男たちの秘め事
ルナリオン視点
王子ルナリオンは執務室で、背筋を伸ばして座っていた。王位の継承者として、彼の前には新たな責任と期待が山積みされていた。だが、その心の奥には、妹であるルナティアナのことが常にあった。
執務室の大きな窓から差し込む陽光が、彼の黄金の髪を輝かせていた。彼の鋭い眼差しは未来を見据えながらも、心には一つの疑念があった。
「あの二人はどうしているだろうか…」
ルナリオンは、心の中でバルサザールとティアナのことを思い浮かべた。彼らが共に新たな領地での生活を始めると聞いて、彼は安堵と共に寂しさを感じていた。だが、その表情には一切の動揺を見せず、国を治める者としての冷静さを保っていた。
その時、ドアをノックする音が響いた。ルナリオンが「どうぞ」と答えると、転生の乙女マイがやってきた。
「ちゃんとできてるか不安だけど、リヴィウスルート終わらせてきました。」
「ありがとう、マイ。」
彼はマイを抱きしめた。彼女の心臓の鼓動が高鳴っているのが感じられた。その音が、彼の耳に鮮明に届いた。
そして、そっと口づけを交わした。
「無理をさせてごめん。」
「ううん、いいよ。その代わり、早く私のことも好きになってね?」
「うん、生涯マイだけを愛することを誓うよ。大丈夫、きっと愛せるから。」
――僕は悪い子だ。宰相とルナティアナのために、転生の乙女の心を弄んでいる。でも、これが二人のためになるのなら。ルナティアナと僕は、どう頑張っても添い遂げることができない。それならせめて、ルナティアナが幸せに笑って暮らせる環境を作ってあげたかった。エヴァレーン王国にいては、勢力バランスの問題に巻き込まれ、また大変な目に遭うに決まっている。
ルナリオンは、マイの温もりを感じながら、彼女に対する偽りの愛を心の中で誓った。それが妹の幸せにつながるのなら、どんな罪でも背負う覚悟でいた。
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遡ること宿屋にて
マイと初めて宿屋で出会った日、彼女は突然謎の呪文を呟いた。「コードNY****リオ」。その言葉を聞いた瞬間、ルナティアナに抱いていた感情が、目の前のマイにも向けられ始めた。
「その能力…良いね。」
僕は微笑みながら言うと、彼女は目を見開いて驚いていた。
「どうして…。」
「ねぇ、アナタは僕狙いなの?」
彼女は恥ずかしそうにコクリと頷いた。内心、ラッキーだと思った。僕の計画を実行するチャンスが巡って来たのだから。
「じゃあ、取引しない?」
僕が持ち掛けた取引は、転生の乙女が進むべきルートを僕に決めさせてほしいということだった。代わりに僕はマイと結婚し、生涯愛することを誓った。マイは取引に応じてくれた。
彼女に選ばれた人はずっとマイを好きでいるらしいという曖昧な予測に過ぎなかったけど、この感情が永遠のものとなるなら、ルナティアナにとって一番厄介そうな男のルートに進ませるべきだと思った。
そうして、僕とマイは数日間宿屋で過ごし、彼女の望む形で接した。迎えに来たミハエルの馬車に二人で乗り込み、マイに頼んでミハエルにもコードを使ってもらった。ミハエルは両目から大粒の涙をポロポロと流した。
「好き…だったのに…。」
「うん、知っているよ。ミハエルさんはルナティアナのこと、ずっと覚えてましたよね。」
「…はい。」
「協力してほしいことがあるんです。」
そうして僕はミハエル・セインタール公爵にも協力を得た。転生者ルナティアナのせいでストーリーが狂ってしまっているので、これは仕方のないことだった。王宮に戻ると、すぐにルナティアナがリヴィウスに攫われたという知らせが入った。ここで僕はマイをリヴィウスルートに進ませることに決めた。
ラーカンとウルスウドラにも協力を要請したが、協力してくれたのはラーカンだけだった。ウルスウドラはもし本物のルナティアナが戻って来た時のために、どうしても側にいたいとのことだった。マイにラーカンにもコードを使ってもらった。ラーカンも泣いていたが、不思議とモヤモヤした気持ちが全て晴れたような心地だそうだ。僕もそうだった。
そして、僕たちは計画を実行に移した。バルサザールを悪役に仕立て上げ、断罪の上で国外追放とすることに成功した。エヴァレーンへの未練を断ち切らせたかった。生涯ルナティアナだけを愛せるように。今のままでは、彼はルナティアナよりも国を選んでしまう時があるだろうから。こうして僕は、二人の憂いを排除することに成功した。
これでルナティアナは心から幸せになれるはずだ。バルサザールが彼女の全てを支え、守り抜く存在となるだろう。僕は、自分の心に抱いた複雑な感情を整理しつつ、彼女の未来が明るいものであることを願い続ける。
ルナティアナの笑顔が、これからの新たな生活の中で輝き続けることを信じて。
なんか報われない男たちの後日談みたいなの書いちゃってすみません…。外伝も書きますので…。引き続きよろしくお願いします。




