72 運命の出会い その2
小池丈 主人公
西条ゆきな ヒロイン
ゆきなはアルコール多量摂取による入院をしていた。血液検査は良くなり、体調も改善傾向にあるため退院となった。
丈は初対面のときに言ったようにあれ以降姿を見ることはなかった。入院中暇なこともあり点滴棒を連れていきながら病棟の中を歩き、無意識に丈を探していたのだ。
退院日、両親が入院に必要な物を持ってきてくれておりそれを鞄の中に詰め込んでいた。
「はぁ、退院か…」
ゆきなは憂鬱な気分で身支度をしていた。丈の顔をもう一度見たかったなと。おそらくまた会えてもまともに顔を見ることができないだろうが。
それに、数日の入院により職場を休んでいた。その連絡をした時に、当然のように何で入院したのかを聞かれた。職場では酒を飲んでいるようなキャラではないため、説明のときの職場の人の困惑した声に羞恥心が襲いかかっていた。
「では、お大事にしてくださいね」
病棟看護師にエレベーターまで見送ってもらい、駐車場には両親が待ってくれていた。
両親は手を振り居場所を教えてくれた。
「まったく、何やってるんだよ~」
「しばらくアルコールは禁止!」
父は甘く、母は厳しく。よくありそうな構図だ。
実家に1度帰るか聞かれたが、明日から職場に行くことを連絡してしまったため、ファミレスで食事をしてアパートに送ってもらうことにした。
「仕事はどうなんだ?」
「ご飯は食べてるの?」
家を離れた子どもに聞くことと言えばの質問をされた。ただでさえ、アルコール多量摂取による入院をしているのだ。心配もするのだろう。
「あなたも、いい年齢になるんだから結婚を考えたら?」
「ゆきなはまだ大丈夫だろー」
「女には期限があるの!」
両親の言い合いを横目に車の窓の外を見つめていた。外を見ると、肩に手を回すカップルや学生カップルがいた。
ゆきなは今年で29歳になる28歳だ。晩婚化が進んでいるとテレビでは言うが意外と周りは結婚している人が多い。自分も結婚に興味がないわけではない。年齢を重ねれば自然に結婚しているものだと思っていた。
だが、現実は非情だ。
こんな研究しているような女を好きになってくれる人がいるだろうか、優しい人がいいなと考えている脳内には丈の顔が浮かんできて、ゆきなは思わず頭を振った。
アパートにつく前に、両親がスーパーマーケットでたくさん食材や日用品を買ってくれた。
アパートに着き部屋に入ると、両親とも驚いた顔で立ち尽くしていた。シンプルに汚いのだ、このときばかりは両親とも一致団結して部屋の片付けをしていた。
「ふぅー、終わったか…」
「とりあえず、元気にやりなさい」
ガミガミ言われた後に挨拶をして帰っていった。まるで、嵐が去ったかのような静寂が部屋を襲った。
その日は、スーパーで買った惣菜を食べながらオンラインゲームをしていた。
《しばらくログインしてなかったけど大丈夫?》
《ごめんなさい、体調悪くて!》
《それは災難だったね》
《また復帰します!》
しばらくボイスチャットしながら、ハンターになりモンスターを狩っていた。すると、よくボイスチャットをするフレンドからオフ会をしないかと提案があった。もちろん2人ではなく何人かでと。
《何人くらい?》
《んー、まだ誘っている段階だからねーパーティーの4人集まれば良い方かなー?》
ゆきなはゲーム越しなら話せるが、いざ相対すると話せる自信がなくやんわりと断ろうか迷っていた。
だが、顔は分からないが話していて楽しいと思えた人達なら、それに自分を変える良い機会だと考え了承した。
《OK!ありがとー!他の人も良さそうだったら日時とか決めていこ!》
《了ー解!》
数日後にフレンドと一緒に、オフ会の日時と場所を決めた。お酒も飲もうと言う話になったため、少し日にちが空いていた。
「よし、禁酒を解こう!」
実際の禁酒期間は一週間も無かったが、現実逃避にはアルコールはうってつけなのだ。
復帰した職場では、根掘り葉掘り入院の経緯を聞かれ疲弊していたのだ。なので、慣らしで行きつけになっていた居酒屋へ一人飲みに行くことにした。
入院期間を合わせ、しばらく酒を飲まなかったせいかすぐにアルコールがまわってきた。
世間では酔っていないのに『酔っちゃった』と男に言い寄る女がいるそうだが、ゆきなは本当に酔っちゃったになっている。
教訓のおかげか早めに切り上げ店を出た。
前ほどではないが酔いで頭が重く自分の中では真っ直ぐ歩いているつもりだが、目線的に左右に揺れながら歩いているのがよく分かる。
意外とこういう時の頭は冷静であった。
「う~…」
ゆきなは自販機で水を買って、休憩でベンチに座っていた。夜だからかいちゃつく男女が多かった。いや、いちゃつくために夜があるのかとよく分からないことを考えながら、顔を下に下げ項垂れていた。
「じゃあね丈くーん」
「じゃあねー」
ゆきなは、あちらこちらで聞こえる甘い声に胃もたれを感じていた。解散してわかれる声も聞こえた。
「今生の別れになってしまえ」
と、ここに座った自分が悪いのだが、不貞腐れながら酔いが覚めるのを待っていた。すると、誰かが近づいてくるのが足音で分かった。ベンチに座るのかと思い、座っている位置から気持ち隅に身体を寄せた。
「あれ?違ったらごめんなさい、どこかで会ったことありませんか?」
ゆきなは話しかけられ、ナンパされていると感じ無視しようか迷った。だが、何か聞いたことある声だったため、チラ見で声の主の顔を見た。
明るい街灯で顔がよく見えた。そう、入院した時の看護師、小池丈であった。
ありがとうございました。
日常系を書くのは苦手なので、既にギブしそうですが頑張って書いていきます。




