47 愛の知らない背水の陣
ジェームズ キャプテン/丈の息子 裏主人公
モウス 体重を増減できるユニークを持つ
マリー モウスと同じ避難所にいる少女
フュージョンライフ 人を取り込み記憶を一部引き継ぐ特性がある。
布施のユニークにより、東西南北へ散らばった丈達。
ジェームズは、マリーという少女を助け避難所へ案内された。そこでモウスと出会い、これまでの苦悩を打ち明け新たな道を指し示される。
・??地区 とある避難所 〈ジェームズ モウス〉
「人を助けるのに何か理由がいるのでしょうか」
モウスのその一言に、今までの自分の行動を思い起こし全て自分のためだけにユニークを使ってきた事が脳裏をよぎった。思い当たる節が多く、特にキャプテン/丈にしてきたことの罪の重さを思いしるようになりその場で項垂れるように頭を抱えた。
「悔いやむのは今だけにして、これからどうするか考えましょう」
「これからの…こと」
すると、避難所の人がモウスの所へ走ってきて
「モウスさん!近くにライフ達が大勢!」
「ありがとうございます。皆さんは奥に隠れていてください」
モウスは腰を上げ外へ出ようとした。
「なら、俺も」
ジェームズもと、立ち上がるがモウスは手出しは無用と制止した。
モウス達がいる避難所の近くに獣型ライフ数体とフュージョンライフが1体いた。
「これはこれは、たくさん来られて何かご用でしょうか?」
モウスはたった1人で複数のライフを目の前に立ちはだかった。ジェームズは避難所の人と同じ所で見守っていた。
グワァーー!!
重なる咆哮で地鳴りが起こるかのように地面が揺れた。しかし、モウスは動じること無く、両足を大きく開き腰を落とした。そして四股を踏むように右足を天高く上げ振り下ろした。
ドスゥーン!
「さぁ、待ったは無しですよ?」
獣型ライフはモウスに突進を仕掛けた。そのタイミングを見計らい、モウスは両拳を握り地面に置いた。モウスの近くの地面はみるみるひび割れ始めた。
ドカァーン!
ライフとモウスがぶつかり合う音が響いた。モウスはライフの突進を受けきり、身体を持ち上げ他のライフの所まで投げた。その恐ろしさにライフ達はその場を去った。
「なんだあのユニークは」
唖然とするジェームズに避難所の人が、
「モウスさんは"体重を自由に増減できる"特別な力があるんだ。あまり増やしすぎると体重を戻す時の反動で身体に負担がかかるけどね」
「そう言うことです。基本的に追い返すだけですけどね」
「倒さないのか?」
「敵とはいえ、殺傷するのは好きになれなくて」
「モウスさん!スゴいー!」
「やあマリー、スゴかったでしょう?」
マリーはショーを見るかのようにはしゃぎながらモウスの元まで走った。
「ママもスゴいって言ってたよ!」
「そうですか…ママも」
マリーの言葉に少し歯切れの悪い返答をしたモウス。
「そうだ!お兄ちゃんにママに会わせるって約束してたんだ!」
そう言ってジェームズの手を引っ張り教会の中へ案内した。その会話を聞いていた避難所の人々やモウスは目を伏せていることに気づくがどういう意味かわからないジェームズ。その真相はそう遠くないタイミングで理解した。
ガチャ
マリーとジェームズは1つの部屋に入った。
「ママー!あのね私を助けてくれたお兄ちゃん連れてきたよ!ほら!お兄ちゃんも挨拶して!」
ジェームズはマリーの行動に理解が追いつかなかったが、避難所の人達の様子のおかしさには理解することが出来た。なぜなら、連れてこられた部屋は真っ暗で誰も居なかったからである。
「ママって誰だ?」
その異様な空気に思わず口から出てしまった。
「誰って目の前にいるじゃん、ひどーいねぇ?ママ」
「いや、ママなんて…」
ママなんてどこにも居ない。そう言いかけたジェームズの後ろにいたモウスが、肩に手を置き首を横に振った。
「マリー、ちょっとジェームズさんと話があるからママとお話をしていてよ」
「ええー、仕方ないなー!後で来てねお兄ちゃん」
真っ暗な部屋に1人いるマリーは去っていくジェームズとモウスに手を振った。
「…あれは?」
「マリーの両親はライフによって死んでしまいました。幼い彼女には耐えられない事実です。あまりのショックで、目の前にいるかのように幻覚を見るようになってしまったんです」
「幻覚…」
「現実を受け入れることができない"そういう人"も世の中にはいるんです…今は否定せず、ゆっくり現実を受け入れることが出来るようにサポートするしか方法はないです」
「そんな人達もいるのか…そういう人も守る対象になるのか?」
「ええ、もちろんです」
ジェームズは何に対して、今の力を使うべきか徐々に分かってきた様子であった。だが、さらにここから悲惨な現実が訪れるとは誰も予想だにしていなかった。
翌日、ジェームズ、モウスはマリーの遊びに付き合うため外へ出ていた。
「いくよー!」
マリーはボールを勢いよくモウスに投げた。キャッチボールのように3人で投げ回していた。マリーが投げたボールはモウスから離れた所に飛んでしまった。
「あー、ごめーん!」
「いいよー」
モウスは取りにその場から離れた。ジェームズはその場で待ち景色を見ていると、マリーの悲鳴が聞こえた。
「きゃー!」
「なんだ!」
フュージョンライフがマリーを取り押さえていた。
「お前!」
引き離そうとマリーの所まで行こうとした時、フュージョンライフはマリーの身体を包み込むように飲み込んだ。
「お兄ちゃ…」
バクンっ!
すると、フュージョンライフは形態が変化した。目の前の一瞬の出来事に身体が硬直してしまったジェームズ。
「オニイチャン、オニイチャン」
フュージョンライフは飲み込んだ人の記憶を一部引き継ぐ特性がある。フュージョンライフ自体はその記憶にどんな意味があるかは理解はしていない。
「マリー…」
事態を理解することが出来、憎しみにより強く拳を握りしめた。モウスもその光景を戻ってくる最中に目撃しており、すぐに臨戦態勢に入った。
「よくもマリーを…!」
フュージョンライフと共に、先日追い返した獣型ライフが攻めてきた。モウスの顔は険しく迫る獣型ライフをぶちかまし一発で仕留めた。
「フゥー!フゥー!さすがに許せない」
モウスは鼻息が荒くなり、マリーを飲み込んだフュージョンライフを睨み付けた。
「オニイチャン」
フュージョンライフの右手の鋭い攻撃をモウスは脇で挟み、小手投げのように手前に引っ張った。だが、その攻撃に耐えたフュージョンライフに間髪いれず素首落としのように、手刀を首に振り下ろした。
ドスゥーン!
強烈な一撃に動かなくなったフュージョンライフ。荒くなった息を整えようと大きく息を吸うモウス。
「これ以上はマリーの身体が危ない」
「いや、こいつに飲み込まれた人はその時点で…死んでいるんだ」
ジェームズの言葉に衝撃を受けたモウス。
「なんですって!?」
「もうなにもしなくても直に死ぬだろう…そのままにしておこう」
「オニイチャン…」
「うぉーー!!」
その悲しいくらいの悲痛な鳴き声は、広い外では無情に轟いた。
ありがとうございました。
悲しい出来事の連続でしたね。マリーのような人は以外にも現実にもいます。




