65 Help people in front of you
空中都市ユートピアは寝静まった。
夜もふけ、明かりは消えている。アイディール部隊の帰還からのどんちゃん騒ぎは落ち着きいつもの日常に戻りつつあった。
「寝れない…!」
そんな中1人、眠れずにいる男 アイビーがいた。アイビーはこれまで、体験したことがないことを地上に降りてからたくさんした。
その体験は鮮烈にアイビーの脳裏に焼きついた。気持ちの高揚、それと同時にユートピアの民には悲しい思いはして欲しくないという正義感が芽生えてきたのだ。
アイビーは大なり小なり関係なく、誰かの役に立ちたい、悲しむ人たちを助けたいという衝動に駆られていた。
日が昇り、人たちが外へ出てきて活動を始めた。ガーデニングしている人、食材を育てる人、力仕事をしている人、商売している人、ダラダラ日向ぼっこしている人等多種多様にいた。
寝不足になっているアイビーだが、待ちに待った時間帯になった。顔を洗い、服を着替えた。
アイビーは飛ぶことが出来るユニークを持っている。自分の部屋の窓から飛び出て、高く上昇した。太陽の眩しさに目を細めにしながら心地よい風を浴びた。
ユートピア全域を俯瞰的に眺めることが出来た。人が米粒のように小さく、しかし表情は事細かくみることができる。
アイビーは誰か困っている人はいないか、ユートピアの周りを飛び回った。それに気づく子どもや大人達はアイビーに手を振り、アイビーも満面の笑みで返した。
すると、アイビーの目には老人が荷物を重たそうに運んでいるのが目にはいった。急いで急降下し、老人の側に降り立った。
「やあ、おばあちゃん!その荷物持とうか?」
アイビーは笑顔で話しかけた。それに気づいた老人も有り難くご厚意に甘えた。今までライフという謎の生命体を相手にしてたくさんの人を救ったアイビーだが、この小さな人助けにも生き甲斐を感じ始めた。
人助けに大きいも小さいもない。目の前で苦しんでいる人を助けることが大事だと…
「ありがとうねぇ」
「いいよ!また困ったことがあったら遠慮なく言ってね!」
颯爽と立ち去り見回りを続けた。そんな日々を何日も続けた。時々またライフが襲撃してこないかなと思う時もあったが、地上で指令系統を潰したことでユートピアに攻めてくるライフはいないのと同然であった。
「よしよし、困った人を助けるのは楽しいな」
アイビーは自分の手を握ったり開いたりしていた。これまで人を助けてきた手を見つめ誇らしく感じていた。
「精がでるな、アイビー」
アイビーに声をかけたのは、デイビスであった。声に振り向いたアイビーに飲み物を投げ渡した。アイビーは咄嗟だったが上手く受け取った。
「デイビスか、最近どうよ?」
「自己研鑽とエンジニアの勉強ばっかりだな、なにせライフが出ないからな」
デイビスはアイビーの目をみながら話した。アイビーは、そうかそうか楽しくやっているんだなと返した。
「聞くぞ、最近アイビーが助けてくれたって。そんなこと今までしなかったのに何の感情の変化だ?」
「ふふふ、何を言っているんだ。オレは正義の味方だ!」
誇らしげに口にした言葉に少し驚いた表情を見せたデイビスだが、アイビーなら言いそうだなと心の中で思った。
「正義の味方なのは良いことだが、目の下のクマが凄いぞ。しっかり寝ろ」
「バレた?」
ひとしきり笑いあった2人。
「そういえば、最近キャプテン見ないけど知ってるか?」
アイビーはデイビスに聞いた。見回りをしている時に大体1回はアイディール部隊のメンバーを見かけたが、キャプテン/丈だけは姿をみることがなかった。
「いや?俺もマシューの部屋で色々してたからな、確かに見てないな…」
「元気してるかな?」
「おそらく、1人で調べてるのかもしれないな」
「何を?」
「ユートピアのことだよ、それとレナードのことも」
「だいぶ気にしてるもんなキャプテン」
「キャプテンが助けを求めたらどうする?」
「当然助ける!」
「だよな」
ビータは今日も色んな人達と交流をしていた。用事を済ませ帰る途中、コツコツと靴を履いて歩く音が聞こえてきた。振り向くとそこにはレナードがこちらへ向かってくるのがわかった。
「楽しそうだな、ビータ」
レナードは優しく、そして威厳のある笑みをビータに見せた。ビータは少し考えたあと、返事をした。
「ロボである君がこんなにも人に対して興味を持つとは面白い。これも地上での出来事が関係しているのかな?」
ビータはレナードが探りを入れてきていると直感で感じた。レナードには地上の話はしないとマシュー達と約束をしたのだ。言葉を選び答えた。
「そんなことなはい、元々人は大好きだ」
「おやおや、そうだったか。これは失礼した」
「レナードはここで何をしているんだ?」
ビータは逆に探りを入れてやろうと質問をした。
「みんなの心身の傷は癒えたのだろうかと見に来ただけだよ」
「癒えた者もいればそうでない者もいる。だが、全員前に進んでいるはずだ」
レナードはうんうんと頷きながらビータの話を聞いていた。
「癒えない者もか…それはキャプテンのことかな?」
「さあな」
「彼だけ、帰還してきても神妙な顔だったから心配なんだよ」
「ドッペルゲンガーにあったからな」
「ドッペルゲンガー?」
「地上でキャプテンは同じ顔を見たと言っていた」
「ほう…」
悪い顔とはこの事かとなるほど、ビータには見えない死角でにやけた顔をしたレナード。
「ではこれで失礼する」
レナードはビータに挨拶をしてその場を後にした。
その後ろ姿を見つめ、自分の言葉を振り返った。数秒硬直し、
「……………あ」
ありがとうございました。
アイビーの正義が目覚めて新たな目標を持った話と、レナードが動き始めた話でした。ビータは口が滑ってしまった…




