第三十二話 魔物退治
ラグネルの分の結婚指輪がないことに、翌朝気づく。カルコスで、父の師匠・ダイゴに作ってもらったのは、ガーネットの分だけだった。旅行中のことだったし、本人たちがあまり気にしていなかった。
結婚式には必要だろうということで、リリーがちょっと銀採りに山行ってくる、と家を開けることになった。
その間に、森に出る魔物を退治してくれないか、と村人から依頼された。
もともと、森には狼だの熊だのが出るが、人間を襲う魔物も山から降りてくるらしい。
熊撃ちや木こりは武器を扱えるため、一般人が襲われないように見つけ次第駆除するのだという。ラグネルは斧を使えるので、木こりたちと一緒に森に入ることになった。
大きいものから小さなものまで、多種多様の魔物たちが現れる。
普通の動物たちと同じように、小さい魔物は人の気配を感じると、逃げ出していく。襲ってくるのは、腹が減っていたり、子育て中で気が立っている魔物だけらしい。
弱い魔物は人が近づく気配で逃げるため、移動中は、必ず複数人で行動する。大きめの鈴を身に付け、音を建てるようにする。
効率よく魔物退治ができるように、ガーネットも一緒に、ゴーレムで見回りを始めた。人に攻撃する個体と遭遇した場合、ラグネルと木こりたちで、一斉攻撃をする。
大物を仕留める作戦が功を奏し、ラウネルの村周辺から魔物は減ったようだ。
剣闘士を辞めて、どうやって稼ごうかと思っていたラグネルだったが、意外にも適職が見つかった。ガーネットが操るゴーレムは、大木や岩も運べるし、森の中で怪我人が出ても、速やかに村に運べるようになった。
毎日、仲間たちと木を切り、魔物が出れば戦う。
日暮れに自宅に戻れば、アキラが食事を作って待っていて、家族で夕食を取る。水浴びをして、ガーネットと一緒のベッドで休む。
畑作りやパン作りは、リリーの友達のトレニアが教えてくれる。釣りは近所の村人が教えてくれた。黒百合の女神は、ドールハウスの中で寝ていて、基本的に何もしない。
剣闘士と違い、毎日、死ぬ心配はしなくていい。平穏で、穏やかな暮らし。ずっと望んでいたものだ。
ずっとこのままならいいのに。




