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悪食ハンター、今日もダンジョンで死にかける  作者: 三誠堂スナオ
第1章 最底辺から始まる悪食譚
11/14

11話 Fランクハンター、格の違いを見せつける

 ダンジョンの岩壁に囲まれた広間で、戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 サラは、三人のレッドハンター──ゴウ、高藤、ゲン──を同時に相手取っていた。

 踏み込み、旋回、跳躍。  

 その一連の動作はまるで舞のように滑らかで、しかし一撃一撃が鋭い牙のように敵を翻弄する。


 「くっ、動きが速ぇ……!」


 タンクのゴウが舌打ちする。

 Cランクでも上位の防御力を持ちながら、サラのステップに反応しきれず、後手に回っていた。

 高藤──巨躯の斧使いはリーチを活かして横薙ぎに振るうが、当たらない。  

 背後から忍び寄ったゲンのダガーも、あっさりとサラに回避され、逆に膝蹴りを叩き込まれる始末だった。

 

 拮抗している。サラ、たったひとりに翻弄されていた。

 

 一方、その後ろでは、龍人が静かに動いていた。彼の目線の先には──レッドハンターのメイジ、伊藤。

 伊藤は最初、サラを狙って詠唱を始めていたが、突進してくる龍人に気づくと、その手を向けた。


「雑魚が調子に乗りやがって……死ねぇ!!」


 吐き捨てるような声と共に、火球が生成される。バレーボール大のそれは、低ランクの防御力程度では一撃で焼き尽くされるほどの熱量を帯びていた。

 

 だが──龍人は、避けなかった。  


 両腕を交差し、顔を覆うように構えると、そのまま真正面から突っ込んだ。


 「馬鹿が! Fランクが調子に乗るから──」


 火球が直撃し、爆風が広間を揺らす。濛々と立ち込める煙。  

 一瞬、誰もが言葉を失った。

 

 そして、その中から──


 「……なっ──!?」


 龍人が飛び出してきた。


 両腕は薄く焼け、衣服は破れ、ところどころ赤く爛れている。  

 だが、その目だけは燃えるように研ぎ澄まされていた。

 

 「っ……おい、こいつ……!」


 伊藤が慌てて詠唱を再開する前に、龍人の姿が目の前に迫る。


 「遅ぇんだよ!」


 その声と同時に、龍人の拳が伊藤の腹へ。  

 衝撃音とともに、伊藤の身体がくの字に折れ、そのまま吹き飛び、岩壁に叩きつけられて動かなくなる。

 

 伊藤、戦闘不能──。

 

 魔法の支援を失ったことで、レッドハンターの陣形に動揺が走る。


 「いま!」


 サラが機を逃さず、ゲンに連撃を浴びせる。細かい切創が増え、ゲンの動きが鈍る。

 そこへ、龍人が駆け寄る。


 「潰れろぉッ!!」


 高藤が、咄嗟に大斧を振り下ろした。  

 しかし──またも龍人は避けなかった。

 真っ向から、その大斧を両手で受け止めた。  

 まるで白刃取りのように、刃が止まる。


 「くそがぁっ! お前、本当にFランクかよッ!!」


 絶叫する高藤に、龍人が無表情で返す。


「さっきから──Fランク、Fランクって……うるせぇんだよっ!!」


 そのまま、龍人の指が力を込める。

 ギギギギ……!  金属が軋む音。

 

 そして──

 

 バキンッ!


 大斧の柄が砕けた。


 「……っ!」


 唖然とする高藤の顔面に、龍人の拳が突き刺さる。  

 その巨体が吹き飛び、背中から地面に叩きつけられた。


 そして、ゲンの足がもつれたその隙に、サラの短剣が喉元をなぞる──そのまま、彼は音もなく崩れ落ちた。


 残る敵は、あとひとり──  

 だが、その戦況はすでに、逆転していた。



* * * * *



 広間に静寂が訪れた。

 倒れ伏すレッドハンターたちの身体の周囲には、赤黒い血が静かに染みていく。

 

 残るは、あとひとり──


 サラと龍人は、息を整えながらその男に視線を向ける。

 広間の中央でただ一人立ち尽くすのは、巨漢のタンク、ゴウ。


 「さあ、残るのはあなただけみたいだけど……そろそろ、降参すれば?」


 肩で呼吸をしながらも、サラは皮肉げに微笑む。

 だが、返答はなかった。

 

 ゴウは黙って、じり……じり……と足を踏みしめた。

 その肩がわずかに震え、やがて、低い笑いが漏れ始める。


 「……はあ……雑魚どもが……揃いもそろって……」


 ゴウが顔を上げた。

 その目は血走り、唇は裂けんばかりに吊り上がっていた。


 「こんな奴らに……やられやがってェ……!」


 怒号とともに、彼は背負っていた巨大なタワーシールドを放り投げる。

 ゴン、と重い音が床に響く。


 「けどまあ、助かったぜ。おかげで──思いっきり暴れられるってもんだ!」


 次の瞬間、彼の全身を黒紫の魔力が包み込んだ。

 皮膚の下から浮かび上がるように、魔力が鉱物のような結晶化を起こし、ゴウの筋肉を覆っていく。


 ガキン、バキバキ……!


 肉体が石の装甲に変わっていくたび、音が鳴った。

 数秒後、そこに立っていたのは──

 

 まるでゴーレムのような怪物だった。


 身長は三メートル近く、全身は岩のような鎧に覆われている。

 その剥き出しの顔だけが、人間だったことをかろうじて思い出させる。


 「こうなれば俺は無敵だ……ッ! 誰にも、止められはしないッ!!」


 吐き捨てるように叫ぶその姿に、サラの表情が引き締まる。


 「あの、異能スキルは……厄介ね」


 「……相当硬そうですね」


 龍人が低く呟く。

 二人は、ほぼ同時に構えを取った。


 そして──


 「いくぞオオオオオッ!!」


 ゴウが地を蹴った。


 ズガァン!!


 床石が砕け、衝撃波が四方へ広がる。

 突進してくる巨体は、まさに岩の猛獣。正面からまともに受ければ、CランクどころかBランクでも無事では済まないだろう。


 だが──


 二人は逃げなかった。

 獣に牙を剥くように、龍人とサラはその攻撃を、真正面から迎え撃った──


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