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第15話 再び

頭を地面にめり込ませる域で土下座します。

 翌朝起きると、目の前にいたはずのファリスの姿がなかった。

 あれ? と思っている間にガチャとドアが開いてルドが入って来る。あたしの姿を見つけると小さく微笑んだ。



「ルド」

「クレア様、陛下がお呼びです」

「え、どこ? 大広間?」

「はい。戦争のことについてルノアード首相と会談をしておりますので」

「分かった。すぐ行くって伝えといて」

「かしこまりました」



 一礼して部屋からルドが出て行った所で、私はベッドから降りた。少し頭がクラクラする。ここ数日ずいぶんとすごいことばかり起きてたから疲れちゃったのかもしれない。

 自分の部屋に戻ってクローゼットからドレスを取り出した。レイラさん特製のドレスって派手だしすごく綺麗なドレスばっかりなんだけど、着るのが難しいから侍女がいないと着れないというのが欠点。侍女三人に手伝ってもらってやっと着ると、大広間に足を運んだ。


 あたしの姿を見つけると、ルノアードは微笑んでからスッと頭を下げてくれた。相変わらず礼儀正しい人だ。

 ファリスに視線をやると彼も微笑んでくれて小さく手招きをした。

 .....なんだか、いつもより優しい様な...

 なんとなく嫌な予感がしたけれで、そこで回れ右もおかしいので、彼の横の席に腰を下ろした。瞬時に腰に腕が回されたので嫌な予感は的中したと思った。放せといっても放してくれる気はしなかったからなすがままで座っていた。



「王妃様、ご無沙汰しております。昨日はご無事でなによりでした」

「ルノアード、久しぶり。心配をかけてしまってごめんなさい。こんな大変な時に」

「いえ、王妃様がご無事だったのならよいのです」



 にっこりと微笑んでくれたルノアードにあたしも微笑を返す。

 ああ、優しい人だ。



「では王妃様、昨日の今日で申し訳ありませんが、ウルッシアとロースディバな間の戦争について、話をさせてもらいます」

「え、あの、ウルッシアは、やっぱりベンゾラから切り離すの?」



 あたしの質問にルノアードはチラリと隣にいるファリスを見上げる。あたしも隣を見ると険しい顔つきで手元にある資料を見ている。ルノアードの言葉は耳に入っているはずなんだけど。

 しばらく沈黙が続いてからファリスが小さく溜息をついた。



「お前を誘拐した理由なども含めて考慮した所、ベンゾラから切り離すことはしないが、国として認めることはもうできない」

「そこまで!?」

「政治的なことにお前は口出しをするな。仕組みが分かっていないだろう」

「.........」



 いや、まあ、確かに政治的なことに関してはまったく分からないけどさ、じゃあなんであたしを呼んだわけ?



「お前も王妃という立場上聞く権利はあるからお前を呼んだ。それに、ウルッシアがどうなってしまうのか知りたかっただろう?」

「......うん」



 この人って心の中を読む天才だ。


 でもウルッシアを切り離さないとして、国として認めなくするということは首相とかもなくなるということだろうか。まあ国として成り立っていないわけだからそれも当然といえば当然だけど。



「他の国と合併するってこと?」

「今の所はその線で行くつもりだ」

「え、逆にそれ以外になにがあるの?」

「ウルッシア自体をなくすという案もあった」

「えっ」



 それは、まあ、確かに考慮できるといえば考慮できるけど。それはさすがに残酷だよね。

 誘拐されたし、酷い仕打ちを受けたけど別にウルッシアに滅びてほしいわけじゃないし....ベンゾラの中の一つの国っていうのもあるし.....

 私の不安がる顔を見てファリスは小さく溜息をつく。



「ロースディバと合併することにした」

「はっ!?」



 いや、え、ちょっと待って。



「私の記憶が間違ってなければ、ウルッシアが戦争してたのってロースティバだよね」

「ああ」

「....領土争いをしてたよね」

「ああ」

「天敵だよね」

「そうだな」



 いや、サラリとそうだなとか言われても。



「ウルッシアの首相にはもう話が届いている、あっさりと承認してくれた」

「っていうか選ぶ権利はないんでしょ」

「まあな」



 ....ファリスって、国王じゃなければ絶対に嫌われるタイプだよね。

 私も第一印象はかなり悪かったし。まあ長い間一緒にいれば良さも分かるんだけど。



「でもそれってあまりにもウルッシアがかわいそすぎじゃない?」

「何言ってるんだ。王妃を誘拐した上にラキオスに逆らったんだぞ? 国を滅ぼさないだけマシだと思ってくれなければ困る」

「.........」



 サラリと、恐ろしい発言を...したような...。



「あれ? じゃあウルッシアが守ろうとしていた領土は!?」

「ロースディバとウルッシアが一つの国になるのならば、あそこは両国の間だし、ロースディバのものとなるだろう」

「....でも、破壊されないよね?」

「ベンゾラ大陸の中でも数少ない偉大な人物の墓だ。そんな簡単に破壊したりはしないし、これから先も破壊するつもりはない。ロースディバにも言っておいた」

「...なら、いいんだけど」



 いくら大罪を犯したとはいえ、国まで取られて守ろうとしていた初代国王の墓まで破壊されたら可哀想すぎだもん。

 安心して胸をなで下ろす私を、ファリスが横からじっと見つめて来る。



「な、何?」

「....なんでもない」



 いやいやいや、あんたが私に意味ありげな視線を向けてなんでもないわけがないでしょーが。

 もしかして『こいつ誘拐されたくせにまだ敵国を庇うつもりか』みたいな感じの視線だったのかな?

 うわー。超あり得る。






 結局私を呼んでも対した話はしなかった会議は終わり、ファリスは政務に戻り、私は暇だったので彼を手伝うことにした。雪でも降るんじゃないか? と言われた時は思い切り紙の束を顔面に投げつけたけど。

 そして簡単に避けられたけど。


 政務を整理していると、一つの資料が私の目に止まった。


『ティマ大陸侵略計画』


 と書いてある。

 十ページほど厚い束になっており、表紙にはそのタイトルの下に『極秘』という判子が押してある。


 ....ファリスに聞かなくても分かる。

 いや、まあ、誰でもこれを見たら聞かなくていいんだけど。

 ティマ大陸に、侵略するつもりなのだ。私達が。


 この世界はベンゾラ大陸で成り立っていると言われているが、それはただたんにベンゾラが一番大きく、強力な大陸だからだ。確かに地図などにはベンゾラ以外は殆ど書かれていないけれど、ベンゾラの南西に、ベンゾラに比べたら非常に小さな大陸が一つだけある。

 それがティマ大陸だ。


 非常に小さく、ベンゾラと比べたら軍隊の力も弱く王の権限も殆どない。王はどちらかといえば大陸の象徴であり、国をまとめるのは殆ど首相の仕事だ。その首相も対してよく働いているわけではなく、国民も彼らを上級の者とは思っていない。

 それだけ小さく弱い大陸で、ベンゾラに敵わないも同然なので殆どベンゾラが仕切っている状態なのだが、正式にベンゾラ大陸の一部というわけではない。

 そんなに弱い国がまだ一つの大陸として成り立っているから、正式に一部にしようとしているのかな。


 でも、戦争もまだ丸くおさまってないっていうのに、他の大陸に侵略? いくらウルッシアをロースディバと一緒にして、戦争を終わらせても、国内で争いが絶えることは絶対にない。

 そのためにも数年、いや、せめて数ヶ月は様子をみないといけないのに。

 私は束を拾い上げると、机に向かっているファリスの前にボンと置いた。

 ファリスが驚いてこちらを見上げる。



「これ、どういうこと?」



 率直に聞くと、ファリスは視線を伏せた。

 題名で結構全てがバレバレだし、私がなんとなく状況を把握していることを察したんだろう。



「.....まだ侵略するかどうかは決まっていないし、準備状態なんだ。『もしも侵略するのなら』ということでこの資料を用意している」

「どうして私に言ってくれなかったの?」

「....準備状態だったからだ」



 グッと拳に力を込めた。



「私は王妃なんじゃないの? そういうことを、知ってていい立場なんじゃないの?」

「...そうだ」

「じゃあどうしてこのことは知らないの? ファリスは、いつもそう。いつもいつもいつもそういう重要なことを私から隠すの」

「隠していたわけじゃない。この計画に、お前は関係なかったんだ」



 プツッと頭の中で何かが切れた。



「関係、ない? この戦争だって、私には関係ないじゃない! それなのにファリスは私を連れて来た! 私に出来ることは何もないし、逆に私は誘拐されて迷惑をかけたじゃない!! 大陸内で起こってる戦争もおさめてないのに、どうして他の大陸に侵略する余裕なんてあるのよ!!」

「だから準備中だといっただろう! まだ侵略するかどうか決まったわけじゃない!」

「でもサマヘルカは知ってるでしょ!? 各国の首相も知ってるでしょ!? どうして私は一番ファリスに近い立場にいるのに、そういうことを教えてくれないの!?」

「教えた所でお前はどうするつもりだ!! まだ王妃の座について二年しか経っていないのに、お前に何が出来る!!」

「っ...!!」



 痛い所をつかれて、言葉が詰まる。

 ファリスは立ち上がって私を鋭い目つきで見つめていて、私も彼を睨み上げていた。昨日仲直りしたばかりなのに、また喧嘩になっちゃったのは嫌だったけど、これだけは、譲るわけにもいかなかった。

 それなのに。

 下唇を噛んで言葉を返さない私をしばらく見つめてから、ファリスは腰を降ろした。



「....政務をやる気がないのならもう部屋に戻れ。お前に政務を手伝ってもらうことが間違っていた。悪かった」

「........」



 遠回しに、帰れ、って言ってるのね。

 言われなくても帰ってやるわよ。


 一度ファリスを睨みつけてから足下にあった資料をわざとばらまけてから部屋を後にする。子供っぽいのは承知の上だけど、あれくらいやらないと気が済まない。

 ファリスはそれをただ無言で見つめた。

 不機嫌そうな顔で部屋から出ると、扉の側で控えていた騎士四人が気まずそうに私を見る。


 .....今の会話、普通に聞こえてたわけね。



「気分が悪い。部屋に戻る。夕飯もファリスとは一緒に取らない。ぜっっっっったいに取らない」

「クレア様!」

「喧嘩したいわけじゃないけど、今回はマジで頭来た。やだ。もうあいつやだ!」

「王妃様!」



 ルドとスティラが後ろから追って来て、部屋までついてきた。

 二人は自動的に扉の前で止まり、私はそのままズカズカと入る。


 バンッ、と窓を大きく開けて、大きく息を吸った。





「ファリスのバカやろおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」





 まだ開いていた扉の側にいたルドとスティラが驚いて目を丸めたのは言うまでもない。

更新遅れて本当にごめんなさい!!><


しばらくスランプが続いていて、アイディアがちっとも文章になってくれなくて、ウガーってなってもうだめだと撃沈してましたorz


ボチボチ書いていたんですが、納得する内容にならなくて消して最初から始めたりなどと少し苦労をしていました。


遅れて本当にごめんなさいっ!!><

これでも読んでくれる方々、本当にありがとうございますっ!!

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