84 「最ッ高だなっ…!!」
森も川もない辺境の地、あるのは遠くにライフの襲撃により廃墟と化した建物くらいだ。丈は眺めの良い丘に座り込み地平線を眺めていた。
ザッザッザッ
背後から忍び寄る気のない大きな足音を立てて誰かが近づいてきた。
「本当に地上は何もねーな」
声の主はジェームズであった。ジェームズはジョージ(本当のキャプテン)の息子である。その手には紙切れを持ち少し距離をおき、横に立った。
「…あんた、偽物なんだってな」
少し間をおいて丈は答えた。
「ああ、ジェームズ君にも本当に迷惑をかけた。すまない」
ジェームズは今まで丈と接してきた中でこんなに元気のないことはなかったため、言葉を選びつつ続けた。
「迷惑とは感じてねー、俺は生まれて物心がつく前から英雄の息子として扱われてきた。窮屈だった。だから、親の七光りとか言ってくる奴らにイラついてた。」
「だけど、あんた(丈)は1人の人間として扱ってきた。意外だったけど嬉しくもあった…今思えばな。」
丈は、意外な言葉の羅列に驚きうつむいた顔をあげた。
「俺は英雄の息子としての自分の運命と向き合っていくつもりだ。あんたはどうする?いつまでもウジウジと仲間を皆殺しにしていくのか?」
ジェームズなりの励ましのつもりなのだろう。距離をつめ、手に持っていた紙切れを丈の前に出した。
「これ、多分あんたのだってマシューが。見たことない文字が書いてあってよくわからんけど」
グイッと紙切れを押しつけそそくさと帰路へ向かった。
「じゃあな、これが最後にならないといいけど」
後ろ向きで手を軽く振り去っていった。
渡された紙切れを見ると、小西丈様と書いてあった。これは封筒に入った手紙だ。この時代ではこの風習は無くなっており、日本語ももはや古代文字扱いのようだ。
保存状態が良く、新品同様のように綺麗だ。丈は手紙を開いた。
『拝啓 小西丈 様
凍えるカプセルの中 いかがお過ごしでしょうか。
私が生きている間には会えないと分かりこの手紙を書くことにしました。動画とか考えましたが、再び起きた時代で見れない可能性もありますので、手紙という形にさせていただきます。
さて、あなた様と買ったカーテンをすきま風が揺らしその度に泣く日々にも少し慣れてきたところです。それほどまでにあなた様に出会えたことが私にとって鮮烈な思い出となり一部となっております。
この手紙を拝見した後、破り捨てて、どうか私のことを忘れてください。あなた様の新たな人生に私は必要ありません。どうか、どうか
さて、最後になりますが、あの時しっかり伝えられなかったことをここで綴ります。
あなた様 小西丈を愛しています。 西条ゆきなより』
手紙を持つ丈の手が小刻みに震えた。鼻水をすすり視界が涙で覆われ袖で拭き取った。
「へへっ…最ッ高だなっ…!!」
手紙と一緒に同封されていたのは、数枚の写真であった。そこには丈とゆきなが映っていた。
「あれ…?おれってこんな顔してたっけ…?」
久々に自分の顔とゆきなを見て、泣き笑いをしながら写真をめくった。
「忘れろって…そんなの無理に決まってるじゃねーかよ…俺は今でも愛してるってのに…」
丈は立ち上がり、全ての不安や絶望を振り払うように雄叫びの如く大きな声で叫んだ。
「ああぁぁぁああああ!!!!」
叫び終わった後の丈の表情は、以前のような自信が満ち溢れた顔つきに戻った。
「ウジウジするのは俺には似合ってねぇな!ゴメン…これから俺がするべきことは…」
ありがとうございました。
ベタっぽい展開をここでひとつ。手紙を渡すのがアイディール部隊やマシューじゃなく、ジェームズってところが良いですね…




