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第六十九話 降臨祭 

年末ですね。クリスマス回ぽいものを書きました! 

70話からは新章が始まりますので、もしお正月休みが退屈でしたら、読んでいただけると嬉しいです。



降臨祭


 ダイアモンドナイトの指輪を手に入れてから一週間が過ぎた。

 ラウネルに戻って、雪を降らしそうな雲が広がり始めたころ、ラグネルは尋ねた。

「この村では、降臨祭はやらねえのか?」

「誰のです?」

「女神アルゲトウムの」

 マリーエンブルクでは、毎年、女神アルゲトウムの降臨を、街中でお祝いをする。

 城や塀は、銀色の星飾りや花々で飾られ、市場は女神アルゲトウムの人形が売られる。これは一年飾ると、その年を不運から守ってくれると言われている。

 家族へのプレゼントや、教会への捧げ物の酒や肉、菓子が売られ、その祭りは三日三晩続く。

「グリューワインを飲んだり、家族と家でケーキを食べたりする。まー、女神に感謝しつつ、一年を締めくくろうみたいな」

「クリスマスみたいなものですかね。それなら、やりましょうか」

 リリーがケーキの材料を、アキラはワインに入れる果物やスパイスを買いに出かけた。


「ねえあなた」

 眉をしかめたガーネットが、ティーカップを置いた。

「ん?」

「ご家族は早くに亡くなってるんでしょう? 生誕祭は女といたの?」

「そりゃ、そういう年もあった」

「……」

「俺の方が年上だからなあ。生誕祭にひとりぼっちは淋しいからなあ」

 こればっかりは仕方ない。

「男女の仲にも順序ってモンがあるし、出会いにも順番があるだろうよ。これからはずっとお前がいてくれるんだろ?」

 抱き寄せて髪を撫でる。過去は変えようがないし、納得してもらわなくてはならない。結婚は共同作業なのだから、相手の気分を良くしてあげなくては。

 どん、と俺の胸に頭を預けてガーネットは、

「離さないから安心して。人間より長生きすると思うけど」

「うん?」

「ひとりにはしないわ。死ぬ時は一緒よ」

「ああ、そういう意味か。わかった」

 そういうのどこで覚えてくるんだろうな。

 どっしりと全身を預けてくるガーネットの椅子になって、両腕を前に回し、抱きしめる。

「降臨祭って、家族にプレゼントをする日なんだ。みんなの分を買いに行こうか」

「ええ、行きましょ。この村、お店あんまりないから買ってるうちにリリーたちと会うと思うけどね」


 手分けして家族分のプレゼントを買い、家に戻ると、リリーは庭で肉を焼いていた。

「でけえ肉だな、なんの肉?」

「鹿よ。半分焼いて、残りはシチューにするわ」

 台所では、アキラがりんごを煮て簡単なケーキを焼く準備をしていた。

「トレニアから教えてもらったんです。リリーの祖母のレシピだそうです」

「へえ、楽しみだな」

 教えてくれたのはリリーじゃないんだな。

「時間かかりますから部屋で待っててください。ガーネット、シチューに入れる野菜を切って」

「まかせて」


 料理を二人にまかせて、ツリーでも作るかとデリーを連れて森へ向かう。小さめの木を切り、庭まで持ち帰る。

「リリー、余ってる布とかリボンもらっていいか」

「好きなだけ使いなさい」

 肉を焼いているリリーに許可を取る。庭に転がっていた植木鉢に切った木を刺して固定し、リボンを結びつけて飾り付けをした。

「これなんだ?」

「女神アルゲトウムに感謝を届けるためのツリーだ。……お前の地元でもやらないんだな」

「神様が違ったらやらねーだろ」

 それもそうだ。

 部屋にツリーを運び込み、テーブルに食器を用意する。

 台所から、ケーキの焼ける甘い香りが漂ってくる。

 ケーキとシチューはもう少し時間がかかるからと、リリーが焼いていた鹿をカットして、ソースをかけた。

 鹿のローストと、アキラが作ったポテトサラダをつまみに、乾杯した。

「女神アルゲトウムの降臨を祝って」

「かんぱーい」

 温められたワインに、りんごとレモンの輪切りが浮かんでいる。

 ガーネットが作ったそれは、不思議と母の味になんとなく似ていた。

「やっぱりご飯はみんなで食べるのがいいですね」

 とアキラ。

「うちは、父親がいませんでしたから」

「あら偶然。うちもよ」

 とリリー。

 これは俺から、とプレゼントを配る。

 リリーには裁縫箱、アキラには絵を描くための筆のセット、デリーには黒水晶の精モリスと過ごすためのカップのセットをそれぞれ渡す。

 黒百合の女神にはクッキーの詰め合わせを用意している。

「私には?」

「はいこれ」

 袋から取り出したのは、熊のぬいぐるみだ。

「……子供ぽい」

「まあまあ。背中のボタンを外してみろって」

 中から小さな箱を取り出す。

「開けてみて」

 小さな星がついた銀のブレスレットを取り出して、ガーネットの瞳が綻ぶ。

 田舎の小さな雑貨店で、店主に探してもらった。

「……すてき」

 銀のブレスレットは、幸せが永遠に途切れないように、という意味が込められている。

「女神アルゲトウムの加護がありますように。いつも着けてくれよな」

「もちろん!」


 じゃ、シチューを持ってきますかねとリリーが席を立った。

「僕もケーキ持ってきますね」

 窓の外でちらほらと雪が舞い始めた。




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