68 Chameleon
丈は、資料室での情報収集を終え廊下へ出た。すると、視界の隅でレナードの秘書のシモンズが歩いているところを発見した。見た目は褐色で金髪の長身の男である。
シモンズはレナード以上に謎が多い。いつから秘書をしているか、それ以前の動向さえ分からない。丈は気づかれないように後をつけることにした。
廊下をしばらく歩き、徐々に知らない場所まで来ていた。ここはユートピアの中で立ち入ることが禁止されている機密エリアであった。丈や他のアイディール部隊のメンバーも来たことがない。
シモンズは立ち入り禁止の看板を横切り機密エリアに立ち入った。丈も距離を置き続いた。先程までの廊下とは違い、薄暗く所々埃もあった。
下へ続く階段をシモンズは降りていった。
「資料室は地下にあるが、さらに下にフロアがあるのか…」
丈は、慎重に足を運んだ。階段を降り左右に進む廊下へ出た。物陰から顔を出し状況を確認した。だが、覗くとそこにはシモンズは既にいなかった。
丈は迷い右の通路を選び急ぎ足で進んだ。角を曲がるとそこは明るく不気味な雰囲気を醸し出していた。
「おやおや、ここでなにをされているのですか?」
丈を呼び止める声がした。それは背後であった。
丈はシモンズと判断し、横目で見た。
「それを言うならシモンズ、あんたもだろう。ここは立ち入り禁止だぞ?」
「とりあえず、ここから立ち去ってください」
「ふん、逃がす気はないんだろう?」
「なにをおっしゃっているのでしょう」
丈は、視線をシモンズから離さないよう少し距離を取った。
「あんたを初めて見た時から違和感があった。人間じゃないだろ?」
シモンズは丈の言葉に軽く動揺を見せたが、すぐ口元を手で隠し笑いはじめた。
「ふっふっふっ!あかん、バレてもうた。よう勉強してはりますなぁ」
シモンズは笑いながらこちらを見た。まるで見下すかのような人をバカにするかのような目であった。シモンズの周りには蜃気楼が起きかのように揺れはじめ、姿が変わった。
廊下の高さは2m近いがそれくらいまで身長が伸び、身体の色がさながらカメレオンのように白と緑が入り混ざっていく。顔には大きな目が2つと長い舌が出現した。
シモンズの正体はカメレオンライフ。ユートピアに侵入し裏から暗躍をしていたのだ。
「そんなけったいな顔、堪忍してぇや」
「気味悪いな、さながらカメレオンってとこか。それで変装してたのか」
「そうやぁ、そして1つ面白いこと教えたる」
「?」
「この舌先に触れた者を任意でマインドコントロールすることが出来んねん」
「…まさか、それでレナードを?」
「さぁ?どやろか」
話し方も目も全てが丈をバカにするように感じた。丈も挑発して隙をつくつもりだと思い、集中をして構えた。武器や装備は何も持っていない状態であり、今まで人型ライフと戦ったことがある丈には分かる。圧倒的に不利であった。
だが、周りには戦闘に活かせるものが何もなかった。正真正銘、地力が試される場面で思わず笑みが溢れた。
「かかってこいよ、おもしろ顔面め!」
「早死にしたいらしいなぁ」
カメレオンライフは、長い舌を器用に操り刺突攻撃を繰り出した。丈は素早くそれを避けた。狭い廊下では小回りがきき距離を詰めた。しかし、恐ろしく早いボディーブローが丈を襲った。咄嗟に両手でガードし後退した。
「くっ!いてぇ…」
「小さいもんが有利やろと思いなはれたか?自分で言うのは癪だが、ライフで一番強いで?」
「はっ!そう言う奴は大抵噛ませになるんだよ!」
カメレオンライフの攻撃は、廊下を破壊しながら丈を襲った。丈は距離を取り避けることが精一杯になっていた。長い舌の波状攻撃は丈の体力を少しずつ削っていった。
「おもしろ顔面め、いたぶってやがるな…」
丈は片膝をつき、上がった息を整えた。ここでは援軍は期待できない。何か起死回生の策はないか目を動かし周りを見た。すると、奥にドアが半開きの部屋を見つけた。そこへ一度態勢を立て直そうと画策した。
破壊された壁の破片をカメレオンライフに投げ、その隙に部屋まで全速力で走った。半開きのドアを開けなかには入ろうとした時、ドアの横に表札があった。
そこには【人体冷凍保存室】と書かれていた。不思議に思いつつも部屋に飛び込みドアを閉めた。
「はぁはぁはぁ…」
息を整えながら部屋を見渡した。そこは機械音が静かに鳴り、青白い明かりに照らされていた。広く部屋には一定間隔に何かが並んでいた。人が1人入れるくらいの大きさのカプセルのようなものが何列にも並んでいた。
覗き窓がついており中を覗いた。衝撃的な光景を目の当たりにした。
「人が……なんだここは…」
カプセルには人が眠っていた。まさしく人が冷凍されていたのだ。他のカプセルは同様に閉じてあるものと、開いているものがあった。
「どうなってるんだ…何故ユートピアにこんなものが…?」
「驚いたかい?」
丈は瞬時に警戒態勢入った。だが、カメレオンライフとは違う声であった。丈の位置から少し離れたカプセルに腰かけて、片手で収まる大きさのダイヤモンドを眺めていた。その人物を見て丈は憤怒した。
「レナード…!!」
「やぁ、こんなところで会うとは奇遇だね。相棒よ」
ありがとうございました。
シモンズことカメレオンライフは京都弁もどきを話すようですね。話し方が間違っている時はニュアンスで楽しんでください!
さぁさぁ、レナードが現れ次回は……!




