62 True Love
丈達がユートピアに着く前の輸送機の中では。
「いいか、レナードが黒幕的な存在ならユートピアに戻った後、地上での出来事を根掘り葉掘り聞いてくるかもしれない」
全員が身体を向き合わせ、丈が話し始めた。
「全てを話す必要はない。だから、話す内容を統一しておくのが良いと思う」
「話す内容?」
アイビーは聞き返した。
「例えばライフのことだな、布施が関与していることは言っても良いな」
「言っちゃダメなのは?」
「ユニークをライフが使っていたことや人がたくさん生きていることとかかな?」
「んー、難しいな~」
「そうだな、もう少し分かりやすくまとめていこう」
デイビスの意見により、提示する内容を共有しユートピアの着陸をすることとなった。
場面はレナードがジェームズの姿を見るや否や安心した様子を見せている所であった。丈は前々から、レナードがジェームズに対する過保護のような態度に疑問を抱いていた。親友の子どもならそうなるのか、それともと思ったが一方のジェームズは、ダル絡みされて嫌がる若者のような表情であった。
考えてる間に丈の周りをユートピアの民が囲み、何が起こったのかを興奮気味に尋ねてきた。丈は濁しつつ答えていた。すると、少し離れたところから歓喜の声とも違う怒鳴りあう声のようなものが聞こえてきた。
「なんで久々に会う子どもにそんなことが言えるの!?」
声の正体はアリスであった。その声をぶつける相手はアリスの母親であった。なんだなんだと気になる丈に、アイビーが気付き話してくれた。
「あー、あれ?キャプテン知らなかったっけ?」
「なにを?」
「アリス、母さんと仲悪いんだよ」
「そうなのか…」
「アリスの父さんは元々俺達のようにライフと戦っていたんだ。だけど、戦死しちゃって…アリスは父親の代わりに自分が戦うって決心して、母さんに猛反対されたけどそれを振り切って今の立場になってるから、なんかな…」
それを聞いた丈は、アリスと母親のどっちの言いたいことも分かるとなった。見ていると、ひとしきり言い合った後、2人は別方向にそっぽを向き歩いていった。
「あ、言っちゃった」
アイビーもその光景を見ており、やれやれと言わんばかりの表情をしていた。
「アリスの母親と話してくる」
「え!?なんで?」
丈の言葉にアイビーは驚いた。
「本当に仲が悪いなら、ここへ来ないだろう?」
アイビーの返答を待たず、ユートピアの民に謝りをいれてその場から離れた。それにアイビーもついていくように追いかけた。
丈がアリスの母親に追いついたときに見たものは、顔を隠し座り込んでいる姿であった。アリスの母親が丈達に気づき目を擦っていた。
「あんた達…」
少し睨んでるようにも見える眼差しに少し怯んだがアイビーは、
「娘さんと一緒にユートピア守っています、アイビーとこちらはキャプテンです」
アイビーは自分達の自己紹介をした。だが、アリスの母親はそんなこと嫌でも分かると一蹴された。それもそうだ、そもそも自分の子どもの仕事仲間で、このユートピアに住んでいれば知らないものは居ないほどの存在なのだ。
「それで、何の用だい?」
「さっき娘さんと言い合いをしていて気になったものでして…」
「人様の問題に割り込めるほど、あんた達は偉いのかい!?」
鬼の形相が一瞬垣間見え、肩をすくめる2人にタメ息を一回つき、尋ねてきた。
「…あの子は元気にやっているかい?」
視線を落とし、聞きにくそうに聞いてきたアリスの母親であった。
「それはもう怖いく、、、」
バシッと叩かれ痛みで頭を押さえるアイビー、話を遮り変わりに答える丈。
「ええ、誰よりも。それでいつも勇気づけられていますよ、誇れるメンバーですよ」
丈は、一切の恥じらいもなくアリスの母親に伝えた。
その言葉と顔を見たアリスの母親は少し恥ずかしそうに、
「…そうかい、それならいいよ」
笑みが見え隠れした気がした。
「長旅お疲れ様アリス、随分浮かない顔だな」
ベンチに寝転がるアリスに丈とアイビーは声をかけた。それに気づき起き上がると、水分を投げ渡され水滴が顔についた。
「キャプテン、アイビー…なんでもないよ」
「そうか?顔は正直者だぞ?」
「なんか、おじさんみたい」
「おじさんって言われてやんの!」
アイビーの煽りに、丈は再び拳骨を落とした。悶絶をしているその光景をみて、アリスはやっと笑みを見せてくれた。母親にそっくりだ。
「さっき見えたけど母親と喧嘩をしているのか?」
直球に尋ねる丈に、アリスは間を置き口を開いた。
「だって…ママはあたしのやりたいことを否定するんだよ?パパと同じになるなって、それで大喧嘩して。だから今は別々に暮らしてるし、今日はそれ以来ぶりに会うの」
「母親は心配なんだろう?」
「そんなことない!あたしのこと嫌いなんだよ」
「どんなに喧嘩して言い合いになっても、絶対に嫌いになることなんてないよ。だって家族なんだろ?焦ったりもするし心配したりもする。戻ってみたらどうだ?そこがアリスの居場所だろ?」
「居場所…」
ベンチに座るアリスは両手を強く握り立ち上がった。すると、走りだしていった。途中で振り返り良く聞こえなかったが、手を振っていた。それに応える丈とアイビー。
「キャプテンってカウンセラーか何か?」
「なんだそれ?」
アリスはある場所へ向かって走っていた。走って息切れするのは久しぶりだ。それくらい全力で駆けた。辿り着いた場所のドアを開けた。その部屋からは料理している匂いが漂ってきた。匂いのする方に行くとキッチンであり、そこにいたのはアリスの母親であった。ここはアリスが昔住んでいた家であった。
「ママ…さっきはゴメン」
「私こそごめんね…あんな言い方しかできない自分が情けないわ、必死に戦っている我が子に」
「最初はパパの無念を晴らそうと思って戦場を選んだ。だけど、あたしはアイディール部隊でメンバーと一緒に戦っていく、それが今のあたしが選んだ道だよ」
その言葉に、つよく頷くアリスの母親。
「パパに似てきたわね、頑張りなさい」
「ママ…」
「ご飯あまり食べれなくてお腹空いたでしょう?アリスの好きな物作っているの食べていって」
「ありがとうママ!」
ありがとうございました。
アリス回でした。母娘の良い話風に頑張りました。




