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78.作戦会議


「メイヤちゃんってアラタとどんな関係なん?」

「ファンです!」

「ファン?」

「ええ、アラタさんがEバイヤーを始めた時からずっと追想リプレイしてました!」


 パララメイヤがハイテンションでテーブルに手をついた。


「ん? それだとアルカディアでアラタに出会ったんは偶然なん?」

「はい。同じ遊戯領域を始めたのも、同じミラーだったのも全部偶然です」

「そらすごい確率やなぁ」

「わたしもビックリです!」


 卓上では、ユキナとパララメイヤのそんなやり取りが繰り広げられていた。


 アラタとユキナとパララメイヤの三人は、城塞都市ガイゼルにあるアンダンテという店で食事をしていた。

 もちろん娯楽用の飲食店で、値段は張るが味は保証されている。


「あの、いいですか」


 アラタが二人のやり取りに口を挟む。


「そういうどうでもいい話はいいんで、これからの方針について話しましょうよ」


 ユキナは露骨に不満そうに、


「ええー、いいやんそんなに焦らなくても。美味いもん食いながらゆっくり話せば」

「まあまあユキナさん、大事な話が終わってから雑談すればいいんじゃないですか?」

「メイヤちゃんもアラタの味方なん? もしかしてファンだから?」

「えっと、そういうのもちょっとはありますけど……」

「はー、ウチに味方はおらんのか……」


 そう言ってユキナはオヨヨとわざとらしい泣き真似をする。


「始めていいですか?」

「ええよ」


 突然ユキナはケロッとした顔に戻って言った。


「こうして集まってもらったのは、ヴィーア坑道に挑むべきかどうかを話したいからなんです」

「もう行くん? ちょっと早くない?」

「早くはないと思いますよ。もう我々もレベルは19ですし、装備も概ね整ってます」

「20に上げてからでいいんじゃないですか? 20になればステータスも上がりますし」

「そこなんですが、今までの傾向からするとたぶんダンジョンの道中で上がると思うんですよね」

「ああ、メインの探索ダンジョンの経験値は美味しいからなぁ」

「だからあまり変わらないはずです。ですからどうでしょう?」


 先に答えたのはパララメイヤだった。


「わたしはアラタさんが行くというならついて行きますよ」


 次いでユキナが答える。


「ウチもまあええかな。早く攻略してシュトルハイムに行ければ商売も捗るし。難易度的にはレベル20より上げてもそんな変わらんやろうし、装備的には今が天井やしね」

「そう言ってもらえると助かります。ロンのFD明けが明日でしょうし、早速明日行けますかね?」

「それはちょっと待った」

「なんです?」

「その、例の話はメイヤちゃんも知ってるんよね?」

「例の話って?」

「なんというか、アラタがどういう状況下、みたいな」


 それだけでパララメイヤは察したようだった。


「エデン人がって話ですか? それなら知ってますよ」

「なら気にせず話せるわけやな。あのな、ロンはアカン」

「なぜです?」

「探索ダンジョンで変なことが起こらん保証はある?」

「それは――――ないですけど」

「あのな、ロンはウチのお目付け役なんよ。もしエデン人の話がロンに知れたらウチはアルカディアで遊べなくなってまう。だからロンは無理や」


 アラタのアテは完全に外れた。

 ユキナがいれば、ロンは自動的についてくると思っていたのだ。


「ヴィーア坑道って四人が必須のダンジョンなんですよね?」


 パララメイヤが言った。


「そうだと思います。クエスト関連のNPCがそのようなことを匂わせてましたから。困ったな。ロンがいてくれれば前衛二、中衛一、後衛一でバランスが良かったんですが」

「前衛ならピッタリなのがおるやん」

「誰です?」


 それを聞いたユキナは眉を寄せた。


「あのな、それ本気で言っとる?」

「ヤン・イェンシーにでも頼みますか?」

「なんでそうなるねん!」


 ユキナがハリセンを取り出し、アラタに殴りかかった。

 アラタはハリセンを白刃取りの要領で受け止めた。

 周囲のNPCのからの注目を浴びて、ユキナがハリセンを収める。

 大きな咳払いを一つしてから、


「メイリィがおるやんけ。フレンドなんやろ?」

「ああ、そういえばそうですね」


 来る、だろうか。

 メイリィの姿を思い浮かべる。

 ダンジョンの攻略を手伝ってくれと頼んだら、喜んで来るような気もするし、またアラタを困らせようとする気もする。


 腕が確かなのは間違いなく、前衛であり、その上アラタと関わることを気にしないとなると、これ以上ない最適な人物と言える。

 性格面を考えなければ。


 そこで料理が運ばれてきた。

 アラタはハンバーグ、パララメイヤはパスタ、ユキナは蕎麦といい感じにファンタジー世界っぽさがない。


「とりあえず食べてから考えますか。いいですよ、雑談して」

「ええの? じゃあ馴れ初めから聞こかな」


 アラタは飯を食べながら、ユキナとパララメイヤが話すのを意識の端で聞いていた。


 メイリィ・メイリィ・ウォープルーフか。

 前回手伝いを頼んだ時、条件としてアルカディアではなくシャンバラでデートしてくれと言われたのが気になっていた。

 アラタを困らせる最善手を取っただけかもしれないが、それはアラタに効いていた。

 また誘って同じようなことを言われたらどうしようという気持ちはある。


 食事が終わり、デザートを選び、デザートが来るまでの空白の時間が生まれた。


「とりあえずメイリィには連絡してみる?」

「うーん……」

「あの、いいですか?」


 パララメイヤが遠慮がちに聞いてきた。


「なんですか?」

「そのメイリィって人、メイリィ・メイリィ・ウォープルーフさんですか?」


 そうか、パララメイヤはメイリィを知らないのだ。

 そのことにアラタはようやく思い当たった。


「その通りです。知ってますか?」

「知っているというか、会ったことがあって」

「どこでです?」

「アルパの街の近くの洞窟でです」


 どこかで聞いたことのあるような話だ。


「PK、はされてませんよね?」

「されてません。エルドラというギルドに誘われて、情報交換をしないかって言われて洞窟に行ってたんです。そこにメイリィさんが現れて、エルドラはろくでもないから初心者は帰れって。そこからはすごい争いになって、わたしは怖いから逃げちゃいました」

「ん? メイリィがエルドラと?」


 ユキナは意外そうに言った。


「そうですよ。エルドラをやったのはメイリィで、僕じゃありません。というかパララメイヤもあそこに行ったんですか?」

「はい、アラタさんが来る頃にはもう逃げちゃってましたけど」

「待って待って、エルドラをやったんはアラタじゃないん? ミラー42のフォーラムじゃそういうことになってるけど」

「冤罪ですよ。僕がそんなことするように見えますか?」


 ユキナはアラタを見つめて、


「見える。PKするのがアラタの健康法なのかと思ってたわ」

「どういう言い草ですか」

「だって、ウチを助けてくれたときもなんか楽しそうだったし」

「楽しくないですよ。無用な争いは避ける主義です」

「信じられんなぁ。というかメイリィはデイサバイバーにやられたって言ってたし、つまりアラタやろ?」

「そうですね」


 ユキナが不審に満ちた目で見つめてくる。


「なんでメイリィとってんねん」

「それは、まあ、なんというか、ノリで……」

「無用な争いは?」

「この話はやめましょうか。とりあえずメイリィに連絡を取ってみましょう」


 何か突っ込まれる前に、アラタはすぐにメイリィへと念信を飛ばした。


 意外なことに、返事はすぐにあった。


MEILI-RES:なに?:FGS

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