64 Make peace with
ある日の訓練所で、
「はっ!」
アリスとビータが射撃訓練をしていた。アリスは瞬間移動のユニークを持っているため、ユニークと併せた射撃スキル向上のために、逃げるノックワスプになっているビータを標的にしていた。スピード重視のノックワスプと瞬間移動のユニークでは、先読みをしながら射撃する力が必要なためアリスは苦戦をしていた。
「はぁはぁ、意外と難しい…」
「だが、初めよりは当たるようになってきているぞ」
「ありがと、休憩しよ」
ノックワスプの換装を解き、アリスも水分を飲みに向かった。ガブガブと飲み汗で流れていった水分を補給した。
「相手してくれてありがと、マシューはいいの?」
「…」
アリスの声かけに、言葉を詰まらせ何も答えなかった。何かあったのだろうと何となくで感じたアリス。
「さては、喧嘩したな?」
「喧嘩なのではない、マシューが悪いんだ」
ビータは、マシューに作り出された自律型ロボットである。自我を持ち成長していくロボットである。ユートピアにいる間は、マシューの近くにいて少しずつ成長していったが、地上に数ヶ月降り立った。
様々な人に出会い、その人の考え方、人生、感情の起伏、世界の在り方などを目の当たりにしてきた。今まで人に興味が無かったわけではなかったが、地上での生活を経てもっと人のことを知りたいと思うようになった。
帰還後からは毎日ユートピアの民と関わるようにしている。そうすることで人とは何か、生を受け何を全うするのかを見ていた。
ある日のビータは、ユートピアの商店街区域に足を運んだ。そこでは人が集まり食べ物や雑貨などを売っていた。毎日通うようになり顔馴染みになる人達も増えた。
「あれ、ビータちゃん今日も来てくれたの?」
「ああ、今日は何がオススメだ?」
こういう関わりを続けていた。
「帰ったぞ」
「まーた遊んできたのか」
ビータはマシューのいる実験室に帰った。普段は実験室にいることが多いビータが最近ずっと出掛けており、嬉しいような、そうでもないような感覚のマシューはビータが袋いっぱいに持つ食べ物をみて呆れていた。
「何を買ってきたんだ?」
「果物だ、今が食べ時らしいぞ」
「食べ時って…ビータは食べれないだろ?」
「そうか、ならマシューが食べろ」
「そんなにたくさん食べれないよ、アイディール部隊にお裾分けしてきなよ」
軽くため息をつき休憩を終え、試作中の研究を再開した。ビータはソファに袋を置き、マシューのしていることにも興味を持ち覗いた。
「何よ」
なんか気持ち悪いなと思いながらも作業を続けた。
「続けろ」
「何でビータが命令するんだよ」
黙々と作業しているマシューを見て、自分も何か手伝おうと近くにあった部品を触り始めた。それを見たマシューは驚き、強く注意した。
「触るなビータ!」
「任せろ」
「やめろ!もうどっか出ていけ!」
「…」
あまり声を荒げることがないマシューに少し驚いたビータ。無言で実験室から出ていった。その歩き方からは落ち込んだような音が聞こえた。
「それであたしの所に来たってわけね」
「ああ、俺達の仲だからな」
あれ、そうだっけ?と疑問符が浮きでたアリス。
「いつマシューの所に帰るの?」
「帰らない!マシューは頭が固い!アリスの相棒にでもなろうか」
腕を組みそっぽを向いた。ロボットであるがまるで人のような所作に感心してしまったアリス。
「でも、本当に嫌になった訳じゃないんでしょ?」
「…」
「ビータを作ったのはマシューな訳だし、ある意味マシューは親みたいなものでしょ?一時的な喧嘩だと思う」
「…」
「ちゃんと謝ればすぐに仲直りできるよ」
「…いや!俺はもう…マシューの所には…!」
アリス自身もつい最近までは似たことをしており、丈とアイビーのお陰で何とか仲直りできた。ビータの気持ちはよくわかっていて、それまでは温厚に接していたアリスであった。だが、客観的に見るとイライラが溜まってしまい言い放った。
「喧嘩した程度でコロコロ相棒入れ換えるかよ、便利な関係だな!」
「…!」
「意地張ってないで、早くマシューの所に行け!!」
そう言って、そっぽを向いていたビータの尻にドロップキックを蹴りこんだ。
「ぐぉっ!」
前方に転がりうつ伏せに倒れたビータ。広げた手のひらを強く握りしめた。これまでのマシューとの思いでの記憶のデータを思い起こした。
「すまない!」
ビータは、起き上がり一目散に走り去った。
「あたしはこういうの向いてないなー、背中がムズムズしてきた」
「マシュー!」
ビータは強く実験室の扉を開けた。そこにはマシューが立っていた。ビータにはマシューが睨んでるようにも見え目をそらした。
「すまなかった!マシューのやっていることに興味を持ってしまい邪魔をしてしまった…!」
深々と頭を下げたビータを見て、マシューは無言で作業台に歩いた。そして、先ほどまで作っていた試作品を持ち、地面に叩きつけた。
その音に驚くビータ。
「何をしているマシュー!?」
「壊れればまた作れば良い!大したことはない」
「マシュー…」
「私の方こそすまなかった。色々悩むことが多くてな…ビータに当たってしまった」
「マシュー…全く!俺がいないといけないな相棒」
「調子の良い奴だな!」
マシューからは笑みが浮かび一安心したビータ。
「さあ、落としたものを片付けてお茶にするぞ」
「いや、飲めないだろ!」
ありがとうございました。
そういうコテコテの友情?物語もいいですね




