10.ルナティアナ被害者の会
ウルスウドラは幼い頃、貧困に苦しんでいた。彼の家族はほとんど食べるものもなく、寒い夜には粗末な布切れにくるまって眠ることしかできなかった。そんな彼の前に現れたのが、当時まだ幼い王女であった私だった。
私は彼を見下し、まるで自分の所有物のように扱った。彼の困窮した生活状況を利用し、自分の力を誇示するために彼を支配した。ウルスウドラは当時、私の言いなりになるしかなく、毎日のように私の命令に従わなければならなかった。私は彼に過酷な仕事を課し、時には不合理な要求を突きつけた。それでも彼は何も言わず、ただ黙って従った。
その背後には深い怨念が渦巻いていたに違いない。しかし、驚いたことに、彼は私に対して異常なまでの陶酔を抱いていた。私の言葉に盲目的に従い、私のために力をつけることに全力を注いでいた。その結果、彼は裏社会でのし上がり、ボスとしての地位を築いたのだった。
ウルスウドラは私のために力をつけることに全てを捧げた。貧困の中で生き延びるための知恵と、私の期待に応えるための決意が彼を強くした。彼は陰湿な世界でのし上がり、弱者を守るために戦うという建前で勢力を拡大していった。だが、その実態は私への盲目的な忠誠心によるものだった。
彼は自分を鍛え、闇社会でのし上がるためにあらゆる手段を使った。彼の目には常に私への忠誠と、私のために何かを成し遂げるという強い意志が宿っていた。彼が裏社会のボスとして名を馳せるようになると、その忠誠心はますます歪んでいった。
私の言葉一つで彼は動き、私の望むことを成し遂げるために尽力した。その忠誠心は時折恐ろしいほどで、私の命令を遂行するためには手段を選ばなかった。彼の行動は冷酷で、時には残酷ささえも感じさせたが、その背後には常に私への盲目的な愛と忠誠があった。
――めちゃくちゃヤバイやつだ。どういうこと!?ウルスウドラは私のこと好きなの?めっちゃ困るんだけどそれ!!!でも便利そーーーーー!!!どうする私。便利だからって側に置いてたら絶対にヤバイ。ヒロインにもらってもらわないと…。愛を捨てさせる方法が必要よ!!
あれ?…もしかして攻略キャラクターとの接点が多いのかな。
そこで宿屋の息子リオについて思い浮かべたが、何も出てこなかった。それはルナリオンについても同様だった。私は安心した。次にリヴィウスを思い浮かべた。リヴィウスとは短期間だが深い接点があったことを思い出した。
リヴィウス、宮廷医師であり、冷徹な態度の裏には深い孤独と悲しみが隠されている彼。私の記憶を掘り起こしていくと、彼との関係は単なる医師と王女の間柄ではなかった。幼い頃、彼もまた私の横暴な行いの被害者の一人だった。
私の体調が悪いと嘘をついて、彼を呼び出しては無理な要求を押し付けたり、時には彼の研究を妨げるようなことさえしていた。彼はそれに対して一切の反論をせず、ただ淡々と私の命令に従っていた。その瞳には常に冷静さが漂っていたが、その裏には押し殺した感情が見え隠れしていた。
――――そうだったのね…。私、リヴィウスにもひどいことをしてたんだ。でもウルスウドラやスティグルやラーカンよりマシね…。短期間にちょっと嫌なことをしただけ。残るはミハエル…お願いだから何もでてこないで!!
記憶をたどると、公爵が息子のミハエルを連れてきて、ミハエルに私を将来の妻になる人だと紹介しているとんでもない記憶が呼び起こされた。公爵はまるで暗示にかけるようにミハエルに私という存在を刷り込み、二人きりの空間を作り出していた。その時、ミハエルはまだ幼かったが、公爵の影響力は絶大だった。彼は私を見るたびにその言葉を思い出し、私を理想化していた。
私たちが一緒に過ごす時間は、公爵が意図的に設定したもので、彼は私に対する過度な恋愛感情を押しつけてくるようになった。 彼の声のみが脳裏に浮かんだ。
「ルナティアナ、僕は君をずっと好きだった。お父様が言っていたように、君は僕の将来の妻になるべきだ。」
「君は僕にとって特別な存在だ。だから、僕たちはずっと一緒にいなければならないんだ。」
ミハエルは真剣な表情だった。その目には狂おしいほどの情熱が宿っていた。
――ああーーー!神様!!私が何をしたっていうんですか!!終わってる!!これじゃ乙女ゲームじゃなくて、ルナティアナ被害者の会じゃん!!ふざけんじゃないわよ!むしろよくこの状態でヒロインは男性を攻略できたわね!!逆に酷い女を体験してるから攻略しやすいってわけ!?おかしくない!?
ミハエルの言葉と行動が私の頭の中でぐるぐると回り、どう対処すればいいのか途方に暮れた。彼の純粋な愛情と公爵の策略の狭間で、私は混乱し、心が痛んだ。
――これは私にとって最大の試練だわ。ミハエルの感情をどう処理するか、それが私の未来を左右する。公爵の策略に巻き込まれるわけにはいかない。でも、ミハエルを傷つけるわけにもいかない。
心の中で様々な感情が交錯する中、私は深く息をつき、冷静に状況を整理しようと努めた。まずはミハエルと対話を重ね、彼の誤解を解き、彼に真実を理解させる必要がある。そして、公爵の影響から彼を解放し、自分自身の意思で行動できるように導くことが大切だ。
――明日はスティグルと相談して、この問題についての解決策を見つけなければならない。彼の知識と冷静な判断力が必要だ。ミハエルとの関係を修復し、正しい方向に導くために全力を尽くそう。
その夜、私は気絶するかのように眠りについた。
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―――――
翌日、この一連の記憶を包み隠さずスティグルに話した。彼は私の話を聞きながら、眉をひそめたり、時折ため息をついたりしていた。私がミハエルの話にまで到達したとき、彼はとうとう耐えきれずに頭を抱えた。
「…王女殿下、これはもう、どこから手をつけていいのかわからないほどの混乱ですね。」
スティグルは深い息をつきながら、まるで地球の全ての重さを背負ったかのように肩を落とした。
「いや、待って。これで終わりじゃないのよ。」
私はさらに話を続けようとしたが、スティグルが手を振って制止した。
「いや、結構です、殿下。これ以上聞いたら、私の精神が持ちません。」
「でも、これが全部なのよ!」
私は必死に訴えたが、スティグルはさらに深くため息をついた。
「わかりました。とにかく、今の状況を整理しましょう。まず、ウルスウドラ、リヴィウス、ミハエル…。これじゃまるで『ルナティアナ被害者の会』じゃないですか。」
私は顔を赤らめながら、うつむいた。
「私も同じことを思いました…。」
スティグルは一瞬、私を見つめた後、突然笑い出した。
「殿下、あなたの話はまるで夢物語ですね。でも、これは現実です。さあ、どうしましょうか。」
彼の言葉に少し救われた気がした。スティグルがこんな状況でもユーモアを忘れないのが、私にはありがたかった。
「まず、落ち着いて一つずつ対処していきましょう。一番危険そうな順にね。」
「記憶の中ではウルスウドラがやばそう…。どうやって連絡取りあってたんだろう…。」
脳裏に浮かんだのは、何故か首にぶら下げていた小さな魔法の笛だった。
「え…これアクセサリーじゃなかったの!?しかも、魔法があるの?」
スティグルは軽く肩をすくめ、微笑んだ。
「魔石を埋め込んだアイテムで使うことができますよ。それくらいは思い出してください。」
私は笛を手に取り、じっくりと眺めた。見た目はただの美しいアクセサリーに過ぎなかったが、その中には強力な魔法が宿っていることを感じた。
「これ、どうやって使うの?」
「笛を吹けば、ウルスウドラの耳に直接響いて即座に現れるかもしれません。危険ですから、できればラーカンがいる時に呼んでください。私はか弱いのでお守りすることはできませんよ。」
スティグルは呆れたようにため息をつきながら、肩をすくめた。彼はわざとらしく自分の腕を見せて、筋肉がないことをアピールするような仕草をしてみせた。
私たちはしばらく黙ってラーカンを待つことにした。
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