30 遭難
コンコン
マシューの実験室の扉を律義に叩くアイビー
「はいはい」
中からマシューが扉を開け応対した
「どうも!」
元気に挨拶するアイビー
「全員お揃いでどうしたの?」
「実は…」
ことの顛末をマシューへ説明した
「そうか、レナードさんにそんなこと言われて、何か打開策はないかここへ来たってことか」
話された内容を要約し頭の中で整理をした
「そうなんだよマシュー」
「打開策って言われてもな」
「何かないのかよ!マシューはなんかカッコよくなってるし、ロボットいるし!」
「呼んだか?」
「うわぁ!」
言葉に反応し、アイビーの後ろから自律型ロボットのビータが声をかけた
「聞いたぞ、打開策がないかと…それは心を鍛えることだ!」
と高らかにアイビーに伝えるビータ
「心を強く持てば弱い自分には負けない、何か打開策はないかと言っている自分にな!」
「痛いところつかれたな」
「迷ったら行動あるのみだ」
人差し指をたてて説教まがいに力説を始めるビータであった
「行動あるのみね…」
カチャ
実験室の奥のドアが開く音がした
そこにはタオルで頭を乾かしながら出てきたジェームズである
丈達が訪問する前に、試作品の装着と練習をしておりその後にシャワーを浴びていたのだ
「お、さっぱりしてかいジェームズ君」
「ああ、助か…」
目線を上げたジェームズは目の前にアイディール部隊が揃っていることに少し驚いた表情であった
「え?なんで?」
「よー!ジェームズ!マシューと世間話しに来たんだよ」
丈のいじりを含む声かけにシカトしマシューへお礼を言った
「助かったマシューありがとう」
「どういたしまして」
お礼を伝え、そそくさと荷物をまとめ始めたジェームズ
「なんだ、もう行くのか?」
「今日はもう失礼する」
荷物を肩に担いだその瞬間、
サイレンの音が施設内に鳴り響いた
『緊急緊急 ライフがユートピアへ接近中 アイディール部隊の出動を要請』
アナウンスが終わり、
「悩んでいたって来るものは来るよな」
よいしょとソファから立ち上がる丈達にマシューは
「あ、そうだ キャプテン、その出動にジェームズと一緒に行ってもいいかな」
「ジェームズと?てことはマシューも来るのか?別に良いけど」
「なら、おれも行くぞ」
被せぎみに割って入るビータ
「被せるなよ、てか近いな!」
カンっ!
ビータの肩を叩き、金属音が響く
「とりあえず準備して輸送機のところまで来てくれ、先に行ってるぞ」
丈達は先に実験室から出ていった
マシューとビータとジェームズだけになった部屋
「なんでおれが?」
ジェームズの疑問にマシューは
「なんでって実戦で経験を積む必要があるだろ?」
「そうだけど…クソ親父と一緒なんて」
「いつまでもそんなこと言ってるんじゃない、越えるなら近くで見ていた方がいいだろう」
「越えたいわけじゃ…」
ジェームズが言葉を続けようとしたが、荷物の準備をし始め話を遮ったマシュー
「ったく…」
ジェームズは諦め、自分の部屋に戻り出動の準備をして輸送機の所まで向かった
「着いたか早くこっちに来い」
輸送機へ着く頃には全員到着しており、ジェームズを待っていた状態である
「すんません」
軽く謝罪をして輸送機へ乗り込んだ
そして目的地へ出発した
「今回の敵の情報は?」
「獣型ライフが多数との情報しか」
「中途半端な情報だな…」
「ま、今回はアイディール部隊だけじゃなくてマシューとビータとジェームズがいるしね」
「そう言うことだ おれは10人換算でもいいぞ」
ビータの謎の自信で緊張している空気を和やかにした
だが、1人静かに座っていたジェームズに丈は気付き声をかけようと近づいたその瞬間…
『アイディール部隊の皆さん!』
コックピットからの通信に全員目を向けた
『目的地周辺へ着いたのですが、前方から前が見えないほどの霧のようなものがたちこめて非常に危険な状態です!』
その通信に輸送機から外を窓越しに覗くと、目の前には払っても払っても覆い被さってくるような、触れないのに自分に干渉してくるような霧が一面に広がっていたのだ
「なんだこれ…」
「今までにはなかったことだ」
「まさか…また人型ライフとかの襲撃か?」
「全員!気を抜くなよ!」
丈の言葉に全員が臨戦態勢に入った
深く白い霧に視界を塞がれ不安と緊張が募る
輸送機の速度も減速し注意を払い飛んでいたが、近くで雷の音が鳴り始めた
「雷?今日は快晴だろう?」
「今さらだけど、まず快晴なら霧ができる訳がないよな…」
雷により、今の不可解な状況に気付き始めたメンバー達
霧の奥で雷鳴が轟き、輸送機の周りに落ち始めた
轟音と眩しく発光し輸送機に直撃したのだ
輸送機が大きく揺れ制御が出来なくなりメンバー同士で身体をぶつけ合ってしまう
「きゃあ!」
「うぉ!?」
『落雷により制御不能!不時着します!衝撃に注意してください!!』
コックピットのアナウンスにより、全員が体勢を整え不時着の衝撃に備えた そして、
ガンッ!ガッガッガッ!!
輸送機は地面に不時着した
その衝撃に身体を打ち付けられた
「うっ!」
「まじか!?」
周りの霧は徐々に晴れていき、輸送機は煙を上げ微動だにしなかった
「全員…生きてるか」
丈は頭を押さえながら安否確認した
「なんとか…」
「いってぇ」
全員が無事であることを確認した丈は、
「この中は危険だ 荷物を持って外へ出るぞ」
「外も危険だけど爆発するよりはマシか」
荷物を持ち後方のハッチ開閉ボタンを押し脱出した
外は霧により太陽の光を遮られ薄暗く不気味な雰囲気を醸し出していた
「ったく、なんだったんだ?」
「異常気象にしては異常だよな」
「訓練中に気候変動による事故はこういうことがあるからなのか?」
現在地を把握しようと周りを見渡していた時、霧の奥から小さく足音が聞こえてきた
ザッザッ
「ん?あそこら辺から足音みたいなのが聞こえてくるぞ」
「え?」
耳をすますと確かに聞こえてくる それも近づいてくるようだ
「助けがきたのか?」
「だといいがな」
「おーーい!助けてくれーー!」
アイビーがその足音のするほうへ声を張るが返事がない
しかし、迫る足音に少し怖さを感じた
すると、足がようやく見えてきて幽霊ではないことに安心した丈だった
「おやおや これは大変でしたね」
中年の男性のような声が聞こえてきた
「やっぱり人だ!」
「まあ、私がやったことですが」
その一言に疑問を感じたが…
「ん?」
足から上に向かい露になってきたその姿は
その人物は、ネイビーのスーツにハットを被り手を腰の後ろで組んでいた
この荒野に似つかわしくない姿に違和感を覚えたメンバー達は、警戒をし始めた
「お前はだれだ?」
「誰だとは悲しいですね、私はあなた達のことを知っているのに」
ハットを取り胸元まで下ろし顔をメンバーに見せた
その顔に丈とマシューとジェームズ以外は身に覚えがあったように、目が大きくなり驚いた表情になった
「あなたは…布施さん?」
ありがとうございました。
霧出てから不時着するまでの表現が思いつかなく、頑張って誤魔化しました。
謎の男性 布施とは…?次回より新章へ突入します!
新天地で丈達は何も目撃するのか…!




