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第四十一話 女神の系図


 

「おっ」

「おっ?」

 リリーと釣りをしていると、ポツポツと降り出した雨が急激に強くなり、湖面を叩いた。

「コテージ借りてあるから、そっちに入って!」

 アキラが指差し、ラグネルとガーネットはそちらに駆け込んだ。

「一緒じゃねえのかよ」

「別々にしてくれたんじゃない。風邪ひくから脱いで」

 薪に火をつけて、服を脱いで乾かす。 

 コテージにはタオルや寝具、調理器具が備え付けてあり、濡れた体を拭くことができた。ガーネットの髪をくしゃくしゃと拭いて、暖炉の前で温まる。

 持ってきたパンに、温めた揚げ鶏を挟んで食べた。


 厚い雲が空を覆っている。止みそうもない強い雨に、ラグネルはうんざりとカーテンを閉めた。

 ラウネル王国は雨も雪も多いらしい。

 まだ昼を少しまわったばかりだが、雨が止むまで寝ようかとガーネットはベッドを整えた。


 ガーネットの肌を傷つけないように、寝る時は指輪を外す。

「……女神アルゲトウム……」

「マリーエンブルクの?」

 母親から引き継いだ指輪は、マリーエンブルクの神・女神アルゲトウムの力が宿っている。全身が銀色の肌の少女の姿をしていた。

 銅の国の女神カルコスは、褐色の肌をしていた。全体的に、似ていない姉妹だ。

「黒百合の女神にはお姉さんがいるんだったか。何人いるんだ」

「私達が知っているのは6人よ。柱っていうべきかしら。神様だからもっといるのかもしれないけど」

 一番上の姉は、会ったことがないので知らない、とのことだった。

「二番目は、アルゲトウムだろ」

「三番目はカルコスの国・銅の女神カルコスで、四番目はシャルルロアの女神・ダイアモンドナイト」

「五番目は?」

「海の神ヴィアベルよ。六番目はエメラルドの女神・ベリロス。七番目は、ヴィルガー王国の、炎のルビー・ラトナ。金銀銅ダイアモンド、サファイア、エメラルド、ルビー、の七姉妹よ」

「黒百合がいねえじゃねーか」

「黒百合は追加されたんですって」

「追加」

「アメジストで、末の妹」

「神も増えるのか」

「増えるというか、元からあるものの精神……、この場合は、石の心を目覚めさせるんですって」

 アキラの力の源・精霊ガレがそうだ。

「もともと王冠についてた宝石を、黒百合の女神が目覚めさせてアキラに与えた」

「へえ。王冠……。えっ、王冠?」

「滅びた旧王国の王冠よ。アキラは他の神々とも渡り合ってきたわ」

「なるほどな。アキラが神々の石の器なんだな」

 彼自身が成功例。だから自信を持って成功例があると言い切ってたのか。

 以前、『魔法の力の源は、人によって違う』とアキラは話していた。いろいろな神がいるのであれば、浄化の力を持った神も、いるのではないか。

 王冠についているような、大きな宝石でなくとも。

 浄化の方法はまだわからないが、女神の力を扱える別のやり方はあるかもしれない。

 まずは、黒百合の女神に相談だ。

 興味を持ってもらえるかどうか。

「じゃ、雨が止むまでゆっくりしようか」




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