プロローグ
息抜きに書きました。続きます。
東京郊外のあるところに、あまり治安の良くない地域があった。そのなかに建つとある高校には、ひとりの有名な不良がいた。
名ばかり孝太郎との異名を持つその男は、何度もブリーチをかけた輝くような金髪をリーゼントに固め、襟足を腰まで伸ばした典型的な不良であった。
ド派手な柄シャツに短ランを羽織り、その目は獣のようにギラついていて、気の弱い者などは孝太郎がひと睨みしただけで泡を吹いて気絶すると言われていた。
性格は凶暴で短気、また腕力ばかり強く、喧嘩の瞬発力と威力は負けなしであった。
まさに生まれながらの不良である。
しかしそんな彼の不良人生は、意外なところで幕を閉じることとなった。
きっかけは孝太郎の父が病に倒れたことである。結果として症状は軽く、すぐに退院の運びとなったが、その経験はもとよりあった心配事を浮き彫りにさせた。
「今回はなんともなかったが、次はどうなるか分からないんだ。そろそろしっかりしてもらわないと困るんだよ。孝太郎」
両親は孝太郎と向かい合い、懇懇と言って聞かせた。
「お前もそろそろ17だろう。この先どうするつもりなんだ。いい加減更生して、真面目になりなさい」
両親は孝太郎への心配からか、涙を浮かべて言ったのだった。
孝太郎はその言葉をただ黙って聞いていた。反抗して無視をしていたのではない。自分が恥ずかしくなり、返す言葉がなかったのだ。
孝太郎は素直な男だった。だからこそ、もともと適性のあった不良の道に真っ直ぐ進んでしまった。しかし、それも今日で終わりだと孝太郎は決意を固めた。
これは名ばかり孝行の孝太郎が名前に恥じない男になるために更生を試みる、ひとりの人間の挑戦の記録である。
次から本編です。