48.推しとの朝
※ルナティアナ視点に戻ります。
朝日がカーテンの隙間から差し込み、部屋全体が柔らかい金色の光に包まれていた。ベッドの上で目を覚ますと、シルクのシーツが肌に心地よく触れているのを感じた。窓の外では小鳥たちが楽しげにさえずり、静かな朝の訪れを告げていた。ふと隣を見れば、バルサザールが穏やかな顔で眠っているのが見え、その姿に安堵と幸福感が広がった。
――推しが無防備に隣で眠ってる!?写真が欲しいーーー!!!
バルってきっと、こんなにゆっくりしてる余裕とかない人だよね?常に国の為に頭を動かし続けてないといけないイメージ。でも、そこが良いんだよね。仕事してる時のバルって素敵だし。
私は心の中で叫びながら、そっと手を伸ばしてバルサザールの顔に触れた。彼の額に指を滑らせ、その穏やかな表情を愛おしく感じる。指先が彼の頬に触れると、ほんのりとした温かさが伝わってきた。彼の唇に触れると、微かに動くのが可愛らしくて、思わず微笑んでしまう。
「ん……今、何時でしょう?」
バルサザールは目を閉じたまま、まだ寝足りなさそうな声で時間を聞いてきた。私はそっと彼の髪を撫でながら答えた。
「朝食の時間になるかも。」
彼の髪を撫でる指先に、微かに感じる彼の温もりが心地よい。彼は少しだけ顔をしかめ、再び寝返りを打とうとした。
「…起きなければ…流石に1日休んでおりますから、王に怪しまれる。」
「休みとってたんだ。」
バルサザールはゆっくりと目を開け、少し困ったような笑みを浮かべた。
「当たり前です。でないと、アナタとの時間に邪魔が入りますから…。」
彼は起き上がり、ゆっくりと体を伸ばして軽くあくびをした。その姿は普段の冷静で鋭い宰相とは違い、どこかリラックスして見えた。そして、床に散らばる服を一つ一つ拾い始めた。私は彼の背中を見つめながら、彼がシャツを拾い上げ、それを広げて丁寧に着る姿に見とれていた。彼の手がボタンを一つ一つ留めていく様子は、またもや普段の冷徹な姿からは想像もつかなくて、思わず心がときめいてしまう。
――推しの…生着替え…。最高ですっ!!
バルサザールはシャツのボタンを留め終えると、ふとこちらに視線を向けた。
「あぁ、それと、今日こそは選んだ侍女に手紙を書きなさい。アナタが選んだ令嬢の身元の調査が終わりましたので、問題なく彼女を侍女として迎え入れられます。」
彼はゆっくりとネクタイを結びながら、まるで何気ない日常の一部であるかのように淡々と話していた。
「はーい。」
私は軽く返事をしながら、まだベッドの中にいた。
「アナタも早く支度なさい。」
「バル、手伝って?」
私は彼をじっと見つめながら、わざと甘えるような声で頼んだ。
「この私に手伝えと?」
彼は眉を上げ、軽く笑みを浮かべながらこちらを見下ろした。
「いや、あ、ごめんね!ちょっと甘えてみたくなって!支度するね!」
私は慌ててベッドから起き上がり、笑顔を浮かべながら言った。
バルサザールは怪しい笑みを浮かべて、ゆっくりと近づいてきて優しく私の顎を持ち上げた。
「良いでしょう。昨日は1日中アナタを堪能させていただきましたから、それくらいお安い御用ですよ。」
「え!?なんか恐いんだけど!!」
「先ずはドレスですね。」
彼は軽やかにクローゼットを開け、私の好きなドレスを選び出した。彼は私のドレスを丁寧に広げ、その柔らかい素材を手で感じながら、ゆっくりと私に近づいた。私は軽く両腕を広げ、彼の手の動きに従った。バルサザールは慎重にドレスの裾を持ち上げ、私の頭からそっと通してくれた。彼の指先が私の肩に触れるたびに、心がくすぐったいような感覚に包まれる。
「もう少し締めますね。」彼はリボンを軽く引っ張り、私の腰にぴったりとフィットさせた。
「ほんとに手伝ってくれるなんて…。ありがとう。」
「どういたしまして。しかし、そろそろ新しいドレスをお仕立てなさい。王族がいつまでも同じドレスを纏っていては、他国に金のない国だと思われてしまいます。財力の象徴としても、常に新しい装いを心がけることが重要ですよ。」
――この小言も大好きです!!
私は鏡の前に座り、バルサザールがメイク道具を手に取るのを見た。彼は私の顔にメイクを施し始めた。
「さあ、目を閉じてください。」
彼の手はとても優しく、まるで絵を描くように細やかな動きで私の顔を仕上げていった。
「これでどうでしょう?」
彼は最後に口紅を塗り終え、鏡に映る私を見ながら微笑んだ。
「ほんとに、なんでこんなことまでできるの!?」
バルサザールは軽く笑い、髪の毛をセットしながら話し始めた。
「幼い頃…といっても、両親が早くに亡くなって、手持ち無沙汰になっていた頃、親切な子爵家に声をかけていただいてね。最初は馬小屋の掃除を、その次に屋敷の掃除を任されました。ある日突然、その屋敷で風邪が流行し、私だけが健康だったので、全ての世話をして回る日が続いたんです。その時、才能を見出していただき、早くから執事としての教育を受けさせていただきました。その時に身につけたスキルの1つです。」
彼の手が優雅に動き、私の髪を整えていく。彼の指先が私の髪に触れるたびに、心地よい感覚が広がる。
「それにしても、バルは本当に多才だね。」
「ありがとうございます。すべては必要に迫られて学んだことです。でも、それが今こうしてあなたに役立っているのなら、それ以上の喜びはありません。」
バルサザールは最後に髪飾りをつけてセットを仕上げた。彼の手際の良さに感心しながら、私は鏡に映る自分の姿に満足した。
「それでは、食堂へ向かいましょうか。」
「うん。」
バルサザールは優雅に手を差し出し、私はその手を取り立ち上がった。彼は私をエスコートしながら、ゆっくりと部屋を出た。廊下に出ると、ラーカンとドラが会釈し、後ろについて歩き始めた。
食堂のドアの前に着くと、バルサザールは一瞬立ち止まり、私の顔を見つめて微笑んだ。
「王女殿下、くれぐれも素を出さぬよう、気を引き締めてください?」
「えぇ、わかってるわ。」
私は深呼吸をし、王女らしい優雅な姿勢と表情を整えた。バルサザールがドアを開けると、私は堂々とした歩みで食堂へ入った。彼は私を椅子に座らせ、隣の席に腰を下ろした。
食堂の中央には、父である王が既に着席しており、私たちを待っていた。
「おはよう、ティアナ。バルサザールも一緒か、良いことだ。」
父は微笑みながら私たちに気軽に挨拶をした。その表情には、バルサザールと私が共にいることに対する満足感が滲んでいた。バルサザールも微笑みを返し、父に軽く頭を下げた。
「おはようございます、陛下。今日も素晴らしい朝です。」
「本当に。二人とも揃っているのを見ると、安心するよ。」
父は満足そうに頷き、私たちに向かって温かい眼差しを向けた。バルサザールと父の間に流れる和やかな雰囲気が、私の心をほっとさせた。
「さあ、朝食をいただこう。ティアナ、バルサザール、お前たちもどうぞ。」
父の言葉に従い、私たちは朝食を取り始めた。テーブルの上には新鮮な果物や焼きたてのパン、芳醇な香りのスープが並んでいた。バルサザールは私の好みをよく知っているようで、適切なタイミングで食事を勧めてくれた。
「陛下、最近の国境付近の情勢について少しお話ししたいことがあります。」バルサザールは、慎重に言葉を選びながら話し始めた。
「おお、何か問題でもあるのか?」
父は興味深そうにバルサザールを見つめた。
「はい。隣国との貿易協定について、少々見直しが必要かと考えております。特に、関税の引き上げに関する部分で、我が国の商人たちから多くの不満が寄せられております。」
「関税の引き上げか…。確かに、それは重要な問題だな。」
父は眉をひそめ、真剣な表情を浮かべた。
「そうです。現在の状況では、我が国の商人たちが利益を上げるのが難しくなっています。彼らの声に耳を傾け、適切な対策を講じる必要があります。」
父はしばらく考え込み、やがて頷いた。
「分かった。詳細は後ほどの会議で話し合うとしよう。宰相、お前の意見を聞けて良かった。」
「ありがとうございます、陛下。会議の場で詳細な報告をさせていただきます。」
父は再び微笑みを浮かべ、バルサザールに向かって感謝の意を示した。
「お前のような優れた人材がいてくれて助かるよ。」
バルサザールも微笑み返し、軽く頭を下げた。
「陛下のお力添えがあればこそ、私たちはこの国をより良くするために働くことができます。」
――宰相モードのバルは今日もかっこいい!!
その後、私たちは再び朝食に集中し、温かな家族の時間を楽しんだ。
読んで下さってありがとうございます!
お手数かけますが、イイネやブクマをいただけたら幸いです。モチベに繋がります( *´艸`)




