不満があっても、傷つけたくなかったから、極力言わないようにした。悪態をついても、それが本気ということでもなかったし。レズリーだって俺に優しくて、いつでもサポートをしてくれて、傷つけられたと思えばいつだって謝って来た。だから俺も同じことをしてあげようと思ったんだ。それがレズリーの愛の形で、俺に取ってはじめて感じたことだったから、それが正しいと、それが正しい愛し方だと思っていたんだ」

「..........」



 .......一切女性と関係するようなことはせず、恋人を作ったこともないファリスにとって、レズリーさんの愛ははじめて注がれるものだった。だから、幼い子供のようにそれを真似て、それが正しいと思って。

 ....あんなにも、完璧な人間だと言われる彼が。


 思わずくすっ、と笑うと、ファリスが不満そうに私を見下ろすのが分かる。




「....バカだね」

「...うるさい」

「私と最初に結婚した時は役立たずだとか散々罵倒して、私のこと好きになっても酷い仕打ちしてたくせに」

「...突き放しても突き放しても、お前が消えないからだ」

「どーしてそんくらいで消えないといけないのよ」

「.........」

「?」



 なんで黙るのかと思って顔を上げる。

 それから優しい、本当に優しい笑顔で私を見てるので、思わず固まってしまった。



 ちょっ...! 何その笑顔! 死ぬわ! 美しすぎて死ぬわマジで!



「ふぁ、ファリス?」

「....ありがとう、クレア」

「え?」

「いつでも、側にいてくれて。俺が何を言っても、なにをやっても、そうやって見捨てずにいてくれて」



 再び動きが固まる。



「ちょ、何らしくないこと言ってんの!? 気持ち悪いんだけど! ってか放して、ちょっと、身の危険を感じるから放して!」

「放さない」

「なんでよ!」

「お前はずっと俺のことを愛してくれるんだろう? 何を言っても側にいてくれるんだろう?」

「そこまで言ってないし! ってかいつ愛してるなんて言ったのよ!」

「そういうことじゃないのか?」

「曲解しすぎ!」

 

 

 何なのこの人! 微笑がいきなりいつもの怪しい笑みに変わったからいつものファリスに戻ったことは間違いないんだけど、ちょ、マジで身の危険を感じるぞ。

 この人レズリーさんにはこんなんじゃなかったよね? ルドの話によると。



「政務は終わったことだし、部屋に戻るか?」

「も、戻らない! 戻らないから! て、てて手紙はどうしたのよ手紙は! レズリーさんから来てたんでしょ!?」

「気になるのか?」

「な、なるけど、そうじゃなくて! 政務絶対終わってないでしょ!?」

「一日分は終わった」

「嘘つけ! あんた今日午後から二時間くらいしかここにいないでしょ! いつもは一日中かかる政務がなんで二時間で終わるのよ!」

「調子がよかったんだ」

「ふざけんな、ちょ! 担ぐなー!!」



 ヒョイ、と意図も簡単に持ち上げられてそのまま執務室から出ようとするファリスを蹴ろうとするけど、容易く両足を掴まれて動きが取れなくなる。




 す、すっかりいつものファリスに戻ってる...っ!






いやぁ、仲直りしてくれました。

なんなんでしょうかこのバカップルは。


ファリスはつまり、クレアのおバカさんな所に救われたわけなんですよ。おバカさんっていうか、考えていることをズバズバと考えなしで言う所というか。



次回遅れてしまったら申し訳ありません!

遅れないよう頑張りますっ!



あと、図々しいようですが感想・評価よろしくお願いいたします^^

もらうと創作意欲がぐぐーんと湧きますので!



ここまで読んでくれてありがとうございます。


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