31.成功と皮肉
とうとうお茶会当日になった。
庭園はまるで夢の中のような美しい空間に仕上がっていた。色とりどりの薔薇が咲き誇り、その間にガラス細工の繊細な装飾が輝いている。陽の光がガラスに反射し、庭全体に虹のような光の斑点を散らばせていた。薔薇の甘い香りが風に乗って漂い、まるで妖精の住む庭園のように幻想的だった。
私は薄いピンクのドレスに身を包み、優雅な笑みを浮かべながら来賓を迎えていた。貴族の令嬢たちが次々と到着し、私に挨拶をしながら、それぞれの指定された席に着いた。彼女たちは皆、庭園の美しさに感嘆の声を上げ、細工の美しさを褒めていた。
――フフフ。これぞ現代チート!ガラス細工提案してみて良かったわ。
私は、ひとりひとりに丁寧にお茶を注ぎ、彼女たちと会話を楽しんだ。ティーカップがカチンと触れ合う音や、笑い声が庭園に響き渡り、和やかな雰囲気が広がっていた。
「ルナティアナ王女、この庭園は本当に素晴らしいですね。まるで魔法がかかっているようですわ。」
一人の令嬢が微笑みながら話しかけてきた。
「ありがとう。私、お花が大好きなんです。」
私は優しく答えながら、その令嬢が侍女としてふさわしいかどうかを観察していた。
別の令嬢が興味深そうに私のカップに目を向け、「王女殿下、お茶の種類もとても豊富ですね。これはどこから取り寄せたのですか?」と尋ねた。
「これは特別なルートで手に入れたものなんです。私のお気に入りの一つですわ。」
――良いところに目をつけるじゃん。この目利きセンス…いいかも。
一方で、王宮の窓からその様子を見守っているバルサザールの姿があった。彼は庭園の美しい景色を眺めながら、ティアナが貴族たちと上手くやり取りしているのを確認し、満足げに微笑んでいた。ティアナの成長と努力を感じ取ることができ、その姿を誇りに思っていた。
「ルナティアナ王女、このお茶会の準備、本当にお疲れ様でした。私たちも大変楽しませていただいております。」
別の令嬢が感謝の言葉を述べると、私は微笑みながら答えた。
「ありがとうございます。皆さんに楽しんでいただけて、とても嬉しいです。」
――この令嬢は礼儀正しいし気遣いもできて、ちょっといいかも。
お茶会が進むにつれ、私は令嬢たちの反応や態度を注意深く観察しながら、彼女たちとの交流を楽しんでいた。それぞれの令嬢が持つ個性や魅力を見極め、私にとって信頼できる侍女候補としてふさわしいかどうかを判断していた。
お茶会が終わる頃、夕日が庭園をオレンジ色に染め、幻想的な風景がさらに美しさを増していた。私は感謝の言葉を述べながら、令嬢たちを見送り、最後にバルサザールの方を見上げた。
バルサザールは優しく微笑み、窓から手を振った。その姿に励まされ、私は今日の成功を心から喜んだ。彼の見守る中、私は確かな自信を胸に抱き、お茶会を無事に終えることができた。
「皆さん、本当にありがとう。お疲れ様でした。」
私は片付けを手伝ってくれていたメイドたちに感謝の意を込めて微笑みかけた。
メイドたちは微笑みながら頭を下げ、片付けを続けた。ティーカップやソーサー、ポットを丁寧に運び、テーブルクロスを畳んでいく。その光景を見ながら、私は手伝うために動き出した。
「王女殿下、お手を煩わせるわけにはいきません。私たちにお任せください。」
一人のメイドが私の手をそっと止めた。
「でも、私も手伝いたいの。みんなのおかげでお茶会が成功したんだから、一緒に片付けることで感謝の気持ちを伝えたいのよ。」
私は柔らかく答え、その侍女の手を軽く握り返した。
メイドは微笑んで頷き、再び片付けに戻った。私はそのままテーブルの上のガラス細工を一つ一つ丁寧に拭いていく。光がガラスに反射して美しい輝きを放つ中、手元に集中していた。
「このガラス細工、すごく綺麗よね。お茶会の雰囲気を一層引き立ててくれたわ。」
隣で片付けを手伝っていたメイドに話しかけた。
「そうですね、王女殿下。庭園の薔薇との組み合わせが本当に素晴らしかったです。」
メイドは微笑みながら答えた。
テーブルクロスを畳んでいるとき、一人のメイドが私にそっと声をかけてきた。
「王女殿下、お茶会の進行も本当にお見事でした。皆さんが心から楽しんでいる様子が伝わってきました。」
「ありがとう。皆さんのおかげで成功しました。」
私は感謝の気持ちを込めて答え、そのメイドと一緒にクロスを畳み続けた。
その時、庭園の向こうからバルサザールが歩いてきた。彼の姿が見えると、私の心が少し落ち着いた。彼は片付けの様子を見て微笑みながら近づいてきた。
「ティアナ、お茶会は大成功だったようですね。」
「うん、みんなのおかげで。本当にありがとう、バル。」。
バルサザールは私の手元のガラス細工に目を向けた。
「そのガラス細工、本当に美しいですね。アナタの発想にはいつも驚かされます。」
「ありがとう、バル。」
私は彼の言葉に少し照れながらも、嬉しさを感じた。
「さて、後のことはメイドたちに任せて、そろそろ私に…。」
その瞬間、庭園の端からセインタール公爵が現れた。彼は優雅に歩み寄り、嫌味な笑みを浮かべながら話しかけてきた。
「まぁまぁ、これは素晴らしい光景ですね。王女殿下と宰相様がこんなにも仲睦まじく、片付けを手伝っていらっしゃるとは。まるで庶民のように。」
私はその言葉に一瞬顔をしかめたが、バルサザールは冷静な表情を崩さず、公爵に向き直った。
「セインタール公爵、これは王女殿下の意志によるものです。彼女の優れた指導力とおもてなしの心が、お茶会を大成功に導いたのですよ。」
セインタール公爵は皮肉な笑みを浮かべながら、「そうですか。ですが、王女殿下がここまで手を動かす必要があったとは少々驚きました。もっと有能な使用人を雇うべきでは?」と続けた。
バルサザールは冷静な口調で答えた。
「使用人の能力には満足しております。王女殿下の行動は、彼女の高貴な心からくるものであり、その姿勢が皆に尊敬されているのです。」
セインタール公爵は軽く肩をすくめ、微笑みを浮かべた。
「なるほど、それならば素晴らしいことです。ですが、王女殿下の貴重なお時間を、もっと重要なことに使われるべきかと存じます。」
私は深呼吸をして、公爵に向かって微笑みを浮かべながら言った。
「ご心配ありがとうございます、公爵様。私はお茶会を楽しみながらも、しっかりと重要なこともこなしておりますので、ご安心ください。」
バルサザールは私の肩に優しく手を置き、「王女殿下は多忙な中でも見事にお茶会を成功させました。これからもその才能を発揮していただきたいものです。」と言った。
セインタール公爵は一瞬だけ不満げな表情を見せたが、すぐに笑顔に戻り、「それは素晴らしいことです。では、これからの王女殿下のご活躍を楽しみにしております。」と言って去っていった。
バルサザールは少し皮肉な笑みを浮かべ、「わざわざお越しになって嫌味を言わねばいけないほど、公爵もお忙しいご様子ですね。」とつぶやいた。
その言葉に私は思わず笑ってしまった。
「あっははっ。バルったら、変なこと言わないでよ~。」
彼は私の笑い声に微笑みながら、「ですが、あの公爵は本当に皮肉の達人なようですね。まったく、あのような言葉を毎回聞かされるのは、いささか面倒です。」と言った。
「バル、そういえば、さっき何か言いかけてなかった?」
バルサザールは眉をひそめた。
「ふむ。なんだか無性に腹が立ってきました。」
「え!?なんで!?」
その瞬間、従者が息を切らしながら駆け寄ってきた。
「宰相様、王が急ぎお呼びです。」
バルサザールは一瞬だけ私に視線を向けてから、従者に向き直った。
「わかりました。すぐに向かいます。」
彼は私に再び目を向け、優しく微笑んだ。
「殿下、用事を済ませてきますので、大人しく部屋でお待ちください。ウルスウドラ、ラーカン、そこにいますね?殿下を外に出さぬように見張っておいてください。」
ウルスウドラとラーカンが軽く頷き、私に近づいて見守る態勢をとった。
「バル、何があったの?」私は心配そうに彼を見上げた。
「大したことではありませんよ。すぐに戻りますから、安心してください。」
バルサザールはそう言い残し、軽く手を振りながら立ち去った。
「殿下、部屋へ戻りましょう。」
ドラが優しく促し、私は頷いた。彼とラーカンに見守られながら、私は自室へと戻った。
読んで下さってありがとうございます!
お手数かけますが、イイネやブクマをいただけたら幸いです。モチベに繋がります( *´艸`)




