18.疑念の架け橋
王は私たちの姿を見て、深く頷いた。
「皆、無事で何よりだ。報告を頼む。」
バルサザールが一歩前に出て、深々と頭を下げた。
「陛下、アグレグレット帝国軍の進行を阻止し、勝利を収めました。敵軍は壊滅し、今後しばらくは侵略の心配はありません。」
王は満足そうに頷き、バルサザールの報告を静かに聞いていた。
「よくやった。皆の勇敢な行動に感謝する。これで国はしばらくの間、平穏を保てるだろう。」
バルサザールは一歩前に出て、再び頭を下げた。
「陛下、ありがとうございます。しかし、私はシュエット王国の第一王子として正式に戻ることになるのは近々としますが、まずはエヴァレーン王国に帰国しなければなりません。文書はすでに出しましたが、王が怒っているかもしれないことが心配です。」
王は眉をひそめ、深く考え込んだ。
「バルサザール、お前の決断は理解する。しかし、エヴァレーン王国の王が怒っているのは確かだろう。その怒りをどう鎮めるかが問題だ。」
バルサザールは一瞬ためらったが、決意を込めて答えた。
「陛下、私が直接エヴァレーン王国の王に会い、誠意を持って説明いたします。自分の立場を明確にし、今後の関係を築いていくためにも必要なことです。」
王は静かに頷き、彼の言葉に耳を傾けていた。
「それが最善の策だろう。しかし、注意深く行動するように。エヴァレーン王国との関係が悪化すれば、我々の同盟にも影響が及ぶ。」
バルサザールは再び頭を下げ、「承知しました、陛下。エヴァレーン王国の王に対しても最大限の敬意を持って接します。」と答えた。
王は深い溜息をつき、椅子に深く腰掛けた。
「よかろう。お前がその決意を持って行動するのなら、私はそれを信じる。しかし、くれぐれも無理はするな。」
その言葉にバルサザールは微笑みを浮かべ、「ありがとうございます、陛下。」と感謝の意を示した。
私たちはその後も王と話し合い、今後の計画について詳細を詰めた。その日の会議が終わり、玉座の間を後にする私たちの背後で、王は静かに見守っていた。
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三日後、私たちは無事にエヴァレーン王国へ帰還した。しかし、私が王宮に足を踏み入れると、すぐに父であるエヴァレーン王が私を待ち受けていた。彼の顔には怒りの色が濃く浮かんでいた。
「ルナティアナ!何を考えているのだ!」
お父様の声は宮殿全体に響き渡り、その怒りは私の胸を強く打った。
「お父様…ごめんなさい…」
私は頭を下げ、深い反省の意を示したが、お父様の怒りは収まらなかった。
「ごめんなさいで済むと思っているのか!あれほど危険な行動を取るとは何事だ!王国の姫としての責任を忘れたのか!もし、お前に何かあったらどうするつもりだったのだ!」
お父様の言葉は次々と私の胸に突き刺さった。彼の激怒の中には、私への深い愛情と心配が込められているのが感じ取れた。
――本当の親じゃないしろ…、本気で怒られると辛い…。なんだか本当のお父さんに怒られてる気分だわ。
「ルナティアナ、私たちはお前を失うわけにはいかないのだ。王国の未来はお前にかかっているのだぞ。」
お父様の声が少し震えているのを感じ、私はさらに頭を下げた。
「申し訳ありませんでした。私の行動がどれだけ無謀だったか、今になって理解しました。もう二度とこのようなことはいたしません。」
私は深く反省し、心からの謝罪を込めて答えた。
その時、バルサザールが一歩前に出て、静かに言葉を継いだ。
「陛下、王女殿下の行動は確かに無謀でしたが、彼女の勇気と決断力は賞賛に値します。私は彼女がどれだけこの国を守りたいと思っているかを知っています。どうか、彼女の心を理解していただきたいのです。」
お父様はバルサザールの言葉に耳を傾け、しばらくの間黙り込んだ。そして、深い溜息をついた後、再び私に向き直った。
「宰相の言う通り、お前の勇気と決断力を否定するつもりはない。しかし、もっと慎重に行動しなければならない。それがお前の立場なのだ。」
私は深く頷き、お父様の言葉を胸に刻んだ。
「はい、お父様。これからはもっと慎重に行動いたします。」
父王の怒りは少し和らいだが、まだ心配の色が残っていた。彼の目には、私への深い愛情と共に、王国の未来を憂う気持ちが見え隠れしていた。
「よかろう。今後はもっと冷静に行動するように。」
「はい、お父様。お約束します。」
バルサザールは深呼吸をして、心を落ち着かせた。エヴァレーン王の前に立つと、その視線はまっすぐに王を見つめていた。彼の表情は冷静でありながら、内心の緊張が微かに伝わってきた。
「陛下、私から報告がございます。」
お父様はバルサザールを見つめ返し、その言葉に耳を傾けた。
「何だ、バルサザール?」
バルサザールは一歩前に進み、深々と頭を下げた。そして、静かに話し始めた。
「先日のシュエット王国との戦いの際、私は自分の身分について知ることとなりました。私がシュエット王国の第一王子であることが判明したのです。」
王は驚きの表情を浮かべ、その言葉に一瞬息を呑んだ。周囲の空気が一変し、緊張感が漂った。
「なんだと?お前が…シュエット王国の王子だと?」
バルサザールは頷き、さらに詳しく説明を続けた。
「はい、陛下。シュエット王国の王と対面した際、彼が私の顔を見てすぐに認識しました。私の身分が証明されると共に、王は私にシュエット王国に戻るようにと要請してきました。」
お父様の表情は複雑なものとなり、しばらくの間、深い沈黙が続いた。彼はバルサザールの言葉を反芻し、その重みを理解しようとしているようだった。
「では、お前はエヴァレーン王国を離れるということか?」
バルサザールは深く息をつき、静かに答えた。
「陛下、実は一つ提案があります。もし私がルナティアナ王女殿下の婿となることが許されるならば、エヴァレーン王国に留まり、両国の架け橋としての役割を果たすことができると考えています。」
王は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに真剣な顔つきに戻った。
「つまり、ルナティアナと結婚するということか?」
バルサザールは頷き、その意図を説明した。
「はい、陛下。私がルナティアナ王女殿下と結婚することで、シュエット王国との同盟を強化し、両国の安定を図ることができます。また、エヴァレーン王国のために働き続けることができるのです。」
お父様は深く考え込み、しばらくの間黙り込んだ。彼の表情には複雑な感情が浮かんでいたが、やがてゆっくりと頷いた。
「バルサザール、お前の提案には一理ある。しかし、これはルナティアナ自身の意思も尊重しなければならないことだ。彼女の同意が得られれば、私はお前の提案を受け入れよう。」
私はその言葉を聞いて一歩前に進み、決意を込めて言った。
「お父様、私はバルサザールの提案に賛成です。彼と共に、この国の未来を築いていきたいと思います。」
お父様は私の言葉に耳を傾け、しばらくの間考えた後、再び頷いた。
「よかろう。バルサザール、ルナティアナ、あなたたち二人の決意を信じよう。共にエヴァレーン王国とシュエット王国のために尽力してくれ。」
バルサザールは再び頭を下げ、その言葉に感謝の意を示した。
「ありがとうございます、陛下。私はこの両国のために、全力を尽くすことをお約束いたします。」
――私は嬉しいけど、バルサザールは本当にそれでいいのかな?彼は私を利用しているだけで、私を駒としてしか見ていないのかもしれない。彼の冷静な表情の裏に何を考えているのか、私は分からない。彼は本当に私を守りたいと思っているのか、それともただ自分の計画を遂行するために私を利用しているだけなのか。彼の真意を知りたいけれど、今はそれを問いただす勇気がない。
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