45.王女の無謀な行動
※バルサザール視点
数日後、スティグルからの報告で、ウルスウドラという者が王女の従者になったと知らされた。私はすぐに彼の身元を調査し、驚くべき事実を知ることとなった。ウルスウドラは裏社会の主導者であり、通常ならば非常に危険な人物だ。しかし、彼がルナティアナ王女に溺愛していることを確認し、危害を加える心配はないと判断した。
それにもかかわらず、私は内心苛立ちを感じていた。
この苛立ちを抑えるため、私は王にルナティアナ王女の婚姻について相談を持ちかけた。
「そろそろ王女殿下の婚姻について決めた方が良いのではないかと存じます。」
王は私の提案に耳を傾け、慎重に話を進めることとなった。念のため、自身の出生した可能性のあるシュエット王国を進言した。そうすれば、後でどうにかすることもできると考えたからだ。
しかし、その矢先にさらに深刻な報告を受けることになった。それはミハエル・セインタールについてだった。セインタール公爵の子息であるミハエルが王女を異常に溺愛しているということだった。次から次へと男たちの影が彼女に近づくことで、私の心は乱れた。
私は深く息をつき、スティグルを呼び出して話を始めた。
「スティグル、ミハエルから王女に関する記憶を消し去る薬を作ることは可能でしょうか?」
スティグルは一瞬ためらった後、静かに答えた。
「…可能ではあります。」
「何故です?」
私は彼の反応に興味を引かれた。
スティグルは目を伏せ、少し躊躇しながら言葉を選んだ。
「…それは…」
「やはり…貴方も王女殿下に恋慕を寄せているのでしょう?」
「いえ、そんなことは…」
「フェニルエチルアミンを抑制する薬を服用していたのを目にしたのですが?」
彼は再び目を伏せた。
「…申し訳ございません。」
私は彼の反応に軽く頷き、少し冷たい声で続けた。
「まぁ、良いでしょう。ミハエルの件、頼めますか?」
「はい。それと、王女殿下から強力な眠り薬を注文されました。」
――眠り薬?シュエットに殴り込みにでも行く気でしょうか。
「わかりました。ですが、剣に塗り込めるものを作って差し上げると良いでしょう。」
スティグルは私の指示に従い、頭を下げた。
「畏まりました。」
彼が去った後、私は書類に目を戻しながら深く考え込んだ。王女の周りに集まる男たちの影が、私の心をざわつかせ続けていた。
彼女を守るために、これからも全力を尽くすことを誓った。しかし、その中には自分自身の心の揺らぎも含まれていることを、私は否定できなかった。
王女殿下の行動と周囲の男たちの動きに対する警戒を怠ることなく、彼女を見守り続けることが、私にとっての最優先事項である。私の感情がどうであれ、彼女の安全と幸せを守ることが私の使命だとさえ感じていた。
数日後、スティグルが再び執務室に駆け込んできた。
「報告に参りました、バルサザール様。セインタール公爵の子息、ミハエルが軍を率いてシュエットへ進軍しているという話を耳にしました。そして、王女殿下がそれを止めるためにラーカンとウルスウドラを連れて馬に乗り駆けていったことも…」
「やはりですか。」私はため息をつきながら応えた。「私はこれから追いかけます。外交という形をとります。」
スティグルは驚いた表情を浮かべた。「驚かれないのですか?」
「まぁ、想定内です。ですが、急ぐとしましょう。」
私はすぐに準備を整え、予め用意していた荷物を馬に積み込んだ。そして、シュエットへ向かう道を急いだ。彼女の安全を確保するために、今は一刻の猶予もない。
馬を走らせる間、頭の中には様々な考えが巡った。王女殿下がこのような行動を取ることは予測していたが、やはり心のどこかで不安が消えない。彼女の行動がどのような影響を及ぼすのか、そして私がどのように対応すべきかを考え続けた。
数時間の疾走の後、私はついにシュエットへの道中にいる彼女たちの姿を見つけた。彼女は真剣な表情でラーカンとウルスウドラと共に進んでいた。
数時間の疾走の後、セインタール公爵家の軍とすれ違った。軍の一人を呼び止めて何が起こったのか問うと、「王女殿下の命でエヴァレーンに帰国するよう指示が出ました。そして、王女殿下はシュエットへ向かわれました」と話してくれた。
シュエットに入ると、道端で眠りこけるシュエット国の兵士たちがいた。王女が通った道はとてもわかりやすかった。約3日かけて、ついにシュエット国の城内にまで足を踏み入れ、玉座のある部屋へ近づくと、内部から声が聞こえた。
「我が国には、バルサザールという名の宰相がいます。その方があなたの息子である可能性があるのです。」
――あの馬鹿王女は何を言っている!?
「確認するためにも、彼をここに呼びましょう。」
「その提案、受け入れよう。」という相手側の声が微かに耳に入った。
私は走り、急いで扉を開いた。乱れた髪をかき上げて、肩で息をしながら「その必要はありませんよ」と言った。王の顔には驚愕の色が浮かび、彼は信じられないものを見るように私を見つめた。あぁ、やはり、私は…ここの王子か。しかし、そんなことはどうでもよかった。やつれた姿の彼女が目に入り、怒りがこみ上げた。
「まさか…」
王は言葉を失い、しばらくの間その場に立ち尽くしていた。
王は震える声で答えた。
「バルサザール…。」
私はそんな王の言葉を無視し、私は王女に向き直り頬を叩いた。
「どれだけ心配をかければ気が済むのです!!一人でこんな…!!こんな無謀なことをなさって…。」
――抑えきれなかった。もう既に私の中で目の前にいる女性は王女ではなく、守るべき存在となっていた。
彼女は目を伏せていた。
「バルサザール…」
私は彼女を見下ろしながら、深く息をついた。
「もう二度と、こんな無謀なことはしないでください。命を落としていたかと思うと…ゾッとします。」
「ごめん…なさい…。」
彼女の謝罪に、私は少し驚いた。
――そうです、反省なさい…。
私は彼女の肩に手を置いた。彼女に触れただけで顔が少しほころんでしまう。すぐに顔を引き締めて、シュエット国王の前に進んだ。
「陛下、我が国の王女がこのような無謀な行動を取ったこと、誠に申し訳ございません。全て私の不徳の致すところでございます。」
私は深々と頭を下げた。
王は私の謝罪に対して、手を上げて制止し、暖かい笑みを浮かべた。
「バルサザールよ、そのような謝罪は必要ない。私にとっては、謝罪よりも大事なことがある。」
私は顔を上げ、王の言葉に耳を傾けた。
「我が息子よ、そなたが無事であったことが何よりも嬉しいのだ。これまでの年月、そなたを失ったと思い、ずっと悲しみに暮れていた。だが、今こうして目の前にいる。それだけで十分だ。どうか、シュエット王国に戻り、王子として生きてほしい。」
正直、驚いてしまった。こうもあっさりと私を息子と認めるのか?
「陛下、私は…」
「待ってください!バルサザールを奪われたら、我が国は終わってしまいます!」
彼女の、その言葉が嬉しいと思ってしまった。私の存在価値をそこまで評価しているなんて…。
「王女殿下…?」
「バルサザールは私たちの国にとって、欠かせない存在です。彼の知恵と指導がなければ、私たちの国は混乱し、崩壊してしまうでしょう。だから、彼をここに留めることはできません。」
「ルナティアナ王女、あなたの言葉には一理ある。しかし、私としても息子をこの国に戻したいという気持ちがある。どうすればよいのか…。」
「陛下、バルサザールを第一王子として復活させ、私の婿に迎えるのはいかがでしょうか?」
――本当に何を言っている?そんなにも私と共にいたいと想ってくれるのですか?私は彼女を見つめてしまう。
「ティアナ、あなたは本気で言っているのですか?」
「ええ、本気よ。これなら、バルサザールはシュエット王国とエヴァレーン王国の両方にとって重要な存在になれる。そして、私たちの国同士の関係も強固になるわ。」
――最もらしいことを述べているが、私のことが欲しいとバレバレですよ?王女殿下。
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