第八話 探しものはなんですか
セティスは、シャルルロアという国の出身で、魔女を探しているといった。
「シャルルロアの王になる者は『ダイアモンドナイト』という女神が宿る石を継承します。その石を奪われました」
「……誰に……?」
「リリーとアキラ、ガーネットという魔女です」
「ガーネット……? 顔や、髪の色は」
「銀髪で、見た目は可愛い女の子です。十一~三歳くらいに見えます。瞳の色は紫」
「三人とも、魔女なのかい」
「一人は男です、でも魔女です」
「ふむ。よくわからんが、そこはいい。探している魔女かはわからないが、ガーネットという女には心当たりがあるよ。捕まえたらいいのかな、それとも殺していいのかい」
「あ、殺すのは困ります。ダイアモンドナイトを取り戻さなくてはなりません」
ラグネルのファンの、弁当屋の女。とても、女神の宿った石を奪うほどの魔女とは思えない。
仮に、弁当屋がその魔女だとしてだ。
「女神であるダイアモンドナイトを奪って持っているなら、なぜシャルルロアの王になっていない?」
「持っているだけでは駄目なのです。気に入られなければ、女神の力を使うことはできません」
「なるほど。それではセティス、君はなぜ、一人でガーネットを追っている? 女神を奪われたなら、国をあげて賊を追うのが普通ではないか?」
「シャルルロアは、『女神が気に入った人間』を王にするのです。なので、厳密には王家というものはありません。前の女王が私の姉でした。私たち一家は、もともと人形師の普通の家でした」
女神に選出され、王になる。
女神の力を失った女王がどうなったか容易に想像できる。殺されたか、民の怒りから逃れるために、どこかへ隠したのだろう。
そして弟が代わりに、女神が宿る石を探す旅に出た。こんなところか。
「一人では限界があります。協力者を探していましたが……。そもそも、私の話を信じてもらえないのです。信じてくれても、ガーネットを捕らえないことには報酬も出せず……」
「そうだろうねえ。君のような若い子がする仕事とは思えないからね」
話を聞いていると、ガーネットはあの弁当屋のようだが、他人の空似ということもある。
「人違いでは、君も困るだろうから、明日、闘技場に来てもらえないかな」
あの弁当屋はラグネルの試合の日だけ、長々と闘技場にいるので、顔を確認するくらいはできるだろう。
「いたら教えてあげるから、顔を確認すればいい。ガーネットはよくある名前だから、別人かもしれないし」
「ありがとうございます」
「お礼は体で払ってもらうよ。今夜は……興味深い話を聞かせてもらったから、帰るとしよう」
手をそっと重ねると、セティスは体を強張らせたが振りほどきはしなかった。
経験があるのかな。白い肌が震えている。旅して回っているなら、路銀に困ることもあるだろう。
「君の望みが叶ったら、一日、私に付き合ってほしいな」
「……そのくらいで……、よければ……」
我慢して、だろうが、彼は承諾した。
いい実験体が手に入ったと、踊り出したくなったがぐっと堪える。
「では、明日の昼に」