外伝②
再会から数日が過ぎ、私はなんとか現実世界に適応し、社会復帰を果たした。朝の通勤電車に揺られながら、私はオフィスへ向かう。周囲の人々の表情がどこか生き生きとして見えるのは、私自身が少しずつ前向きになれているからかもしれない。
オフィスに到着すると、いつものデスクに座り、パソコンの電源を入れた。書類の整理やメールのチェックを始めると、周囲の雑音が心地よいリズムとして感じられる。忙しさに追われながらも、私は確かに仕事に集中していた。
突然、デスクにある電話が鳴った。電話の向こうには、昴の声が響いていた。彼は自分の立ち上げた会社で働いており、私たちの再会後も頻繁に連絡を取ってくれている。
休憩時間、スマホが鳴った。電話の向こうには、昴の声が響いていた。彼は自分の立ち上げた会社で働いており、私たちの再会後も頻繁に連絡を取ってくれている。
「もしもし、瑠那です。」
「昴です、元気にしていましたか?」
「うん、元気だよ。昴さんは?」
「此方も元気に過ごしています。しかし、日々の労働に追われるだけでは、心身ともに疲弊することは避けられません。そこで、今晩は私と共にディナーを共にしませんか?貴女の笑顔を見ながら、美味なる食事を共に堪能し、互いの疲れを癒すひとときを持ちたいと思います。貴女の微笑みこそ、私にとっての至福なのですから。」
――バルらしい誘い方。
「ありがとう、昴さん。是非、行かせていただきます。」
「では、仕事が終わったら迎えに行きますね。」
電話を切り、休憩時間が終わると、デスクに戻った。昴との夕食が待ち遠しくて、自然と頬が緩んでしまうのを感じた。今は仕事に集中しようと心を決め、デスクに並べた書類に目を通しながら、タイピングの音がオフィスに響き渡った。
仕事が終わり、会社のエントランスへ向かうと、女性たちがひそひそと話しているのが耳に入った。彼女たちの視線は一人の男性に向けられていた。
「えー、ちょっとイケメンじゃない?誰か待ってるのかな?」
「声かけてみる?」
その男性は、間違いなく昴だった。スーツ姿で立っている彼は、周囲の注目を集めるほどの存在感を放っていた。彼の端正な顔立ちと落ち着いた雰囲気は、まるで雑誌のモデルのようで、自然と人々の視線を引き寄せていた。
昴の姿を見た瞬間、私は心臓が一瞬跳ねるような感覚を覚えた。彼の視線が私に気づくと、柔らかな笑みがその顔に広がった。昴は私に向かって一歩踏み出し、穏やかに手を差し伸べた。
「今日も一日お疲れ様です、瑠那。迎えに来ましたよ。」
「って、今は現代だからエスコートはダメだよ!」
私は彼の手を取りながら、少し照れくさそうに言った。
「ははっ、でも瑠那は異世界から帰ったばかりでしょう?」
その言葉に、私は思わず笑ってしまった。彼の優しさと気遣いが、どれほど私を救ってくれるのかを改めて感じた。周囲の女性たちが羨望の眼差しを向ける中、私たちは一緒に歩き始めた。周囲の女性たちの視線を感じながらも、彼と共にエントランスを後にした。
昴の車に乗り込むと、彼はエンジンをかけ、静かに車を発進させた。都会の喧騒を抜け出し、私たちは夜景が美しい場所へと向かっていた。窓の外には、煌びやかなビルの明かりが広がり、まるで宝石のように輝いている。
「どこに連れて行ってくれるの?」
私は彼の横顔を見つめながら尋ねた。
「特別な場所です。瑠那に気に入ってもらえるといいのですが。」
彼の声には、ほんの少しの期待と緊張が混じっていた。しばらく車を走らせると、私たちは丘の上にある、夜景が一望できるレストランに到着した。
昴は車を停め、ドアを開けて私をエスコートしてくれた。彼の手を借りて車から降りると、冷たい夜風が心地よく、街の光がまるで星空のように広がっていた。
「ここ、すごく綺麗…。」
私は息を呑んでその景色を見つめた。
「瑠那に見せたかったんです。今夜は特別ですから。」
――ん?特別??
私たちはレストランの中へと足を踏み入れた。中は温かい照明で包まれ、落ち着いた雰囲気が漂っていた。窓際の特等席に案内されると、私は再びその美しい夜景に見惚れた。
「素敵な場所。初めて来るよ…。」
「瑠那が喜んでくれて嬉しいです。」
昴は私の顔を見つめながら微笑んだ。その優しい笑顔に、私の胸は温かく満たされるのを感じた。ウェイターがワインを注ぎ、グラスを手に取ると、昴は私に視線を合わせながらグラスを軽く上げた。
「乾杯、瑠那。」
「乾杯、昴さん。」
私たちは静かにグラスを合わせた。その音が心地よく響き、ワインの香りが一瞬で広がった。昴の目は真剣で、いつも以上に優しい光を宿していた。その視線に、私は少し照れてしまった。
「実は、瑠那に伝えたいことがあるんです。」
「何?」
私はワインを一口飲みながら尋ねた。
昴は深呼吸し、一瞬だけ目を閉じた後、再び私を見つめた。
「瑠那、私はあなたもご存知の通り、非常に独占欲が強い人間です。ですから、あなたを他の誰にも渡したくない。これからもずっと一緒に生きていきたいのです。瑠那、結婚を前提にお付き合いしていただけませんか?」
その言葉に、私は感動と喜びで胸がいっぱいになり、涙がこぼれそうになった。
「本当に…私でいいの?こんな…なんの魅力もないのに…。」
昴は優しく微笑んだ。
「瑠那、あなたは私にとって唯一無二の存在です。あなたのすべてが私にとっての魅力ですから。何も心配する必要はありません。私にとって、他の誰もあなたの代わりにはなれませんよ。」
「昴さん…。」
「それから、今まで通り、バルと呼んでくれませんか?壁を感じて悲しいです。」
「わかった、バル。ありがとう。これからもずっと一緒にいようね。」
その後、私たちは美味しい料理を楽しみながら、穏やかな時間を過ごした。昴…いや、バルは、終始優しい笑顔を絶やさず、私の話に耳を傾けてくれた。窓の外に広がる夜景がロマンチックな雰囲気を醸し出し、私たちの心をさらに温かくした。
レストランを出て、車へ向かう途中、バルが突然私を抱きしめた。彼の温もりと香りが一気に私を包み込み、心臓が高鳴った。
「すみません、やっぱり。付き合う…は無かったことにしていただけませんか?」
彼の声が震えているのを感じて、私も緊張が走った。
「え?」
バルは私の目を真剣に見つめて言った。その瞳には深い愛情と決意が宿っていた。
「結婚してください。」
「えっ!?えぇ!?結婚?えっと…それは…」
彼の言葉に、心臓がドキドキと激しく鳴り、頭の中が真っ白になった。バルはそのまま微笑んで私を見つめていた。その微笑みが、私の混乱を静め、少しずつ心を落ち着かせる。
「瑠那、あなたは私にとって特別な存在です。あなたがいなければ、私の人生は色褪せてしまいます。」
バルの言葉に、私は自分が本当にそんな価値があるのかと疑問を抱いた。彼の手が私の頬に触れ、温かさが伝わってきた。
「でも、私は…そんなに特別じゃないし、ふさわしくないかも…」
私は視線を逸らし、冷たい夜風に包まれる感覚に身を震わせた。バルは私の肩を優しく抱き寄せ、彼の体温が伝わってくる。
「ここは冷えますね。車に戻りましょう。」
彼は私の手を引いて駐車場に向かった。夜空に浮かぶ星が、私たちの足元を淡く照らしていた。車のドアを開け、私がシートに座ると、バルはそっとブランケットをかけてくれた。その細やかな気遣いが、私の心をさらに温かく包み込んだ。
「私は、異世界での記憶を持ったまま生まれ、赤子の時から瑠那を思っていました。そのせいか、瑠那に対して酷く歪んだ執着心を持っています。」
バルの言葉は静かでありながら、深い感情が込められていた。彼の眼差しが真っ直ぐに私を見つめ、その真剣さが胸に響いた。私は息を呑み、その目を見返した。
「バル…。」
「瑠那、アナタと過ごせる時間を1分1秒と無駄にしたくない。私の人生全て、今この瞬間も瑠那のために生きています。会社だって、アナタを探すためだけに立ち上げたようなものですからね。」
彼の言葉に、私は少し驚き、笑みを浮かべた。
「これは…うんっていうまで、言葉攻めされるやつだね?」
バルは一瞬驚いた後、思わず笑ってしまった。
「…くっ、はははっ!それを言ってしまうのですか?」
「だって、あってるでしょ?何年夫婦してると思ってるの?」
彼は微笑みを浮かべながら頷いた。
「えぇ、あっていますとも。アナタが頷くまで永遠と続けるつもりです。」
その言葉に、私は胸が温かくなるのを感じた。彼の愛情がどれほど深いかを改めて実感し、その温かさに包まれながら、心の底から幸せを感じた。
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