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2.王女は味方を作る

翌朝、鏡に映る自分の姿をじっくりとチェックする。ウェーブのかかった金髪が肩にかかり、紫色の瞳が真剣な表情を映し出している。


――美しい顔立ちに引き締まったスタイル…羨ましい限りね。憑依転生ってやつよね?


「よし、行こう。」


決意を新たに、薬師の部屋に向かった。軽くノックをして入室すると、薬師が丁寧に頭を下げた。


「王女殿下、何かご用でしょうか?」


薬師の姿は、黒い艶やかな髪が前下がりに綺麗に切りそろえられており、その瞳も深い紫色をしていた。整った顔立ちは冷酷な印象を与え、まるで何事にも動じない鋭さを感じさせる。


――おお!俗にいう女殴ってそうな見た目の男!


「少し体調が優れなくて、効果的な薬を探しているの。特に、精神を安定させるようなものが欲しいのだけど。」


薬師はしばらく考えた後、いくつかの薬瓶を取り出して見せた。私はそれらの中から、夜中に本で調べておいた自白剤の成分が含まれていそうなものを見つけた。私は心の中でその薬瓶に目を留めながら、他の薬瓶を見るふりをして薬師の注意を逸らす。


「これを使えば、心が落ち着くはずです。」薬師が言った。


「ありがとう。助かるわ。」私は薬瓶を受け取り、ふと薬師が目を離した隙に、ターゲットの薬瓶を素早く自分のポケットに滑り込ませた。


「もし他にも何か必要なものがあれば、いつでもおっしゃってください。」薬師が親切に言った。


「分かったわ。本当にありがとう。」私は微笑んで部屋を後にした。


扉の前で先程盗んだ自白剤を取り出して見つめた。


――でも、これで本当に良いのかな…。殺されたりしないかな…。思えば私についてくれてる護衛騎士とかいないじゃない。どうなってるの!?ゲームの中の世界だから設定が甘いのかな…。自分の状況を知るのが先ね…。この体の記憶を思い出そうとすれば出てくるといえば出てくるのだけれど、思い出そうとしないと出てこないことが難点で何から思い出せばいいのやら…。


自白剤を飲ませることも大事だけど、仲間を作ることのほうが優先だわ。


私はこの体の記憶をたどりながら、薬師の部屋にあった薬品について思い出していた。その中に、非常に危険な薬品が含まれていることに気づき、自信満々で私はもう一度薬師のいる部屋に入った。薬師は再び私の姿を見て、少し驚いた表情を見せた。


「王女殿下、何か他にご用でしょうか?」


私は扉を静かに閉じ、彼の目をじっと見つめながら部屋の中に足を踏み入れた。「ええ、もう一つお願いがあるの。」


薬師は緊張した様子で私を見つめ返す。


「どのようなご用命でしょうか?」


「実は、あなたの協力が必要なの。」私は冷静な声で言った。「そして、あなたには選択肢がないことを理解してほしいの。」


薬師の顔に不安の色が浮かぶ。


「殿下、具体的には何をお望みなのでしょうか?」


「簡単なことよ。」私は微笑みを浮かべながら続けた。「あなたがここで何をしているか、そしてどのような薬を扱っているかをよく知っているの。」


「私の知識は王国のために使っております。」薬師は言い訳するように答えた。


「そうね。でも、例えば…」私は彼のデスクの上にあった薬瓶を指さした。「この薬瓶、あなたが処方する際に特別な許可が必要だということを知っているわ。」


薬師の顔色が一瞬で青ざめた。


「これは…」


「この薬瓶がもし不正に使われたとしたら、あなたの責任になるわね。」私は一歩近づき、声を低くした。「そのことを知っているのは私だけではないのよ。」


「何をお望みなのですか?」薬師が観念したように問いかけた。


「私に協力してほしいの。」私は真剣な表情で彼を見つめた。「あなたの知識と協力が必要なの。拒むことはできないわ。」


薬師はしばらく考え込んだ後、深く息をついて頷いた。


「分かりました。何をすればよいのでしょうか?」


私はドレスのポケットから先程盗んだ自白剤を取り出し、彼に見せた。「これより強い自白剤を作れない?それか、自白剤だと気付かないうちに自白してしまうような…、自白してる間の記憶が消えてしまうような…。そんな夢のような薬を作れない?」


薬師は薬瓶をじっと見つめ、考え込んだ。


「そのような薬を作ることは可能ですが、時間と材料が必要です。」


「費用はもちろんこちらで出すわ。」私は冷静に答えた。「必要な材料と時間を教えて。準備はすぐに取り掛かってもらいたいの。」


薬師は再び深く息をついてから頷いた。


「分かりました。必要な材料リストと調合にかかる時間をすぐにお伝えします。ただし、この薬は非常に強力であり、使い方には注意が必要です。」


「分かってるわ。私には今、それが必要なの。」私は真剣な表情で彼に伝えた。


薬師は書き物机に戻り、必要な材料と手順を書き出し始めた。その間、私は部屋の中を見渡し、薬品や器具の整然とした配置に目を向けた。彼が何をしているのか理解していることを示すために、私は彼の動きを観察し続けた。


数分後、薬師はリストと手順を書き終え、私に差し出した。


「こちらが必要な材料と手順です。この薬を作るには少し時間がかかりますが、殿下のご要望に応じて最善を尽くします。」


私はリストを受け取り、内容を確認した。


「ありがとう…えっと…。」


「スティグル・マーチェと申します。」


「ありがとう、スティグル。これで一歩前進できるわ。あなたの協力に感謝するわ。」


「殿下の力になれることを光栄に思います。」スティグルは再び頭を下げた。


私は満足げに微笑み、部屋を後にした。


廊下を歩きながら、私は胸の中でほっと息をついた。


――運が良かったわ。この体に眠る豊富な知識のおかげで薬師を仲間にできたし、次は護衛騎士を決めなきゃ…。一人で歩くなんて命を狙ってくださいって言ってるようなものよ…。これも宰相の策略!?…でも、あの宰相が簡単に私を失うような真似をするかな…。いくら考えても素人の頭じゃ厳しいわ!!


通りかかったテラスに出て、涼しい風を感じながら、護衛について体に眠る記憶をたどった。王女ルナティアナは我儘放題に育てられたが、教育だけはしっかり受けていた。そのため、彼女の知識は私にとって役立つものばかりだ。


「騎士達はどうなっているのかしら…」私は独り言をつぶやいた。


護衛騎士について考えていると、自分の護衛になった騎士を次々と左遷してしまった過去を思い出した。ルナティアナが我儘を言い過ぎたせいで、護衛騎士としての評判が悪くなってしまったのだ。そのため、今は誰も彼女の護衛を引き受けたがらず、結果として護衛は保留中という状態にあった。


――何やってんのよ!ルナティアナ!!ゲームの中のアナタはそんな我儘な素振り一切みせなかったじゃない!ただの操り人形ってだけで!!とにかく…護衛騎士がいない理由がわかったわ…。


この状況を打開するためには、信頼できる護衛騎士を見つけなければならない。だが、過去の行いのせいで信頼を取り戻すのは簡単ではない。


「どうすれば…」


私はテラスの手すりに寄りかかり、遠くを見つめた。


よく思い出してみると、この体の主であるルナティアナは剣術や体術の腕前が相当で、現役の騎士をも圧倒するほどの強さを持っていた。自分自身が強くて、護衛がいてもいなくても構わないようだった。


それでも、今の体の主は私だ。上手く動けるか不安だった。


――そうだ。着替えて騎士の訓練所へ行こう。自分の実力がどれほど発揮できるか確かめなくちゃ。


私は服を着替えるために一度自室へ戻った。

読んで下さってありがとうございます!

お手数かけますが、イイネやブクマをいただけたら幸いです。モチベに繋がります( *´艸`)

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