27.甘い囁き
朝日が差し込むのを感じて、私は自然と目を覚ました。窓から射し込む柔らかな光が部屋を照らし、まるで夢から現実に引き戻されるような感覚がした。温かい光が私の顔を撫で、静かな朝の時間が始まるのを感じた。
目を開けると、最近やっと見慣れてきた天井が見えた。
――あ、あれ?バルサザールのベッドで眠ってたのに、自分の部屋に戻ってる…。えっ!?てことはまたお姫様抱っこで運ばれちゃったの!?
私は急いで起き上がり、驚きとともに辺りを見回した。すると、ちょうどその時、侍女が部屋に入ってきた。見慣れない顔だ。
――また別の侍女だ。そろそろ専属の侍女が欲しいなぁ。
「おはようございます、王女殿下。」侍女が部屋に入ってきて、丁寧に挨拶をした。彼女はすぐに私の朝の支度に取りかかり、控えめな笑顔で私に尋ねた。
「本日の御召し物はいかがいたしましょうか?」
私は少し考えてから答えた。
「今日は動きやすいパンツスタイルにしてくれる?」
「承知いたしました、王女殿下。」
侍女は軽くお辞儀をして、準備を始めた。私はベッドから降りて、彼女が衣装を選び出す様子を見ながらストレッチをして体をほぐした。
――今日は適当な町で侍女探ししよっと。
すると侍女が「まぁ…王女殿下、ドレスになさいませんと…首元が…」と少し困ったように言った。私は不思議に思いながら鏡を見てみると、首筋に蚊に刺されたかのような跡が数か所あった。
「え!?虫刺され!?」
侍女は微笑みを浮かべながら、軽く首を振った。
「虫…ふふふっ。ダメですよ、王女殿下。宰相様を虫扱いされては。」
――えぇ!?バルが!?こんなことするなんて…。
私は顔を赤くしながら、どうしようかと考えた。確かに、こんな跡を晒すわけにはいかない。
「えっと…ドレスにしようかな。首元が隠れるものをお願い。」
「かしこまりました、王女殿下。」
侍女は少し含み笑いを浮かべながら、私の指示に従って首元が隠れるドレスを用意し始めた。鏡の前で身支度を整えながら、私はそのドレスを身にまとった。柔らかい布が肌に触れる感触に、少し心が落ち着いた。
支度が終わると、扉が静かに開き、バルサザールが部屋に入ってきた。彼の姿に思わずドキリとしながらも、私はにっこりと笑って彼を迎えた。
「おはようございます、王女殿下。朝食の時間です。ご一緒に食堂へ行きましょう。」
彼は優雅に一礼し、手を差し出した。
「おはよう、バル。でも…」
私は首筋の跡を指差し、少し抗議の声を上げた。
「これ、どうしてくれるの?」
バルサザールは微笑みながら軽く肩をすくめた。
「申し訳ありません。つい…ね。」
彼は優しく私の手を取り、顔を近づけて囁くように言った。
「気になるようなら、次回はもう少し控えめにします。」
――ひ、控えめって!次もやるってことじゃない!!
二人で部屋を出て、廊下を歩き始めた。彼の温もりが手に伝わり、心が少し落ち着いた。私はふと考えていたことを口にした。
「今日、町に行って侍女を探しに行こうと思ってたの。もう少ししっかりした専属の侍女が欲しいと思って。」
バルサザールは軽く笑いながら私を見た。
「ティアナ、侍女はただの使用人ではありません。彼女たちはあなたの身の回りを全てサポートし、秘密を守る信頼のおける存在です。王宮での生活に慣れた者を選ぶのが良いでしょう。」
「でも、それじゃあ、完全に私の味方してくれないじゃない。」
バルサザールは少し考え込み、優雅な仕草で顎に手を当てた。
「ふむ…では、茶会でも開きますか?そうすれば、あなたの希望に合った侍女を見つけることができるかもしれませんね。」
「茶会?それって…どういうこと?」
バルサザールは少し考え込み、やがて優しい表情で言った。
「そうですね、ティアナ。信頼できる友人や知り合いがいないのは理解しています。ですから、私が信頼できる候補者をいくつか見繕います。彼女たちと話して、あなたの気に入る侍女を選んでください。私の意向だけでなく、あなたの希望に沿うようにしましょう。大事なのはあなたが安心して任せられる相手ですからね。」
「なるほど、それならいいかも。」
私は頷き、少し安心した。
「では、早速手配いたしましょう。準備は私に任せてください。」
バルサザールは私の手を軽く握り、安心させるように微笑んだ。
二人で食堂へ向かいながら、バルサザールと共に歩くこの時間が、少しずつ私の心を満たしていくのを感じた。
食堂へ入ると、お父様が既に座っていて、何人かの側近たちも座っていた。父は私たちを見て微笑みながら言った。
「おはよう、ティアナ。バルサザール。」
「おはようございます、お父様。」
「おはようございます、陛下。」
バルサザールも丁寧に挨拶を交わし、私の隣に自然と座った。その仲睦まじい姿を見て、周囲の側近たちもほっとしたような表情を浮かべていた。
食事が始まり、しばらくは和やかな雰囲気が続いた。しかし、やがてお父様は真剣な表情でバルサザールに話しかけた。
「バルサザール、最近の隣国との交渉についてどう思うかね?」
バルサザールはナイフとフォークを静かに置き、真剣な表情で答えた。
「陛下、隣国との交渉は慎重に進めるべきです。我々の立場を強化するためにも、経済的な協力関係を築くことが最優先です。しかし、軍事的な備えも怠らないようにしなければなりません。」
お父様は深く頷き、さらに詳しく尋ねた。
「経済的な協力関係とは具体的にどういった形を考えているのか?」
「まず、貿易協定の見直しを提案します。特に農産物や鉱物資源の輸出入に関して、互いの利益を最大化できるように交渉します。そして、文化交流を通じて両国の関係を強化することも重要です。」
私たちの周りの側近たちは、バルサザールの意見に耳を傾けていた。食事中にもかかわらず、部屋全体に緊張感が漂っていた。
「バルサザール、お前の提案は非常に理にかなっている。しかし、軍事的な備えについてはどう考えている?」
「陛下、軍事的な備えに関しては、防衛力の強化が最優先です。特に国境付近の防衛体制を見直し、最新の兵器を導入することを検討します。また、隣国との共同軍事演習を行い、互いの信頼関係を築くことも重要です。」
お父様は満足そうに頷き、バルサザールの意見を受け入れた。
「よかろう。バルサザール、お前の提案に基づいて進めることにしよう。」
――やっぱり、かっこいい!!!できる男すぎる!!元の世界でもこんな人いればなぁ…。いたら政治家とかになってるのかな?
バルサザールは一瞬私の方に身を寄せ、そっと耳打ちした。
「ティアナ、政治の話は少し難しいかもしれませんが、あなたも少しずつ理解していけばいいですよ。焦らず、ゆっくりとね。」
その瞬間、私は彼の言葉が一見優しげながらも、実は私を煽っていることに気づいた。
――つまり、頭が悪くて理解が追いついていないと煽っているのね?
私は唇を軽く噛みながら、顔を赤らめた。彼の囁きが、私の心をさらに揺さぶり、感情を刺激する。
「バ、バルサザール…あなた、本当にずるいわ…」
私は小さく抗議したが、その口調は可愛らしく拗ねたようなものだった。バルサザールの瞳には満足そうな光が宿り、彼のサディストな一面が垣間見えた。
「その反応が見たかったんですよ、ティアナ。」
彼はさらに私に近づき、耳元で囁くように言った。
「あなたが少し拗ねた顔をするのが、たまらなく可愛らしいと思いませんか?」
彼の言葉に心が揺れ、顔がさらに赤くなっていくのを感じた。バルサザールはそんな私を見て、満足げに微笑んだ。周囲の目を気にしながらも、私は彼の言葉に心の奥底から嬉しさを感じていた。
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