第四十三話 図書館に行こう
第四十三話 図書館に行こう
黒水晶がどこで採れるのか、リリーとアキラに、村の学校へ連れて行ってもらった。
学校に併設されている図書館は、村人なら誰でも入れるようになっている。
「すまねえな父上」
「息子の頼みなら、なんでもありません。といっても僕はここの生徒ではないので、新鮮です」
世界の鉱物の本を調べる。途中でリリーは飽きてしまって、編み物の本を読んでいた。
何冊か本を開いて調べていると、黒水晶はケアンゴーム山という場所で採れるようだとわかった。
地図でその地名を探すと、ランズエンドという島のようだ。
「ランズエンド? 黒百合の女神の地元ね」
「なんだって? 神様にも実家があるのか」
「黒百合の場合はあるわ。親もいる」
神々の母と、会ったことがある。
アキラは異界から来たと自分で話していた。神々と親交があるというのはどういうことなのか。
「なんでそんなことに」
「そんなこととは?」
「普通、神様と会えるもんじゃねえだろ」
「そうですね……。僕がいた国は無数の神々がいましたが、確かに『会った』と実感を持ったことはありませんね。なりゆきです。黒百合の女神は家にいてくれる神棚みたいな感じですし」
「神棚ってなんだ」
「僕の国では、自宅に、神様を祀る棚を作るんです。でもラグネル、すでに銀の国と、銅の国の女神の守護を得ているあなたも、普通じゃありませんよ」
じゃあ帰ろうか、と必要な本のメモを取り、三人は図書館を後にした。
「めんどくさい。実家帰りたくない」
「……協力してくれるって言ったじゃねえかよ」
ケアンゴームに連れていけた黒百合の女神に頼んだところ、気分が乗らないと秒で断られた。
「あなた、親は」
「もう両親ともに亡くなってる」
「あらそうなの。若いのに苦労してるのね」
今日は駄目みたいです、とアキラに促されて、黒百合の女神のドールハウス(アキラいわく神棚)を出た。家の中に家があるのは便利だ。
「ケアンゴーム山は険しい高原だそうですし、装備を整える必要があります。明日……、いえ、しばらく経ってからまた相談しましょう。ところで、ラグネル、箒で飛べましたっけ」
「いや? 俺は魔女じゃねえからな」
「そうでしたね……。うーん。ちょっとリリーに相談しますね」
魔法の修行とかさせられるのだろうか。
「俺も魔女っ子に……!?」
「お望みなら。僕と契約して魔法少女になってください」
「イヤだよ」
某魔法少女アニメのセリフが好きでなあ。




