53.転生の乙女
翌朝、それぞれがストーリー通りの配置についた。 すると、町の中心に突然光の柱が立ち上った。 その光は眩しく、まるで天からの使者が降り立つかのような神々しさを放っていた。
「何事だ!?」
ラーカンが驚きの声を上げ、剣を構えた。
ドラは冷静な顔つきでその光景を見つめながら、「これは… 予想外の展開だな」と呟いた。
宿屋で働くリオもその光景に驚き、手に持っていたタオルを落としながら呟いた。
「まさか… こんな形で始まるなんて。」
私もその光に目を奪われ、バルサザールの腕を掴んだ。
「バル…。」
バルサザールは冷静な表情を崩さず、「どうやら、アナタの予言通りなようですね。」と言い、光の柱を見つめた。
その柱は天から地へと真っ直ぐに伸び、町全体を照らし出していた。 光が次第に消えると、そこに現れたのは茶色髪の平凡そうな女性だった。 彼女は一瞬戸惑いの表情を見せたが、すぐに意識を取り戻し、しっかりと地に足をつけた。
私とバルサザールは慎重に距離を保ちながら、彼女の動きを追った。 転生してきたばかりの彼女は周囲を見渡し、何かを探している様子だった。 その時、彼女の視線がリオのいる宿屋に向かった。 彼女の目が輝き、決意を固めたように歩き始める。
彼女が宿屋に向かう姿を、町の人々は興味津々に見守っていた。
私とバルサザールは、彼女の行動を一瞬も見逃さないようにしながら、彼女の後をつけた。 彼女はリオのいる宿屋の前で立ち止まり、深呼吸を一つしてから扉を開けた。 その瞬間、私たちは彼女の後ろから静かにその様子を観察した。 宿屋の中に入ると、彼女の視線はリオを探し、すぐに彼を見つけた。 驚きと興奮が彼女の表情に浮かび、私たちはその様子をしっかりと見届けていた。
「ここでリオを選択したってことは… リオかリヴィウスかミハエル確定かも。」
「ほぅ。そのように選択をして物語を進めるのですか?」
バルサザールが私に小声で問いかけた。
「うん。本と違ってゲームだから、その都度展開が変わるの。」
「ふむ、なるほど?とても新しい発想ですね。」
彼は感心したように呟きながら、彼女の動きをじっと見つめていた。
「でも、ここでリオを選択したからラーカンとドラが現れなくなっちゃうの。だから…。」
「おや、それは残念ですね。」
「残念?」
「ええ、あなたに注がれる過剰な注意の源を減少させる好機を逃したことは、少々遺憾です。 」
「バル、流石に難しすぎて何て言ってるかわからない。」
彼は冷静な表情を崩さずに微笑んだ。
「えぇ、理解させないためにわざと難解に話しました。」
「でも、これからしばらくは宿屋で働いてリオと仲を深めてもらわなくちゃいけないし、その間にラーカンとドラにも状況を報告しないとね。」
私たちは宿屋を後にし、ドラとラーカンに声をかけた。 彼らが合流すると、私たちは食事ができる場所へと移動した。 町の中心にある賑やかな広場を抜け、古風な街並みが続く小道を進んでいく。 途中で見つけた小さなレストランに入り、テーブルに着くと、周囲の喧騒から少し離れて、穏やかな時間が流れ始めた。
「ここならゆっくり話せるね。」
「そうですね。お疲れ様です、皆さん。」
バルサザールも静かに席に座り、リラックスした表情を見せた。
「とりあえず、ラーカンとドラは物語の中から外れちゃったから自由行動になります。」それを聞いたラーカンとドラはホッとした様子を見せた。
「良かった。」
ラーカンが安堵の声を漏らす。
「うーん、ドラが選ばれると思ってたんだけどなぁ。ヒロインは誰を選ぶんだろ?」
「何故、俺?」
ドラが不思議そうに尋ねる。
「ドラは私の世界では人気ナンバーワンだから。」
「… そうなのか。」
ドラは驚いた表情を浮かべる。
「うん!」
「さて、私としても非常に残念ですが、長い間城をあけるわけにもいきませんので、城へ帰ろうと思います。それでよろしいですか? ティアナ。」
バルサザールが真剣な表情で尋ねる。
「うん。」
私は少し考え込むように視線を逸らした。
――私、ラーカンとドラが選ばれなかったことに安心しちゃった…。選ばれるべきだったのに…。
「ん? 何か?」
バルサザールが鋭い視線を向ける。
「え? … いや、なんでもないよ。」
――こんなことバルに知られたらダメだよね。
「いえいえ、絶対何かあるでしょう?正直に言いなさい?」
「ほんとに何もないってば!!」
「自白剤でも盛りましょうか?」
バルサザールが冗談めかして言ったが、その目は冗談ではない真剣さを帯びていた。
「うっ、わかった、言うけど… バル怒らないでね?」
私は彼の目を見て少し躊躇いながら言った。
「えぇ。」
彼は穏やかに頷いた。
「ラーカンとドラがね、ヒロインに選ばれなかったこと、ちょっと安心しちゃったの…。」
私の言葉にラーカンとドラは顔を見合せた。
「どういう意味ですか?」ラーカンが少し戸惑いながら尋ねた。
「ヒロインに選ばれると、多分強制的にヒロインを愛してしまうようになってるはずだから、今後一緒にいられないなって思うと寂しくなっちゃったの。私、贅沢だよね。 いつの間にか二人のこと…。」
ラーカンとドラは互いに見つめ合い、その後、私に向かって優しく微笑んだ。
「そんなことないですよ、王女殿下。そう思って下さり、ありがとうございます。」 ラーカンが穏やかに言った。
「王女殿下。俺も内心ホッとしたんだ。ミハエルのようにはなりたくないんだ。」
ドラも言葉を添えた。
バルサザールはその言葉を聞きながら、微妙に表情を引き締め手元にある水を飲んだ。
「分かりました。それなら良かったです。 みなで協力して、これからも共に歩んでいきましょう。」
バルサザールの声はいつも通り落ち着いていたが、その眼差しはどこか鋭く、内心の動揺を隠すことはできなかった。
私はそんなバルサザールの様子に少し戸惑いながらも、彼の言葉に頷いた。
「うん、そうしよう。これからも一緒に。」
そして、私たちは王宮へと戻った。 馬車の中で静かな時間が流れ、誰もがそれぞれの思いに耽っていた。 王宮の門が見えると、私たちは少し緊張しながらも、安堵の気持ちでいっぱいだった。
私たちが王宮に戻り、馬車から降りた後、私はバルサザールにそっと尋ねた。
「バルの部屋、行ってもいい?」
彼は一瞬だけ表情を曇らせたが、すぐに微笑みを浮かべて答えた。
「…… えぇ、いいでしょう。」
バルサザールの部屋に向かう途中、彼の手が私の腰に軽く触れ、その手の温もりが伝わってきた。 部屋に入ると、彼はドアを静かに閉め、私を抱き寄せた。 その瞳には深い情熱が宿っていて、彼の手が私の背中を強く引き寄せると、私たちの唇が激しく重なった。
彼のキスは熱く、押し寄せるような欲望が伝わってきた。 私はその情熱に応えるように、彼の首に腕を回し、さらに深く抱きしめた。 彼の手が私の背中を撫で下ろし、その触れ方が私の全身を震わせた。
「バル…」
私が彼の名を囁くと、彼はさらに強く私を抱きしめ、そのままベッドへと導いた。
「怒らない… と約束したはずが、アナタの言葉を聞いて嫉妬してしまいましたよ。」 バルサザールは低い声で呟き、その瞳には抑えきれない欲望が宿っていた。
彼の手が私の髪を優しく撫で、次に首筋をゆっくりと滑り降りる。 彼の触れ方が一層熱を帯びるのを感じ、私の心臓は早鐘のように打ち始めた。
「あ…やっぱり、そうだよね。ごめ…っんん…んっ」
彼は私の唇に強くキスをし、言葉を封じ込めた。 そのキスは情熱的で、まるで全ての感情をぶつけるかのようだった。
「これで、アナタの思考を他の誰に向ける余地など消し去ってしまいましょう。私の存在がアナタの全てを占めるように、余計な想いを排除して差し上げますよ。」
彼の言葉が終わると、再び私たちの唇が重なり、彼の手が私の背中を滑り、体全体が彼の熱に包まれた。 そして、私たちは一つになって夜を過ごした。
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