第七十一話 故郷はどこに
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みかんでも食べながら読んでいただけると嬉しいです。
蛇女を捕まえて食べる、というのは現実的ではないとアカネは続けた。
まず見つけるのが大変だし、魔物とはいえ蛇を食べるというのはあまり気が進まない。
「若返りに固執しないなら、オススメはしないわ。あくまで民間療法みたいなものだし」
「そうよねえ。探すの大変そうよね……。ウッドエルフ……、鬼ってのは、山にいるのかしら」
「山に住んでることが多いわね。でも、中には人間と共存してるところもある」
「取って食われたりしない?」
「しないわよ。山奥の温泉があるようなエリアに住んでるから」
アカネが、侍女を呼び地図を持ってこさせた。
「『鬼』は、オニって読むんだけど、この字がついている地名は山の険しいところ、こういうところに彼らの町があるわ」
「……いっぱいあるじゃねえか」
鬼頭、鬼首、鬼耳と、似たような地名が無数に散らばっている。
「離れて暮らせば問題は起きないわ」
宿へ戻る途中で、ラグネルは街の観光案内所を訪ねた。
「この地図の、オニコウベ温泉というところに行きたいんだが。宿や馬車の手配を頼めるだろうか」
「もちろんお任せください。何人で行かれますか」
「全員で五人だ。山奥だと聞いている」
「ええ、雪で馬が使えませんので、人力の駕籠になります」
聞き慣れない言葉に首を傾げる。
「かご?」
「箱のような形で、人が運びます。あと、先にお伝えしておきますが、オニコウベは鬼が住んでいると言われております。実際は優しい連中ですが、怒らせると強いです。本当に行かれますか」
「湯治に行くのに、怒らせたりしないさ。ところで、鬼と呼ばれる連中はウッドエルフなのか?」
「はい。彼らは山奥で暮らしています。エルフを襲う者もいますから」
「……」
「一攫千金を求めて、エルフ狩りに山へ入る者もいますが、返り討ちにあって戻らないことも多いです」
「ウチは、妻と両親、預かってるガキを一人連れて行く。エルフ狩りなんかしないさ」
それならと観光案内所の従業員が、宿と駕籠の手配をしてくれた。
鬼について調べたいというと、図書館があると案内してくれた。
鬼と呼ばれる民は、浅黒い肌に尖った耳、大きめの体格を有し、金属加工の高い技術をもった集団らしい。
城や水路を短時間で作り上げると、本にはあった。
『おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯へ行きました。……やがて生まれた子は、鬼ヶ島へ渡り、鬼退治を成功させ、富を得た』
この話は、エルフ狩りで富を得た者の成功物語として伝わっている。
マリーエンブルクで知った、自分が箱に詰められた両親とともに売られたという過去とは真逆の話だ。
知らなければよかったと思う反面、せめて自分の本当の故郷を見てみたいと思う。
宿に戻るとリリーとアキラは昼寝をしていて、ガーネットとデリーはせんべいを食べながら、テーブルの上に布団がかけられたものに、足を入れている。
「こたつっていうんですって。あったかいわよ」
「うん?」
ふとんを上げて見てみると、火鉢にやぐらのように組まれた枠を乗せ、その上に布団をかけてある。
手足を入れると、ほんのり温かい。
「炭を燃やしてるんですって」
「へえ、これはいいな」
オニコウベに向かうと告げると、
「そこにも温泉ある?」
とガーネットが尋ねた。
「ああ。ここよりもっと山奥で、雪も積もってるらしい」
「素敵じゃない」
「ここでのんびりしててもいいんだぜ」
「どうしてよ、夫婦なんだから一緒に行くわ」
仲いいよなアンタら、とデリーはみかんの皮を剥きながら横になった。
こんな調子で、いつ故郷にたどり着くのだろうかと、ふとラグネルは思ったが、のんびりいこう、とみかんの皮を剥いた。
今までのお話を忘れてしまった方は、ぜひ1話から読み直して見てくださいね!




