37.公爵の罪
庭園には色とりどりの花々が咲き誇り、心地よい風が豊穣の香りを運んでいた。城内の広場には豪華なテーブルが並べられ、食事や飲み物が豊富に用意されていた。村の人々や貴族たちが集まり、笑顔で話し合う姿があちこちに見られた。豊穣を祝う式典が始まり、皆が幸せそうにしている光景が広がっていた。
私はバルサザールと共に壇上に立ち、心の中で一度深呼吸をしてから、優雅に言葉を紡ぎ始めた。
「皆様、本日はこのように盛大な式典にお集まりいただき、心から感謝申し上げます。私たちの国が豊かな実りを迎えることができたのも、皆様のおかげです。この素晴らしい豊穣を共に祝い、これからの繁栄を祈りましょう。」
その言葉に皆が歓声を上げ、拍手が広がった。私は一瞬、バルサザールの方に目を向けた。彼は礼服を着て、少し遅れて会場に到着した。その姿は威厳に満ち、乙女ゲームのスチルのようだった。
――バル…本当に素敵だな。
私は心の中でそう思い、見惚れるように彼を見つめた。
バルサザールは私に微笑みかけ、軽く頷いた。その表情には、私への深い信頼と愛情が感じられた。
式典が続く中、私は再びスピーチを続けた。
「これからも、私たちの国がさらに豊かで平和であることを願い、皆様と共に歩んでいきたいと思います。どうか、この素晴らしい豊穣を祝いながら、未来への希望を持ち続けてください。」
再び拍手が起こり、私は微笑みながら会場を見渡した。その時、セインタール公爵の姿が人混みの中に見えた。彼の姿を確認すると、バルサザールが私の隣で静かに指示を出した。
「速やかにセインタール公爵を捕縛せよ。」
周囲の兵士たちが迅速に動き出し、セインタール公爵を取り囲んだ。彼は驚いた表情を浮かべ、抵抗する暇もなく捕えられた。会場内が一瞬、ざわめきに包まれたが、私は冷静に対応した。
「皆様、ご安心ください。秩序は保たれています。これからも平和と繁栄のために努力を続けましょう。」
その言葉に再び歓声と拍手が広がり、私はバルサザールの方を見つめた。
式典が無事に終わり、私はバルサザールと共にセインタール公爵が捕縛されている部屋へ向かった。扉を開けると、そこにはドラに拘束されたセインタール公爵と、彼の息子であるミハエルがいた。
セインタール公爵は怒りに満ちた表情で叫んでいた。
「放せ!!私を誰だと思っている!!公爵だぞ!!」
バルサザールは冷静に歩み寄り、その叫び声を無視するかのように優雅に頭を下げた。
「えぇ、存じております。ですが、おかしなことに、ご子息の方から妙な話を伺いましてね?王はこの場に来られない…と。」
セインタール公爵の顔に一瞬の動揺が走ったが、すぐに取り繕うように冷静さを取り戻した。
「確かに王は毒を盛られて倒れられてしまい、この場に来ることはかないませんでした。しかし、代わりに王女が来られました。」
私は一歩前に出て、公爵に冷ややかな目で見つめた。
「セインタール公爵、あなたの行動には多くの疑問があります。何故、私たちが来ないと確信していたのですか?」
セインタール公爵は口を開けて反論しようとしたが、ミハエルが先に話し始めた。
「父上、もう隠しきれません。全てを話すべきです。」
セインタール公爵は一瞬、息子の方を睨みつけたが、やがて疲れたようにため息をついた。
「…平民如きが、この国の政治を執り行うなどあってはならん!!貴族こそ、崇高な存在であり、国を導くべき者なのだ!」
その言葉に、バルサザールは冷静な表情を崩さず、一歩前に出た。
「崇高であるがゆえに、国民を導く責務があるのです。ですが、あなたの行動は、その責務を果たすどころか、国を危機に陥れるものでした。」
セインタール公爵は口を開けて反論しようとしたが、言葉が出なかった。彼の顔には絶望の色が浮かび上がっていた。
ミハエルは再び口を開いた。
「父上、それは間違っています。貴族であろうと、平民であろうと、この国を守るためには皆が協力しなければならないのです。」
私は公爵に冷ややかな目で見つめた。
「セインタール公爵、あなたの行動には多くの疑問があります。貴族であるがゆえに、あなたには大きな責任があるのです。その責任を放棄し、国を混乱に陥れる行為は決して許されるものではありません。」
セインタール公爵は顔を歪めて叫んだ。
「なぜだ!!なぜ洗脳が解けている!?まさか、お前達、私の息子の洗脳もといたということか!?」
ミハエルは驚いた表情で父親に向き直り、「洗脳?父上、それはどういう意味ですか?」と問いかけた。
セインタール公爵は言葉に詰まり、苦々しい表情で口を閉ざした。彼の顔には明らかに焦りの色が浮かび上がっていた。
バルサザールは鋭い眼差しで公爵を見据えた。
「セインタール公爵、あなたが行った行為は明らかに違法であり、許されるものではありません。息子さんを洗脳するなど、どれだけの罪を重ねてきたか、今ここで全て明らかにしていただきましょう。」
セインタール公爵は再び口を開けようとしたが、言葉が出ないまま、ミハエルに向かって必死に訴えかけた。
「ミハエル、お前は私の息子だ。どうか、理解してくれ…!」
しかし、ミハエルは冷静な目で父親を見つめ、首を横に振った。
「父上、あなたが何をしたのかはわかりませんが、私は国の未来を守るために、真実を知る必要があります。」
セインタール公爵は激昂して叫んだ。
「私は何もしとらん!!こんなこと許されるはずがない!!公爵だぞ!!」
するとバルサザールが懐から白い薬のようなものを取り出し、冷ややかな笑みを浮かべた。
「こちらは、王女殿下が私に飲ませようとしていた自白剤でございます。とても強力な自白剤でして…。」
セインタール公爵は目を見開き、動揺した様子で叫んだ。
「な、なにをする気だ!!」
「いえ、何も?私はただ、ご注文の品を王女殿下にお渡ししようとしているだけでございます…。ですが、手が滑ってしまうこともあるでしょうね?」
そう言うと、バルサザールは素早くセインタール公爵の口を開けさせ、薬を放り込んだ。公爵は必死に抵抗しようとしたが、バルサザールの力強い手に抑え込まれ、薬を飲み込まざるを得なかった。
公爵の顔が一瞬歪み、次第に力が抜けていった。彼の目には恐怖と無力さが浮かび上がり、その場に崩れ落ちた。
バルサザールは冷静に彼を見下ろしながら、冷ややかな声で尋ねた。
「さて、アナタはどれほどの罪を犯してきましたか?」
セインタール公爵の顔が苦しげに歪んだが、次第にその表情が緩んでいき、口を開き始めた。
「私は…王を毒殺しようとし…そして、ミハエルを洗脳し…王女殿下を操り人形にしようと…」
私はその告白に胸が締め付けられるような思いを感じた。バルサザールは冷静にその言葉を聞き、ゆっくりと頷いた。
「それだけではありませんね。続けてください。」
「私は…国を混乱に陥れるために、多くの貴族を買収し…反乱を起こさせようと…そして、バルサザール、あなたをも…陥れようと…」
その告白に、私は驚きと怒りがこみ上げてきた。バルサザールは冷静な表情を崩さず、ただ黙って公爵の言葉を聞いていた。
「この国を…自分のものにするために、全てを犠牲にしようとした…」
その言葉が最後になると、セインタール公爵は力尽きたように頭を垂れた。
バルサザールは深く息を吸い、私に向かって静かに言った。「ティアナ、そしてミハエル様、これが彼の全てです。これから、この国を守るために、彼の罪を裁かねばなりません。」
ミハエルは父の告白を聞き、ショックで立ち尽くしていた。彼の顔には悲しみと混乱が混じり合っていた。
バルサザールはミハエルに向かって静かに言った。
「ミハエル様、あなたは公爵の後を継ぎ、新たなセインタール公爵として、これからも国を支えなさい。私がその手助けをいたしましょう。」
ミハエルは深く息を吸い、決意を込めて頷いた。
「はい。父の犯した罪を償い、この国を守るために尽力します。」
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